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3月30日にラグビーどころ、埼玉県・熊谷で開幕した第19回全国高等学校選抜ラグビー大会は、4月8日(日)、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で決勝戦が行われた。
ディフェンディングチャンピオンの桐蔭学園(神奈川)が、5年ぶりの優勝を目指した大阪桐蔭(大阪)を46-26で下し、2年連続2度目の優勝を飾った。
関東大会で優勝し、準々決勝では東福岡(福岡)を11年ぶりに倒した勢いのまま決勝に進出した桐蔭学園。
そして、昨年度の花園準優勝で近畿大会を制した大阪桐蔭と、決勝戦は東西の強豪同士の激突となった。なお、両者は昨年の花園準決勝でも対戦し、大阪桐蔭が、12-7で接戦を制していた。
天気は快晴だったが、熊谷特有の5mほどの強風が吹くなか、試合はキックオフされた。
風下を選んだのは、花園のリベンジに燃えていた桐蔭学園だった。前日、2時間半ほど選手たちでミーティングを行って戦略、戦術を話し合う中で、最終的には藤原秀之監督のアドバイスもあり、前半は風下、後半は風上で戦うというプランを立てていた。
コイントスで勝った桐蔭学園は風下を選択肢、前半はボールを継続して戦う戦略を取った。キャプテンのSH(スクラムハーフ)小西泰聖(3年)は、「近場だと相手は身体が大きいので、少しFW(フォワード)を遠目に当てた」と言うように、FWを接点からやや離れた位置に配置、ボールを動かして、しっかりと味方FWを前に出した。
また、藤原監督が「スペースのあるところへボールを持っていこうというようなプランでした」と言うように、FWが前に出れば、BK(バックス)でしっかりとスペースを突く狙いだった。
前半5分に大阪桐蔭のWTB(ウィング)芦塚仁(2年)に先制トライを許してしまったが、桐蔭学園は落ち着いて戦略、戦術を実行する。
10分にSO(スタンドオフ)津田貫汰がPG(ペナルティゴール)を決めると、FWでボールをつないだ後、12分にはWTB西川賢哉(2年)が右サイドを突いてトライを挙げて、8-7と逆転に成功する。
15分にはSH小西がラックサイドを走り切ってそのままトライ。18分にはスクラムからトライ。そして、25分にもトライを挙げて、小西は前半だけでハットトリックを達成し、29-7と大きくリードした。
「FWがミスせずにボールを継続できたことが(ハットトリックできた)一番の要因だと思います」(小西)。
大阪桐蔭の綾部正史監督は「相手の9番(小西)がいい選手だったので、できるだけ止めたかったけれど、見すぎてそこに足が出なかった」と悔やんだ。マークしすぎて逆にやられてしまったというわけだ。
ただ、大阪桐蔭も負けていない。28分、昨年度の花園で活躍したFL(フランカー)奥井章仁(2年)がトライを挙げて、29-14として前半を折り返した。
後半、桐蔭学園の藤原監督は「3トライ取らないと勝てない」と選手たちを送り出した。4分、桐蔭学園は近場でPR(プロップ)鈴木康平(3年)がトライを挙げて、34-14と20点差とした。
ただ、その後は大阪桐蔭が試合前の狙い通り、ラックをターンオーバーするなど、接点でプレッシャーをかけると勢いが出てくる。10分にはPR江良颯、さらに14分にはFB(フルバック)伴井亮太がトライを挙げて、34-28と8点差に追い上げる。
すると桐蔭学園はキックを蹴るプランから、相手にカウンターされるリスクを鑑みて、再び、前半同様にボールを継続するとアタックにリズムが出る。
ボールを動かす中で、FWもBKもしっかり前に出てチャンスをつかみ、22分、30分にPR鈴木がトライを挙げてハットトリックを達成し、46-26としてノーサイド。
終始、SH小西のパスワークとランで攻撃の主導権を握った桐蔭学園が、昨年に続いて連覇を達成した。
優勝した桐蔭学園の藤原監督は「相手がFWの方に目が行ってくれたので、随分、小西のスペースが空きました。本来、こういうアタックをしてほしいという理想の試合でした」。
「勝つということはいいことです。勝って修正することができますし、自分たちが何を伸ばしていかなければならないのか、自分たちの強みは何かということが明確になる」と冷静に試合を振り返った。
また、ハットトリックの大活躍だったSH小西キャプテンは「昨年に引き続き2連覇することができ、この新しいチームで優勝できたのは嬉しい。(昨年の)花園で確かに(大阪桐蔭に)負けてはいますが、リベンジという思いよりは、チャレンジャーという気持ちで戦いました」。
「昨年のチームスローガンは『礎』で、今年はその『礎』を磨くという意味で『磨』にしました。その意味では(大阪桐蔭に勝利できたことは)一つ目標を達成できたのでは」と胸を張った。
一方、惜しくも2度目の優勝はならなかった大阪桐蔭の綾部監督は「(試合を通して)ほとんど相手ボールでしたね。入りは良かったんですが、ディフェンスしている時間が長く、(相手に)フェイズを重ねられてしまった」と肩を落とした。
また、キャプテンCTB(センター)松山千大(3年)は「FWでゲインされて、それが重なってスコアまでつなげられてしまいました。相手の形を出させてしまったのが敗因だと思います」。
そして、「アタックでは攻めたらゲインは切れたので、そこの部分は自信にしていきたい。チームとしてディフェンスはこだわっていきたい」と先を見据えた。
こうして今年度の春の選抜大会は、桐蔭学園の優勝で幕を閉じた。ただ、まだ4月である。どの強豪チームも新1年生を迎えて、1学期、夏合宿を経て冬まで強化する時間はたっぷりある。
今年度の花園は恐らく桐蔭学園、大阪桐蔭が軸になる可能性は高いが、奈良の天理、御所実業、東福岡、東海大仰星(大阪)、流通経済大柏(千葉)、選抜こそ出場できなかったが京都成章(京都)など強豪チームは冬までに力を上げてくることは間違いない。
大阪桐蔭の綾部監督は「(今年度は)抜けているチームがない」と言うように、どのチームにも花園で優勝する力はあろう。冬まで大きくチーム力を伸ばすチームはどこになるのだろうか、その経過を楽しみつつ、花園を心待ちにしたい。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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