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モーター スポーツ コラム 2024年11月17日

元嶋佑弥(No.88 VENTENY Lamborghini GT3)「今年は何もしなくても、ある程度クルマが速く走ってくれる」 | SUPER GT 2024 第8戦 モビリティリゾートもてぎ【SUPER GTあの瞬間】

SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子
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元嶋佑弥(No.88 VENTENY Lamborghini GT3)

元嶋佑弥(No.88 VENTENY Lamborghini GT3)

「あのとき、何があったの?」__ レースウィークの出来事、ドライバーに話してもらいたいと思いませんか? タフなレースを終えたドライバーに改めて話を聞く「SUPER GT あの瞬間」。2024年シーズンもレースの舞台裏に着目し、ドライバーの気持ちをコラムでお伝えします!

昨シーズン最終戦のもてぎで、小暮卓史選手とのコンビでSUPER GTのGT300クラス初優勝を遂げた元嶋佑弥選手。今シーズンはさらにパフォーマンスアップを果たし、第2戦富士、第7戦オートポリス、そして今回のもてぎと3勝をマークし、終盤になってチャンピオン争いへと本格参戦することになった。相性がいいもてぎで2連勝し、上昇気流に乗って迎える最終戦の鈴鹿にどう挑むのか。元嶋選手に話を訊く。

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── 昨年のもてぎ戦に続き、今年ももてぎで優勝。17位からスタートと、昨年とは条件が大きく異なりましたが勝利しました。どんな戦いでしたか。

元嶋佑弥(以下、元嶋):表面上だけ見れば、昨年のグリッド(予選2位)とは大きく違ったのですが、個人的にはそのことよりやっぱりチャンピオンシップのほうに意識がいってました。“このままじゃマズい”と思ったし、スタート前も、65号車(LEON PYRAMID AMG)の前でゴールしないことには絶対に(タイトル争いに)生き残れないから、と思っていました。とにかく、必死に65号車を徹底的にマークしてレースをしました。なので、スタート後はかなりアグレッシブにオーバーテイクしていってたと思うんですが、そんなことよりも、見ていたのはずっと65号車だったという感じです。

── 午前中の公式練習では5回も赤旗中断がありました。クルマを仕上げていく作業としては、どのような影響がありましたか?

元嶋:正直、ドライ用のクルマを仕上げる作業はもうまったくできなくて。朝のウォームアップ(公式練習)で走った段階で、小暮(卓史)さんとふたりで、『結構、クルマはオーバーステアだね。どうする?』という話になりました。ただ、そういうときの僕らは、リヤタイヤ2輪を交換すると(クルマのバランスが)ちょうど良くなる傾向にあるので、もうここからなにかセットを変えるより、このまま行こうということになりました。なので、セットアップとかはまったくと言っていいほど今回はしていません。逆に、今年は何もしなくても、ある程度クルマが速く走ってくれるので、その点はあまり心配はしてなかったんです。

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元嶋佑弥「今年は何もしなくても、ある程度クルマが速く走ってくれる」

── 結局、予選は雨続きになりました。Q1を担当するなか、どのようなことが気がかりでしたか?

元嶋:取りこぼせないことが一番気がかりでした。最初にコースイしたときのタイヤがちょっと違う、という感じだったので、すぐにピットに戻って次のタイヤに替えて、すごい急いでアタックに入っていたんです。その結果、(V字コーナーで)スピンしちゃった。でも、あそこだったら(クルマがグラベルに)埋まることもないし、とにかく1周でも早くタイヤに熱を入れないと、と思っていました。焦りによるスピンというより、必死にペースを上げているなかでの結果でした。とにかく、決勝に向けて意識していたのは、65号車と2号車(muta Racing GR86 GTのポジション)のことで、絶対、その前でQ1を通らなきゃっていうことを考えていました。

── コースイン時の最初のタイヤが路面に合わなかったと?

元嶋:そうなんです。最初(コースに)出たときは雨量が少なかったので、(タイヤ選択が)すごい悩ましかったんです。でも、1周アタックして、“このタイヤ、違うぞ”となって、もう1セットの別のタイヤのほうが本命だなと。雨量がつねに変わるのでアタックのタイミングを逃しかねない難しい判断でしたが、僕はタイヤを替えるほうを選択しました。ただ結果としてQ1を落ちたのですが、多分あそこで(タイヤを)替えずに走り続けていても、多分Q1は通れなかったと思ういますね。

── 赤旗中断後、残り時間が“ギリギリ”でしたが、トライしようという強い気持ちを持って挑んだわけですね。

元嶋:最終的に赤旗中断になったので(※この赤旗中断は、雨量増加が原因)。あの周でようやくタイヤが温まり始めて、セクター1〜2をベスト(タイム)で来て、そこで赤旗(中断)でダメと感じでした。あの周でもし行けたなら……とは思いますが、多分、他の人たちも同じような状況だったと思います。

── 結果、Q1で上位14台に残れず、Q2は15位以下のグループで出走に。そこで小暮選手がグループ3番手のタイムをマークし、総合結果で17番手となりました。 “晴れ予想”の決勝に向けて、どういう展開にもっていけると考えましたか?

元嶋:スタートを前にして、絶望しかありませんでした。(ランキング争い中の)65号車が2番手、僕らはあそこの順位(17位)だったので。2号車は近く(16位)にいましたが、結構絶望的だなと思っていました。ただ、前回のオートポリスも予選15番手から追い上げての優勝ですし、今回に関してはもてぎとこのウラカンの相性が本当にすごく良いので、レースペースでは自信があったんです。ただ、優勝までいけるとは思ってませんでした。 実際スタートしたら65号車がどんどん近くなってきて。で、65号車の真後ろにつけた段階で、『65号車はきっと無交換で来るだろうから、どうしようか?』と、 無線で結構長い時間、会話していました。向こうは、結構ツラそうだったんです。なので、僕は冷静に『65号車は多分タイヤを替えても無交換でも、ツラいと思う』と話をして。で、『4輪交換してスピードで抜きに行くことも可能だと思う』とエンジニアさんに伝えました。でも、もてぎはタイヤを替えない人たちが多いので、チームからは『できたら2輪交換で行きたい』と言われました。無線では、結構そういう会話をしていましたね。

── 懸命に戦っているなかで行われた会話とは思えません。

元嶋:そうなんです。結構、やることが多かったですね(笑)。スタートで順位を上げて、後半の小暮さんにブレーキやタイヤを残すことも大事なんですが、何よりクルマの状況……後半に向けて今のタイヤはこういう状況です、と伝えるのが大事だと思ってるので、いつも僕がドライブしているときの無線は、結構忙しいですね。

── そのなかでFCYが導入される展開となりましたが、抜きにくいと言われるもてぎで、もう10周目には6番手を走っていました。やはり、クルマともてぎとの相性の良さがポイントでしたか?

元嶋:もてぎは抜きづらいとよく言われますが、個人的にめちゃめちゃ好きなんですよ。好きというか得意なんです。抜きにくいというイメージもそんなになくて。クルマのペースが良ければ、ある程度オーバーテイクはできると思っていました。ウラカンはブレーキングが強みなので、すごい深いところまでいけるんですよ。なので、うまくクルマの長所を引き出せたなと思いますね。

No.88 VENTENY Lamborghini GT3

No.88 VENTENY Lamborghini GT3

── 思いどおりの展開のなか、ピットインのプランはどのように確定したのですか?

元嶋:まずスタートして混戦がすごかったのですが、そこをうまく使ってがんばって勢いよく追い上げることができました。その後は65号車の真後ろにつけた段階で、ちょっと一旦落ち着こうと思いました。65号車さえマークすれば大丈夫だと思ったんです。で、ペース良く追いついた段階で、じゃあその次はピット(イン)っていう話になって、チームから『65号車と一緒(の周)に入れるよ』と言われました。『(自分たちの)ペースがいいからみんなが入ったあと、(ピットインのタイミングを)引っ張ったらダメですか? そしたらピットで前に出られるかもしれない』と提案したんですが、『やっぱりセーフティカーのリスクも考えて、65号車と一緒に入ろう』と言われました。多分、65号車はタイヤ無交換をするだろうけど、僕らは無交換が難しい。でもフロントタイヤは替えたくない。結果、この時期はタイヤを温めるまでが大変とはいえ、リヤ2本だけを交換する作戦が決まりました。

── 30周を過ぎて、前方車両との差が一気に縮まり、65号車そしてトップの31号車(apr LC500h GT)をも逆転。あっという間にトップに立ちました。そのときのチームの雰囲気はどうでしたか?

元嶋:もう大盛り上がりですよ。初優勝するまでは、トップを走っていてもみんなドキドキしていて、本当にこのまま勝てるのかなぁ、みたいな感じでした。特に(もてぎ戦は)去年も65号車に追いかけられる展開でしたし。ただ、(最終戦で優勝した)もてぎ以降、今年2勝して、みんなそわそわしていたのがある程度落ち着いて、表情が柔らかいままみんなで過ごしていて。昨年のもてぎは、トップを走ってるときでもみんな表情が怖かったんです(苦笑)。今はもうそういうのはなくて、結構盛り上がっていても表情は柔らかくて。普通にメカさんたちと冗談を話したりとかしていましたね。以前は勝てそうなとき、もったいないミスで落とすことも何回かあったんですけどね。また今回は、タイヤ交換がめちゃめちゃ速かったんです。そのへんは、チームの今の志気の高さっていうんですかね、。今、それをすごく感じますね。

── 昨年の最終戦での初優勝以降、今年は小暮選手とふたりで3勝を挙げるなか、自分として成長できていると思うところはどんな点ですか?

元嶋:今までは、優勝することが目の前にあった大きな目標でした。それが、“チャンピオンを獲りたい”という目標に変わったので、おのずとレースの組み立て方が、以前とはちょっと違うのかなとは思いますね。今回も優勝はもちろんしたいと思っていましたが、それよりも意識は65号車、2号車に行ってたりとか。これは、もしかしたらチーム全体としても同じかもしれないです。65号車とピット(タイミング)を合わせようと言ったのも、チャンピオンシップに関わって争っていなければ、僕が言ったように(ピットインのタイミングを)引っ張って前に出ようとか、また別の展開になってたかもしれませんね。

── 勝利を重ねるなか、勝つために何が必要か、みんなの意識が高まってきたのでしょうか。ドライバーとしてもチームへの信頼感が高まりますね。

元嶋:そうですね。今まで以上さらにみんなを信用するようになっていますね。みんなそれぞれの仕事への責任感が本当に強いので、僕もドライビングに集中して走ることができています。特にストラテジーなどは、伊与木(仁エンジニア)さんにほとんど任せていて、僕はもう状況を伝えるだけですね。去年までは、ああじゃないかこうじゃないかって、レース中でもストラテジーをエンジニアさんと一緒に考えたりしていましたが、今年に関しては、僕が状況を説明するだけでチームが組み立ててくれるのですごい楽です。伊与木エンジニアの加入によって、なんかみんなが落ち着いて仕事ができるって言うんですかね。今までより“地に足ついて”レースをしている感じはします。JLOCって、以前は“わちゃわちゃ”して、なんか勝手にみんなでテンパってたんです(笑)。伊与木さんの“レース勘”もあるんでしょうが、イレギュラーが発生したときもみんなが落ち着いて対処できるようになりました。それに、何気ないことなんですけど、セッション前に伊与木さんが全員に声をかけて、『こういうことあるからね』とか、そういう“ひと言”を言ってくれたり……。チームとしての今年の強さは、伊与木さんの経験が大きいと思いますね。本当にチームの雰囲気を一番良くしてくれる人かもしれないです。

小暮選手と共に表彰台にのぼる元嶋選手

小暮選手と共に表彰台にのぼる元嶋選手

── シーズン3勝目を挙げて、最終戦を迎えます。一方、現時点でランキングトップの65号車とは11点差。鈴鹿攻略のために一番重要なことは何でしょうか?

元嶋:僕ら、鈴鹿ではクルマがすごくいいんです。それに小暮さんが鈴鹿をすごく得意としているので、何にも心配はしてないですね。結構上位を争ってることも多いですが、あえて鈴鹿攻略で僕らが一番意識しているところは、やっぱりタイヤ選択ですね。鈴鹿は最もタイヤに厳しいサーキットで、一時期はもう鈴鹿で完走でできないぐらい毎回(タイヤが)バーストしたこともあったんです。でも、そこからヨコハマタイヤさんがすごくがんばってくれて、この2年間ぐらいはバーストすることはありません。とはいえ、今度は12月開催なので、多分ペースもものすごく速いと思うんです。今までどっちかというと暑い時期の開催だったのでタイヤには厳しかったんですが、今回は寒いだけにペースが速くなって、速いイコール、タイヤへの負荷も大きくなるので、そのあたりをヨコハマさんと相談していきたいですね。

── JLOC、そしてチームドライバーのファンの皆さんは、優勝、チャンピオン獲得と切望していると思います。意気込みを聞かせてください。

元嶋:JLOCは長年ランボルギーニだけでレースをやっていますが、今までチャンピオンは獲れていないので、則竹(功雄)監督にもチャンピオンをプレゼントしたいですし、僕も獲りたいです。長年ランボルギーニに応援してくれるファンの人たちも、今回、『次の鈴鹿は絶対見に行きます』ってすごくたくさん(SMSで)DMをいただいて。そういうこともうれしいし、最後にみんなで喜べるようなレースができたらいいと思います。

── では、最後に。今一番興味・関心のあることは何か、教えてください。

元嶋:子育てですかね。今年7月に子供が生まれましたが、レースが忙しすぎてほとんど会えてないので、最終戦が終わったあとはオフシーズンに入るので、家族と過ごせる時間をたくさん取りたいと思います。子育ては、わからないことばっかりです。“初めてパパになりました”っていうドライバーが結構周りに多くて、サーキットではその話ばかりなんです(笑)。『 今、何ヶ月になった?』とか『どれぐらいからつかまり立ちするの?』とか。最近は、先輩(パパドライバー)にいろいろそんなことばかり聞いてるかもしれないですね。心配性なんで、先輩たちに『ちょっとこんな感じなんだけど、うちの子、これって特別なんですかね、大丈夫ですかね?』とか、結構いろいろ相談しています。僕らは基本出張(を伴う仕事)なので、本当に久しぶりに帰ったら、おおっ!て思うことが多いんです。だから、今そこに一番、興味や関心がありますね。

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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