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前節、敗れたものの、2年連続準優勝のライオンズを苦しめたヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ。
南アフリカから月曜日に帰国して、中4日間の3月24日(土)、三菱地所スーパーラグビー2018第6節、ニュージーランドのチーフスをホームの東京・秩父宮ラグビー場に迎えた。
チーフスといえば今季からサンウルブズに入ったFL(フランカー)リーチ マイケル、SO(スタンドオフ)/FB(フルバック)ロビー・ロビンソンがプレーしていたチームで、2012年、2013年にはスーパーラグビーを制し、この3年間もリーグ戦で毎年11勝を挙げている強豪である。
ただ、昨季はサンウルブズに対して、ホームで勝利したものの27-20と苦しんだころもあり、この試合では共同キャプテンのひとりFLサム・ケイン、HO(フッカー)ネイサン・ハリス、LO(ロック)ブロディー・リタリック、SOダミアン・マッケンジー、CTB(センター)アントン・レイナート ブラウンとオールブラックス経験者5人を先発させた。
一方、現在開幕から4連敗で今季初勝利を目指すサンウルブズは、前節から先発メンバーを11人交替。
PR(プロップ)稲垣啓太、HO堀江翔太、LOヘル ウヴェ、SH(スクラムハーフ)田中史朗、SO田村優、CTBラファエレ ティモシーといった日本代表の中心選手である経験豊富な選手がスターターに回り、昨シーズンのトップリーグで大活躍したWTBセミシ・マシレワはサンウルブズでは初先発となった。
桜が開花し、時折、春の日差しが感じられるスタジアムには1万3464人の観客が集い、試合は13時15分にキックオフされた。
ホームで先制したかったサンウルブズだったが、SO田村のキックが味方に当たってしまい、そのボールをつながれて、前半4分、相手に先制トライを許し0-7。
12分にはゴール前のスクラムを押し込まれ反則。最後はLOリタリックがグラウンディングしトライ、17分にはラインアウトのサインプレーからHOハリスにトライを献上してしまい0-21。
さらに20分、サンウルブズはSHからキックを蹴ってプレッシャーを与える戦略で臨んでいたが、それが裏目に出てマークしていたSOマッケンジーにカウンターを許し、ボールをつながれトライと、いいところなく21分までに4トライを与えて、0-28と大きくリードを許した。
ようやく、サンウルブズも反撃を開始。相手の反則からゴール前でモールを組むが、相手に粘られてしまい、ここはゴールラインを割ることができなかった。
さらに24分、WTBサウマキがラックから押さえたかに見えたが、TMO(テレビマッチオフィシャル)の末、ノックオンの判定となり、トライにはならなかった。
それでも36分、相手のタッチキックミスから中央スクラムを得て、サンウルブズがボールを継続し、最後は右サイドで古巣との対決に燃えるFLリーチが突破。オフロードパスをWTBマシレワに通し、そのまま右中間に押さえてトライ。サンウルブズが、1本返して5-28で前半を折り返した。
ややボールを蹴りすぎていたサンウルブズは、後半からしっかりとボールを継続しアタックする。
2分、ボールを左から右に大きく展開し、右サイドのWTBサウマキがこの試合でも力強いランとステップを見せて、そのまま左中間にトライ(10-28)、会場も湧き、サンウルブズの追い上げムードとなった。
しかし5分、中途半端なキックから再び相手にカウンターを許してしまい、SOマッケンジーにトライされて、10-33とされてしまった。
残り30分強、23点差をつけられたサンウルブズは一気に4人の選手を交替し、勝負に出た。
しかし、サンウルブズがなかば強引に攻める中、ターンオーバーからトライに結びつける相手の強さ、巧さもあって13分、25分、34分、39分にトライを与えて、9トライを奪われて10-61で大敗してしまった。
これで3勝1敗となったチーフスは3トライ以上差をつけて勝ち点5積み上げて、総勝ち点を13に伸ばした。一方、開幕5連敗となったサンウルブズは15チーム中、唯一白星がなく勝ち点は2のままとなった。
東京での初のスーパーラグビーに快勝したチーフスのコリン・クーパーHC(ヘッドコーチ)は「大型で走れるWTBがいるので、WTBをシャットアウトすることを念頭に置いていたことと、セットプレーでプレッシャーかけたいということを意図していた」。
「結果としてチーフスがやっているものと、持っているものを発揮できた」と満足した表情を見せた。
また、共同キャプテンのひとりFLケインも「(サンウルブズに対して)我々がやらないといけないのはブレイクダウンでしっかりコンテストして、自分たちのペースにもっていく。そして、いろんな局面で早く反応することでだと思っていました」と振り返り、しっかりとそれを実践した結果の勝利だったと言えよう。
試合後、サンウルブズのジェイミー・ジョセフHCは「序盤トライを取られてしまい、チームの自信喪失につながってしまった。もちろん、そこで自信喪失に加えて士気も下がった」と振り返った。
それでも、「自分たちのやり方を信じているし、信念を失っていない。試合の中で我慢、スマートさが足らない。そこさえ修正できたら勝ちが見えてくる」と前を向いた。
サンウルブズ共同キャプテンのひとりNO8(ナンバーエイト)ヴィリー・ブリッツは「緩んだ場面があり、3~4本トライを取られてしまった。追いかけるような立場になるとなかなか苦しい展開になる。こっちが思い切り仕掛ける場面にミスが起きて、自分たちの流れにできなかった。追いかける試合は非常に苦しい」と肩を落とした。
3連勝となったチーフスは3月30日(金)の第7節はホームのハミルトンに同じニュージーランド勢のハイランダーズを迎える。開幕5連敗となったサンウルブズは来週の第7節は「BYE week」(休みの週)となり試合はなく、4月7日(金)の第8節、秩父宮ラグビー場にオーストラリアの強豪ワラターズを迎える。
1月末のプレシーズン合宿から走り続けてきたサンウルブズのメンバーは、心身ともにリフレッシュして、今度こそホームのファンの目の前で歓喜の雄叫びをあげることができるだろうか。
◆日本代表主将FLリーチ、古巣・チーフスと対戦
過去3年間、母国ニュージーランドのチーフスでプレーしていたFLリーチ。ジョセフHCが日本代表だけでなくサンウルブズの指揮官となったこと、さらに日本代表のことを考えて今年からサンウルブズに加わった。
試合前日、FLリーチは「3年間(チーフスで)プレーしていて、どれだけ強いか、相手になってやってみたい。すごく楽しみです。個々の能力がすごく高くて、一番の弱点はスクラムかなと思います。そこを狙いたいと思います。チームにそういう話もしているし、FW(フォワード)も準備しています」と意気込んでいた。
試合早々、相手のFLケインに強烈なタックルを食らいノックオンした場面もあったが、リーチは前半36分のトライをアシストするなど気を吐いたと言えよう。
試合後、グランド上でリーチはかつての仲間たちと話をして、旧交を温めていた姿が印象的だった。
リーチは「チーフスはセットプレーも強かったが、ミスからのアンストラクチャーのアタックが上だった。実際やってみて映像と違う感じだった」。
「チーフスで(過去3年間)プレーしてきて、相手としてやったが強いと思った。もちろん、世界のトップとやって(サンウルブズの)弱みを見つけることができるので、試合重ねれば強くなっていくと思う」と感慨深げに振り返った。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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