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モーター スポーツ コラム 2024年10月31日

高木真一(No.96 K-tunes RC F GT3)「今回は3位なので、必ずふたりでまた優勝したいなと思う」 | SUPER GT 2024 第7戦 オートポリス【SUPER GTあの瞬間】

SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子
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高木真一

高木真一(No.96 K-tunes RC F GT3)

「あのとき、何があったの?」__ レースウィークの出来事、ドライバーに話してもらいたいと思いませんか? タフなレースを終えたドライバーに改めて話を聞く「SUPER GT あの瞬間」。2024年シーズンもレースの舞台裏に着目し、ドライバーの気持ちをコラムでお伝えします!

SUGOに続き、荒れた天候に見舞われたオートポリス。土曜日に実施予定だった予選は日曜日の朝へと延期。午後から決勝を行なうワンデーレースとして開催された。慌ただしいスケジュールのなかで迎えたレースも、FCYやSCが多発する。そんな波乱含みのレースで躍進したのが、No.96 K-tunes RC F GT3。レース巧者ならではのパフォーマンスと引き寄せた運を最大限活かし、今季初の表彰台を獲得している。躍進のポイントがどこにあったのか、高木真一選手に訊く。

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── 2022年に新田守男選手とコンビを再結成。ふたり一緒の表彰台は、2010年第6戦鈴鹿(No.43 ARTA Garaiya)以来ですが、どんな気持ちですか?

高木真一(以下、高木):K-tunes Racingに入って3年目かな? 僕としては新田(守男)さんと(再びコンビを)組んでから、表彰台になかなか乗れず、結果も出ず、っていうのがやっぱりすごくプレッシャーになってたんです。ですが、今回、いろんな状況ながらトップを争えるクルマになって。K-tunes Racingとしても表彰台に乗るのが目標だったし。本当に久しぶり(の表彰台)だし、新田さんと一緒に表彰台上れて良かったと思うんですけど……本当はね、1位が良かったかなぁと思うんです。だって、それぐらいのパフォーマンスがクルマとタイヤにはあったので。“タラレバ”ですけど、セーフティカーとかそういういろいろなものがなければ、優勝に近いパフォーマンスは出せたんじゃないかな。今回は3位なので、必ずふたりでまた優勝したいと思っています。多くの方から声援やお祝いのコメントをいただいて、本当に感謝ですね。こうやって50歳……もう半ばになるふたりがレースをやっているんで、“中年の星”としてこれからもがんばっていきたいなと思います。

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高木真一選手「今回は3位なので、必ずふたりでまた優勝したいなと思う」

── 天候不良の影響で、決勝日の朝8時から予選となりました。とても慌ただしかったと思いますが、いかがでしたか?

高木:僕も長年(レースを)やってるけど、こういうスケジュールが初めてなのかどうかはわからなくて。ただ、僕は“釣り師”なんで、早起きは全然慣れてるんで全然問題なかったんです(笑)。新田さんが寝起きでボケーっとしているより、もう僕が(アタックに)行ったほうがいいんじゃねぇの!? みたいな話になってましたね(笑)。

── 早起きが得意だから、高木選手が担当!? そんな話ですか?

高木:うん、そういう話です(笑)。こんな朝早くから(予選アタックに)行けないよぉ、なんて言いながらね。僕がとりあえず(予選に)行ったんですけど、いずれにしろ、その前日に(天候不良でセッションが中止となり)走行していないのでデータもないですし、今までの蓄積されたデータのなかで予選一発行くしかないっていう感じだったし。そういう部分では、クルマもタイヤのセットも比較的良かったんです。ダンプ(路面がまだ少し濡れている状態)コンディションのなか、スリックタイヤでしっかりタイムを出せたのは、チームに感謝したいですね。

── 30分間のセッションでは、どういう時間配分をしましたか?

高木:30分のあいだに(路面が)乾いていくという状況だったので、タイムを出すのは一番最後だっていうのはわかってたんです。だけど、一番怖かったのは、赤旗とかいろいろな問題があったときに途中でアタックしかけて終わるっていうことくらい。最初、レインタイヤで行こうと思ったんですけど、ちょっとエンジンがかからなくて、ちょっとアタックできなかったんです。で、残り20分では最初レインタイヤで10分? 8分かな? アタックして、最後にスリックを着けてアタックしました。そのなかで一回赤旗が出たんですけど、僕たちのチームはピットの場所が(GT300クラスで)一番前だったので、赤旗でリセットされて残り5、6分のセッションを先頭でコースに出られたことは、僕たち的にちょっとありがたくて。そういう運もあったのかなと。予選ではそういうふうに感じました。もっと速い人も絶対いたと思うんですけど、そういう部分でも予選はちょっとラッキーだったかなと思いますね。

── 残り7分で赤旗となりましたがその時点でアタックしておらず、タイムがまだ出ていなかったのでヤキモキしたのでは?結果、ワンアタックになりましたか?

高木:いや、(ピットがGT300クラスで)先頭だったので、2、3周できたと思いますよ。そういう意味では1周できなかった人もいる一方で、最後の最後にアタックした人がやっぱり上位に来た感じでしたね。そのなかでもダンロップタイヤさん(のパフォーマンス)が良くてね。残り10分ぐらいで僕が(コースに)出ていったとき、徐々に(タイヤを)温めていこうと思ったんですけど、その温まりもすごく良かった。そういうところでもダンロップさんにはすごく感謝してます。

── “いける”という感触もあったアタックだったと?

No.96 K-tunes RC F GT3

No.96 K-tunes RC F GT3

高木:うん、本当そうですね。(タイヤを)温めていって赤旗が出てしまって。これで(セッションが)なくなったら終わりだけど、タイヤの温まりの感じからすると、『このあと再開されたらいいところまで行けるな』っていう感触がすごくありましたね。結構いい感じでした。

── 4番手という好位置は、“してやったり”の結果だったのですね。その後、4時間半くらいでウォームアップ走行になりました。通常の倍の長さである 40分間でしたが、チームとしてどう時間配分してスタートの準備をしたのですか。

高木:スタート担当が僕だったので、スタート用タイヤのチェック走行と、その後に新田さんのスティントで使うかもしれないというもう1種類のタイヤのチェック走行をふたりで分けてしたような感じでした。セットも少しアジャストして決勝に挑んだような感じですね。

── 日差しも出たり出なかったりと不安定なの天気でした。どういうことに注意しての戦いになると考えていましたか?

高木:一昨年や昨年のデータからすると、逆に気温が高い状況でのレース経験というかデータがなかったので、僕たちとしては、あのときのような曇りから少し晴れるぐらいまでのコンディションが良かったんじゃないかなと思いますね。あの状況よりも晴れて路面温度が上がると、ちょっと裏目に出たかもしれない。なので、路面温度とかそういう部分ではちょっと味方してくれた部分もあるのかなと思います。

── スタートから猛追してポジションアップに成功。11周目にはクラストップだったNo.777 D'station Vantage GT3を抜いてトップに立ちましたね。

高木:勝負に出たのは1コーナーです。僕がアウトからブレーキングして、で、インサイドにはD'stationさんがいました。で、クロス(ライン)をかけて、1コーナーの立ち上がりで右に並んだ感じ。で、それで3コーナーの飛び込みで抜いたような感じにでした。D'stationさんのクルマと僕たちは同じダンロップなんですけど、タイヤのサイズがちょっと違うんですよね。同じメーカーでも、全部が全部一緒じゃないんです。多分、D'stationさんも今年から(SUPER GTを)走ってるので、オートポリスのデータがなかったと思うんです。だから、そういう部分ではちょっと僕たちのほうにマージンがあったのかも。実際、全然ペースが違っていたので。これまでのレースでは、D'stationさんに付いていくような感じですし、ポイント争いも(D'stationは)上位にいるんで、今回はなるべく助け合うようにレースができればいいかなと思ってたんですけど、ベース的には僕らのほうが速かったようです。たあ、僕たちも表彰台を狙わなきゃいけなかったので、ちょっと抜かせてもらいました。その後は、一気に差が離れてたんで、僕たちのクルマのポテンシャルがすごくいいんだなと改めて思いました。もうフルプッシュで走ってましたね。

── 気がつけば、2位以下に20秒ほどの差をつけました。にも関わらず、23周目のアクシデントでFCYからSC導入となり、せっかく築き上げたギャップがリセットされてしまいます。こういうとき、ドライバーの心境は?

高木:もう、“激おこ”です(笑)。 むっちゃ無線で怒ってましたね。“ピー”って音が出るようなことを、ずっと叫びながら走っていました(笑)。

── 大差がリセットされてなおトップを走るなか、33周終わりで1回目のピット作業を迎えました。ほぼ予定どおりでしたか?

高木:ほんとはFCYが導入された周あたりでピットに入りたいと話していたんです。そのタイミングがズレたのですが、それはあまりにも僕のペースが良かったから。ちょっと(タイミングを先に)伸ばすと、後半のタイヤが楽になるっていう計算もあったんですよね。だから、もし2位を走ってて前が抜けないという状況……本来はその予定だったんです。ぶっちぎる予定じゃなかったので、(FCY〜SC導入はピットインを)少し延ばしにした矢先だったんですよね。(本来は)25周くらいに入る予定ではいたんです。なので、その部分に関してはちょっと運がなかったのかなと思います。

── 2回目のピット作業を終え、新田選手に代わり再び高木選手がコースへ。この時点で、No.88 VENTENY Lamborghini GT3がダントツのトップ、続いてNo. 2 muta Racing GR86 GT、No. 6 UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI、そして96号車の順でした。終盤、どのような攻防戦になると予想しましたか?

高木:後半は順位がよくわかっていなかったんです。僕らがピットインする前に、もう何チームもがピットに入った後のセーフティカーだったので、『これはもう表彰台はちょっと厳しいな』っていう状況になったと思いました。前のスティントで新田さんも徐々に追い上げて5位ぐらいのポジションまで来ていたんですけど、そこでピットに入ったら、またリセットして7、8番手になるかなと思ってたんです。

── そんななかで荒れ模様の展開になり、他車に影響が出たことでポジションアップしました。

高木:そうなんですよね。がんばって(前後が開いた状態で)ひとりで走ってたんです。ちょうど僕が(コースに)出たときはBMW(No.7 Studie BMW M4)がうしろにいたんですけど、それも引き離して。また、前には誰もいないような状態だったんです。なので、もうほとんどクリアラップのような状態で、『追い上げられるまで追い上げよう』と。フェラーリ(No. 6 UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI)が20秒ぐらい前を走っていたんですが、ペース的に(6号車に対して)1周あたり3秒ぐらい速くて。最後のほうに追いつくということだったので、がんばって走っていたんです。そうしたらフェラーリがタイヤ交換でピットインしたんで、3位に上がることができました。

── 確実にチャンスを掴んで3位へ。そして残り16分にまたしてもSC導入となりました。2番手の2号車の存在が気になったのでは?

高木:確か2号車とは、結構差があったと思うんですよね。10〜20秒ぐらいあったはずです。さすがにそこまでは追いつけないですよね。こちらのほうが速かったとしても結構リスクがあると思っていたし、基本的にセーフティカーが入らなくても2号車には全然追いつける感じではなかったです。それに、僕としては表彰台に乗りたかったので、表彰台という目標に達することができたんでホッとしてました。

── オートポリスをいい流れで終えることができました。残り2戦はどんな戦いにしたいですか?

新田選手とトロフィーを掲げる高木選手

新田選手とトロフィーを掲げる高木選手

高木:もてぎに向けて調子を崩したくないし、タイヤ開発も含めていい方向に行ってると思います。クルマ的にはどうかわからないですけど、(最終戦となる)鈴鹿は比較的RC Fがいい結果を出してることが多いので期待できそうです。12月の鈴鹿は、誰も走っていないコンディション。すごい涼しいというか寒いので、とんでもないタイムが出ると思いますね。なので、また違う意味ですごく楽しみです。GT300クラスに参戦する多くの人たちにとって、この寒い鈴鹿を走ることはすごく刺激的だと思うので、楽しみにしています。ノーウェイトの鈴鹿はダウンフォースが出てパワーも出るから、多分今までのレコードを2秒ぐらい上回るんじゃないかなと思ってるんですよね。タイヤウォーマーは使えませんが、ダンロップタイヤはウォームアップがすごくいいので、そこをうまく活かしていけたらなと思います。

── では、最後に。今一番興味・関心のあることは何か、教えてください。

高木:なかなか難しいな(苦笑)。だって僕といえば、もう“釣り”しかないんだもん。釣り竿をどれにしようかなとか、仕掛けどれにしようかなっていう、そういう……でも、それだと面白くないですよね。でも、釣り以外ないなぁ。やっぱり、釣りですね(笑)。

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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