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スーパーラグビー第8節、開幕からなかなか勝利に恵まれないサンウルブズは、Byeウィーク「休みの週」を挟んで、4月7日(土)、東京・秩父宮ラグビー場に、2014年の王者であるワラターズを迎えた。
ワラターズはサンウルブズと同じオーストラリア・カンファレンスに所属し、3勝1敗1分で2位につけているアタック力に長けたチームだ。
サンウルブズのメンバーを見ると、LO(ロック)陣はサム・ワイクスとジェームズ・ムーアと本職の2人が並び、リーチ マイケルが肋骨を骨折してメンバーから外れた影響で、NO8(ナンバーエイト)には「高校生以来」という姫野和樹が入った。
BK(バックス)にはキャプテンのSH(スクラムハーフ)流大を筆頭に、SO(スタンドオフ)田村優、CTB(センター)ラファエレ ティモシー、WTBレメキ ロマノ ラヴァ、そしてワラターズでのプレー経験もあるFB(フルバック)松島幸太朗といった日本代表選手が並んだ。
控えには合流して1週間のジョージア代表PR(プロップ)ニコロズ・カティアシヴィリが初めてメンバー入り。同じくジョージア出身のHO(フッカー)ジャバ・ブレグバゼもリザーブに名を連ねた。
一方のワラターズは、FBイズラエル・フォラウこそ先週のケガの影響で来日しなかったが、キャプテンのFL(フランカー)マイケル・フーパーを軸に、PRトム・ロバートソン、セコペ・ケプ、LOロブ・シモンズ。
また、リコーに在籍経験のあるSOバーナード・フォーリー、万能BKのCTBカートリー・ビール、パナソニックでもプレーしたWTBのタンゲレ・ナイヤラヴォロといった「ワラビーズ」こと、オーストラリア代表歴のある選手が9人先発した。
サンウルブズは試合の前半でトライを許していることが多く、SH流は「最初の20分が大事。突き詰めた。積極的にアタックする」という意気込みで臨んだ。スキッパーの言葉どおり、サンウルブズは自陣からボールを動かし攻める姿勢を見せた。
だが、先制したのは巧者のワラターズだった。6分、スクラムから左に展開し、ラックを経由して左サイドの巨漢WTBナイヤラヴォロへ。ナイヤラヴォロが突破し、最後はインサイドをフォローしたSHジェイク・ゴードンへパスしトライ。SOフォーリーのゴールも決まって0-7。
サンウルブズもすぐに反撃に転じる。11分、相手ゴール前のスクラムから、ファーストレシーバーとなったCTBマイケル・リトルが突破。倒されたが、再びボールを拾い上げてそのままインゴールに飛び込んでトライ、SO田村のゴールも決まり、7-7の同点に。
リードしてゲームを運びたかったサンウルブズだが、14分にはPG(ペナルティゴール)、16分には再びスクラムからCTBカーティス・ロナ、19分には自分たちのミスから、FLウィル・ミラーにトライを喫してしまい7-24と17点差となる。
ここで奮起したのは再びCTBリトルだった。23分、ゴール前のラインアウトからパスダミーを挟んで抜け出し、相手のタックルも外して独走。最後はインサイドをフォローしていたLOワイクスへパス。
ワイクスがそのまま、回り込んで中央にトライ、ゴールも決まって14-24。さらに28分、SO田村がPGも決めて17-24と7点差に追い上げる。
何とか同点でハーフタイムを迎えたかったサンウルブズだったが、スクラムからのアタックの上手いワラターズに、35分はSHゴードン、40分にはFBブライス・ヘガティーにトライを献上。
前半だけで5トライを与えてしまい、17-38と大きくリードを許してしまった。
さらに後半に入って5分、今度はワラターズにラインアウトから一発でFLフーパーにトライされて、17-43と26点差とされる。
サンウルブズはメンタル的に折れても仕方がない状況だったが、この試合ではホームのファンの前で最後まで戦う姿勢を見せ続けた。
13分、自陣、相手のノックオンからボールを右サイドに展開し、WTBセミシ・マシレワへ。マシレワがそのまま走りきってトライ。
さらに26分、相手のゴール前スクラムからNO8姫野がトライを挙げて、29-43と14点差に追い上げることに成功した。
姫野のトライの前の25分、相手キャプテンFLフーパーが故意の反則によりシンビン(10分間の一時的退場)、残り10分強。しかも数的有利ということで、早い時間にサンウルブズがトライを挙げれば同点の可能性も見えてきた……。
しかし、32分、再びワラターズのWTBナイヤラヴォロに突破を許してトライされてしまい、29-50とされて万事休す。そのまま試合はノーサイドを迎えた。
ワラターズは最後のトライで、3トライ以上差をつけてボーナスポイントを加えて勝ち点5を獲得。総勝ち点を19に伸ばした。サンウルブズは勝ち点を挙げられず、総勝ち点は2と変わらず。
勝利したワラターズのダリル・ギブソンHC(ヘッドコーチ)は「サンウルブズがテンポの速いプレーしてくると思っていたので、そこをスローダウンしたかった。チームはよくやってくれて素晴らしかった」と選手たちを称えた。
また、キャプテンのFLフーパーは「前半はサンウルブズの方が自分たちのゲームをやっていたと思うが、後半、風のことを考えて自分たちのゲームができたかなと思う」。
そして、「サンウルブズはディフェンスでもテンポ上げてくる、我々のしたいプレーにプレッシャーを与えてくると想定して、事実、実際にそうしてきた。残り3~4分のところでトライも取れたので、そこに屈することなくアタックできた」と胸を張った。
フーパーは対戦して、印象に残ったサンウルブズの選手を聞かれて「(かつてチームメイトだった)マツ(松島)のような選手がFBにいると脅威になると思っていて実際そうだった」。
「特に前半でそう感じた。リトルもすばらしかった。他にも身体が大きくてフィットしているFWがいて、サンウルブズが我々に対してよくやってきた」と率直な感想を述べた。
開幕6連敗となったサンウルブズのジェイミー・ジョセフHCは「攻守の切り替えで苦戦していた。相手の11番へのタックルは全員苦戦していた。ターンオーバーが多くなければ、ディフェンスシステムに問題なかったと思う」。
「また、相手に裏を狙われて戻ってセットするときに、FWがラックに寄り過ぎてしまってディフェンスの幅が取れず、苦しんだ場面があった」と試合を振り返った。
さらにジョセフHCは「ポゼッッションやテリトリーも50%ずつで、(アタックしたときに)ゲインライン成功したのは77%で、5トライも取れて、ペナルティーも相手が10、自分たちが3だったので規律は良かった」。
ただ、「アタックする能力はあると思うのでディフェンスの立て直しが急務だと思う」と課題を口にした。
キャプテンSH流は「アタック自体は良かったが、最後のフィニッシュのところ、ボールキープできていればということころでパスミスしたり、失ったりしたところが変わっていれば違っていたと思う」。
続けて、「そこの遂行力は(敗戦の)原因の一つにあると思います。(与えたトライは)ソフトなトライが多かった」と肩を落とした。
ただ、流は前を向いて「苦しいときこそを選手が一致団結して、スタッフといいコミュニケーションを取って、次のタスクをやるだけ。悪いところから目をそらさずレビューをして、今週はどうやれば勝てるか、いい準備してきた感触があった」。
そして、「最後のところで結果にあらわれなかったが、過程はいいものがあった。来週こそ、必ず、ホームのファンの目の前で勝てるように準備していきたい」と先を見据えた。
今年の開幕前、ジョセフHCが「昨年、サンウルブズは失トライの72%が3フェイズ以内のトライだった」と話してくれたことがある。その傾向は今年も変わらず、ワラターズ戦も失った7トライ中、4トライがセットプレーから3フェイズ以内の失点だった。
選手たちはディフェンスが崩れた要因を「今年から新しいチームになったこと」「メンバーが固定できていないこと」を挙げていた。
残念ながら、なかなか春が来ないサンウルブズ。東京・秩父宮ラグビー場での試合も残り2試合。次節の4月14は再び秩父宮ラグビー場で、昨年は勝利したニュージーランドのブルーズと対戦する。
個々の能力の高い相手だが、この1週間でタックルの精度を上げることはもちろんだが、チーム全員でコミュニケーションを取りつつ、組織ディフェンスを高めて失トライを4~5本に抑えれば、アタック能力はあるだけに狼軍団の今年初勝利が見えてくるはずだ。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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