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平峰一貴(No.12 MARELLI IMPUL Z)「3位表彰台で終われて本当よかったな。でもやっぱり淋しいな。」 | SUPER GT 2024 第5戦(最終戦) 鈴鹿サーキット【SUPER GTあの瞬間】
SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子平峰一貴(No.12 MARELLI IMPUL Z)
「あのとき、何があったの?」__ レースウィークの出来事、ドライバーに話してもらいたいと思いませんか? タフなレースを終えたドライバーに改めて話を聞く「SUPER GT あの瞬間」。2024年シーズンもレースの舞台裏に着目し、ドライバーの気持ちをコラムでお伝えします!
2022年、「カルソニックIMPUL Z」でチームに27年ぶりとなるタイトル獲得に貢献した平峰一貴選手。今シーズンは、「MARELLI IMPUL Z」として濃いブルーのカラーリングが施されたクルマで、ベルトラン・バゲット選手とともにシーズンを戦ってきた。このカラーリングでのラストレースとなった鈴鹿では、最後尾スタートからジャンプアップを披露して3位表彰台を獲得。大躍進の“舞台裏”を訊いた。
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配信期間 : 2025年1月10日午後11:00 ~
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配信期間 : 2025年1月19日午後8:00 ~
── 予選は最後尾の15番手ながら、決勝では圧巻の追い上げで3位表彰台。スタート直後から勢いがありました。
平峰一貴(以下、平峰):まずは(ベルトラン・)バゲットさんがいつものようにスタートを担当して、確か7周ぐらいだったところで、もう9番手まで追い上げてくれてました。元々、クルマはロングランのペースが良かったので、そんなに心配はしてなかったんですけど、バゲットさんが思った以上に結構早い段階で追い上げてくれたのが、大きかったかなと思います。『バケットさん、さすがだな』っていう感じでビックリしました。
── 決勝での活躍が光っただけに、逆に予選でのハプニングが残念でした。いったい何が起こったのですか?
平峰:僕はもうアタックラップ中で、最後、130Rを全開で抜けてきてシケインに来たときに、前にクルマがいるなと思って。パッシングはしてたんですけど、14号車(ENEOS X PRIME GR Supra/福住仁嶺)がいて。で、僕も270何km/hっていうスピードでシケインに対してアプローチしてたんです。向こうはもうほぼほぼ、止まる勢いだったかなと思うんですけど、かなり近づいちゃったんで(12号車の存在に)気づいて行ってくれるかなと思ったんですが、(14号車は)ちょっとうしろが見えてなかったみたいで。で、それで引っかかってしまった。あの瞬間は『やばい、避けないと!』っていう感じでした。避けなかったら、僕は14号車に突っ込んで、2台ともクラッシュしそうだったんで。僕も逃げた瞬間、左がもう“壁”だったんで、『これは逃げないと。逃げ方も一瞬で決めないと。14号車にクラッシュしなかったとしても、僕だけが大クラッシュしちゃうな』っていう感じでした。普段、エビスサーキットでドリフトの練習をしているんで、“卍切って(直線コースをドリフトしたまま蛇行して)”、逆に芝生をうまいこと利用してスピンして逃げれたんで、よかったかなっていう感じです。
すぐ(14号車の)ドライバーもチームのスタッフの方も、ピットに来てくれて『すみませんでした』って謝ってくれたんで、もうそのあとは(気持ちを)切り替えて行けたんでよかったかなと思います。確かドライバーは福住選手でしたが、別になんとも思ってないですし。ビックリしたのが、ピットに(豊田)章男会長にもわざわざ来ていただいたりしたので……。僕もご挨拶はしたんですけども、スポーツマンシップを大切にされているんだなと思いました。あれはレースの一部としてあったドラマのひとつかなというふうに思っているので、ほんと、全然なんとも思ってないですね。
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平峰一貴「3位表彰台で終われて本当よかったな。でもやっぱり淋しいな。」 | SUPER GT 2024 第5戦(最終戦) 鈴鹿サーキット
── 結果を受け、チームではどういうミーティングをして決勝を迎えたのですか?
平峰:戦略的には、周りもほとんどミニマムの……10何周、20周近くで結構入る予定だったと思うんです。作戦的にはほぼみんな同じところで入ると予測していたんで、ズレても1周か2周ぐらいのところかなっていう感じだったんですよね。で、作戦的には本当に僕らもミニマム(でピットインする予定)で動いてました。ピット作業もうまくいきましたし、インパルチームのスタッフの皆さんもすごい速いピット作業でタイヤ交換もしてくれたんで、すごい良かったです。あと、僕が(コースに)出ていってからは、すぐ前に39号車がいて。なんとかうまくタイヤを早く温めることもできて、計測1、2周目ぐらいまでに結構いっぱいクルマを抜けたんで、それは良かったかなと思いますね。たくさんアンダーカットできたのは、すごい良かったなっていう感じですね。
── 12号車は、シーズンを通してバゲット選手がスタートを担当する形が多いと思います。バゲット選手の強みはどういうところにあると思っていますか?
平峰:混戦の中で生き残って、ちゃんとポジションも上げて帰ってくる彼のその強さっていうのは、見ていてすごいなと思いますし、多分ヨーロッパでニュル24時間とかいろんなレースに出てきてるんで、そういうとこ(難しいレース)で生き残って帰ってくるという彼の強さは、ほんとにすごいなといつも思っていますね。スタートからの混戦での彼の強さに対しては、チームとしてもすごく信頼が高いです。(コンビ結成後の)22年、23年、24年と今シーズンまでずっと、“バゲットさんがスタートすると安心だよね”っていうところがやっぱり一番大きい。僕もチームも、“なんかあっても絶対すり抜けてきてくれる”っていう、その強さが彼にはものすごいあるんじゃないかなと思っています。そこが彼をスタートを任せられる安心なところですね。
── バゲット選手とのコンビも3年目。平峰選手だからこそ知り得るバゲット選手の“側面”みたいなものをなにかご紹介いただけますか?
平峰:バゲットさんって、ほとんど東京で運転しないんですよね。例えば都内であったりとか、どこか行くにもほとんど一緒に合流して、僕がいつも運転して行くんです。『東京を運転するのは、僕は苦手だ』って。『クルマが多いし、高速もぐねぐねしててわかりづらいし、トラックも多くて怖いから俺は運転したくない』とよく言うんですが、ただただ運転するのがめんどくさいから、僕にいつも運転させてるんだろうなと思って(笑)。例えば、横浜にあるニスモに行くときも、都内で合流してほとんど一緒に行ってるんです。僕がほぼほぼ運転手です。ということで、バゲットさんは、とにかく東京での運転が苦手です。まぁ僕は運転が好きなんで、別に何の互いに苦もなく過ごしてますけどね。バゲットさんは僕のことを“プライベートタクシードライバー”って言ってるし(笑)。でも、3年一緒にコンビを組んで、いろんな話をしていくなかで、彼のドライバーとしてのすごさもそうですし、人としての良さであったりとか、いろんなところを学んだ3年間でした。
── レース中のスティントでの見どころとしては、No.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GTの山本尚貴選手とのバトルだと思います。以前もこういうシーンがあったと記憶していますが、今回はどこでどのように逆転しようと狙っていたのですか?
平峰:あれはですね……ほぼほぼ自分のスティント前半ぐらいで、『100号車だ! 山本さんだ!』と思って走ってました。僕、山本さんと走ることが多いんですよね。(100号車の)牧野(任祐)選手は結構バゲットさんと一緒にバトって(バトルをして)楽しそうにやってるんですけど、僕も結構山本さんと一緒に走って楽しかったりするんです。(前を走るのが)山本さんだと思ったので、『追いかけたいな、一緒にバトルしたいな』と、がんばって喰らいついていたんですが、途中、僕がトラフィックに結構運悪く嫌な感じで引っかかっちゃって離れちゃったんです。『あーっ、山本さんが逃げちゃう……』と結構焦ったんですけど、『いやいや、絶対諦めない。絶対最後まで喰らいつく』と思ってがんばりました。そしたら、途中から山本さんも、ちょっとずつトラフィックで運が悪かったりしたのか、また(車間が)近づいてきて。なにかあれば射程圏内まで行けるんじゃないかと思い、ずっと喰らいついて行きました。どこで狙うというより、どこでも入ってやろうと思ってましたね。結構、山本さんもいやらしいブロックをしてくるんで、すごい楽しいんですよ。
だから、どんなふうに来るかなと思ってたんですが、あのときは130Rで……確かGT300のオレンジ色のベンツ(22号車)に引っかかってたんですよね。で、『あっ! 引っかかってる』と思って……。で、130Rで(100号車と前方車両との間が)詰まったところを、僕はほぼ全開で130Rを抜けてきて近づいたんです。でも、『すげえな』と思いました。そう、よく(山本がうしろを)見てるなと思って……(苦笑)。インに飛び込もうかなと思ったんですけど、その一瞬で『こいつ絶対入ってくる』と思われたのか、きちっと(イン側の走行ラインを)閉められちゃって(笑)。そこで、『じゃあ、僕はアウトから行きます!』って感じで行って、うまく抜くことができましたね。
No.12 MARELLI IMPUL Z
── 一瞬の逆転シーンなのにも関わらず、こんなにいろんなことがあったとは! 山本選手とのバトルになると、“別のスイッチ”が入ってしまう感じですね。
平峰:そうです! 別のスイッチが入っちゃいますね(笑)。(鈴鹿からの)帰りの電車でも、実は一緒だったんです。帰りの近鉄の電車で僕らは座るとこがなくて、山本さんと牧野選手とバゲットさんと僕の4人で立ちながら名古屋に帰ってきてたんですけど、そこでも一緒に楽しく喋ってて。楽しかったですね。なんか、すごいフェアなバトルだったし、いつもでアグレッシブなバトルですごい楽しいですね。山本さんには何回も抜かれたことがありますが、そのときは『くーっ、ちくしょーっ』と思っていても、やっぱり楽しいです。山本さんからは、『抜くんじゃねぇよ』って言われちゃうかもしれないですけど。今回、僕は(抜けて)良かったですね。
── ところで、今大会はTEAM IMPULを長らくスポンサーなさったカルソニック、今のマレリとしてのラストレース(※)でもありました。そのぶん、なんとしても表彰台を! という思いがあったと思います。2022年に“カルソニック”の名前がついたクルマでタイトルを獲り、この鈴鹿では、“マレリ”として3位表彰台を果たせたことで、“有終の美”に繋がったのではないでしょうか?
※10月23日、ホシノレーシングとマレリが共同声明を発表。2025年2月での契約満了を迎えるにあたり、TEAM IMPULとのスポンサー契約の終了が明らかとなった。
平峰:そうですね。とにかく“予選が予選だった”んで、このままでは絶対終われないっていう気持ちもありました。もうほんとにカルソニックとマレリのステッカーが貼られたクルマに乗れるっていうことは、僕にとってとても大切な財産だと思っていたので、その思いという部分でもすごい……なんて言えばいいのかな、“重いもの”でしたね。いい意味で、この青のクルマ、カルソニックとマレリの両方に乗れたというのは、ドライバーとしてはすごいことですし、やっぱりチームとカルソニックと、あとマレリに恩返しも込めて、絶対最終戦は表彰台で最低でも終わりたいと思っていたので、最終的には優勝ではなかったけど、3位表彰台で終われて本当よかったなっていう……ちょっとホッとした気持ちもありながら、やっぱり淋しいなっていう気持ちも正直ありますね。
── 鈴鹿での躍進によってシリーズランキングは6位へとポジションアップし、シーズンが終了。どんなシーズンでしたか?
平峰:去年が非常に苦しいシーズンでしたが、今年は表彰台に最終戦合わせて2回かな? 乗ったんで、自分なりには大きなミスもなく、全力を出し切ったレースができたと思いますね。毎年毎年の契約書にハンコをついて、『よし、今シーズンを戦うぞ!』となったとき、やっぱり悔いのないよう、『あれやっておけばよかった、なんであのときわかっててやらなかったんだ!?』っていうことがないようにするのは当然なことですが、(SUPER GTレースが)年間8戦とはいえ、その8戦を戦うまでにいろいろやるべきことが本当にたくさんあって。いろんなことに対しても全力で取り組んできたので、悔いはないのですが、結果としてはシリーズチャンピオンが獲れなかったので、ファンの皆さんにもほんと申し訳ないなと思います。とはいえ、いろんなバトルとか、楽しかったこと、悔しかったことを一緒に共有することで、ファンの皆さんに思いが届けばなと思ってます。
── ところで、今シーズンのGT300クラスチャンピオンは、かつて平峰選手が5シーズン在籍したJLOCでした。うれしいことだったのではないですか?
平峰:僕、JLOCに2014年に加入して、18年までの5年間お世話になったんです。当時、僕、何にも(参戦するレースが)なかったときに拾ってもらって。僕にとってもやっぱり育ったチームのひとつなので、チャンピオンを獲ったことに対しては、本当にうれしいなと思います。則竹(功雄)会長と奥様にはすぐ連絡して、『最高な気持ちなのはわかりますけど、もう寒くなってますし、あんまり飲みすぎて倒れないように気を付けてくださいね』って言ったんですけど、『今日はそういうわけにはいかんな』って言ってたんで(笑)。でもその気持ちもすごいわかりますし、やっぱり何十年ってかけて戦ってきたチームなんで、本当に心から『おめでとうございます』って言いたいですし、来シーズンもすごい強いJLOCが見れることを、僕だけじゃなくてみんな楽しみにしてると思います。
最終戦で表彰台を獲得した平峰選手とベルトラン・バゲット選手
── 来シーズンに向けて、平峰選手が目標すること、懸ける思いを聞かせてください。
平峰:来シーズン、どのクルマに乗るかっていうのは今まだ発表になってないんですが、どんなクルマに乗ろうが、どんなレースに出ようが、僕は常に全力で戦うことを心がけています。それが自分の持ち味だと思うので。あとはシーズンの戦いに悔いはないとはいえ、自分に対してはやっぱり今シーズンの減点はもちろんあるので、その減点をちゃんと見直して、来シーズンしっかり成長したところを見せられるように全力で戦いたいと思ってます。
── では、最後に。今一番興味・関心のあることは何か、教えてください。
平峰:どうやったらドリフトでもっと“ケツ進入”(90度以上の角度で、車体後部からコーナーへと入ること)ができるようになるかなっていう……どういう角度でどういう振り方をしたらできるのかなと、よく考えてます(笑)。(ジェスチャー付きで)ドリフトって、(クルマを)こう振って、うしろからこうやって入っていって、そのままって出てくる。それはラリーでも……(クルマは)四駆ですが、やっていたりするところを見て、『めちゃくちゃかっこいいな』と思って。この間の鈴鹿では、ピットに勝田(貴元/WRCドライバー)君が来てくれて、久しぶりに会って話したりしていました。
若いころは違うカテゴリーで一緒に戦っていたりしたんですが、彼は今、すごく活躍していて、めちゃくちゃかっこいいですよね。よくYou Tubeで勝田君や(2024年WRCタイトルを獲得した)ティエリー・ヌービルさんとか、いろんな選手の足ペダルの操作の仕方やハンドルの入れ方とかを見て、いろいろ勉強しているんです。すごい面白いんです。やっぱりカテゴリーは違えど、こんな走らせ方があるんだ、みたいなのが感じで(笑)。それがGT500(のドライブ)に使える使えないは別として、映像を見るのがすごい楽しい。勉強になるというか、(レースでのテクニックとして)なにか使えるところももちろんあると思います。あとは、普段やらない動きをやることがすごく新鮮で、めちゃくちゃ楽しい。普段、僕らはグリップがあるなかで走っているんですが、ドリフトとかラリーは滑るのが当たり前というか、特にラリーなんかはグリップしないところで(クルマを)横向けて走ったりとか。角度が違う見方ができるのは、すごい面白いですね。
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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