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モーター スポーツ コラム 2024年10月29日

SUPER GT第8戦プレビュー 最終決戦”ではない”もてぎ 例年と異なる攻防戦が展開されるか!?

SUPER GT by 島村 元子
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ドライバーランキング3位の100号車(STANLEY TEAM KUNIMITSU)

11月を迎えてすぐの連休中に開催されるSUPER GT第8戦もてぎ。第7戦オートポリスからわずか2週間という短いインターバルで迎える戦いは、例年とは異なるシチュエーションが用意される。というのも、今回のもてぎは最終戦ではなく、シーズン”7戦目”となるからだ。チャンピオン争い中のチームにとっては、シリーズタイトル獲得の可能性を左右する重要な局面となるだけに、絶対”落とせない”一戦。秋も深まるなか、もてぎを制するために各チームは果たしてどんな戦略をもって挑むのか。

・第8戦でも”ウェイトあり”

コロナ禍でのシーズンを除くと、近年、モビリティリゾートもてぎで開催されるSUPER GTの一戦は、最終戦として行なわれてきた。だが、今シーズンは第5戦鈴鹿が台風10号の影響を受けて延期され、12月開催に。結果、もてぎは第8戦ながら”最終戦”鈴鹿大会を意識しての戦いを繰り広げることとなる。

これによって、出走する各車も例年とは異なるコンディションで戦いに臨む。SUPER GTでは、レースで獲得したシリーズ得点の累積に合わせてサクセスウェイトを搭載するというルールがある。開幕戦と最終戦はウェイトを積載せずに戦うが、7戦目はまだ獲得した累計ポイントを1kgに換算してウェイトを積まなければならない。つまり、もてぎは第8戦ながら”ウェイトあり”の戦いになる。

例年、ノーウェイトでの戦いを繰り広げてきただけに、ウェイトを積むクルマをどうセットアップするか。エンジニアにとっては新たな課題をもって臨む一戦と言えよう。しかも、季節的に気温がぐっと下がる頃。もてぎ戦の天候も当然気がかりではあるが、天候次第で気温はもとより路面温度に大きな変化をもたらす可能性も高い。残念ながら、ここのところSUPER GTの開催は雨の影響が続き、レースウィーク中のドライコンディションのデータも思うように収集できていない。なにしろ、前回のオートポリスは濃霧や突然の豪雨など不安定な天候に見舞われ、予選と決勝を一日で行なう”ワンデーレース”開催となった。前日に降り続いた雨で、予選はまだ路面が乾ききっていない”ダンプコンディション”のコースで30分間の計時方式で行なわれている。つまり、シーズン途中に改定された新たなルール下で、ニュータイヤ装着はいまだ試すことができていない。結果として、各チームともより一層不確定要素が増えるなかでアプローチすることになりそうだ。

・より激しくなったタイトル争い

ドライバーランキングTOPを維持している36号車TGR TEAM au TOM'S

オートポリスでの戦いを振り返ると、GT500クラスではランキングトップ3が確実なレース運びで入賞を果たし、ポイントを加算。一方、同4位以下のクルマが躍進し、大量得点を計上した。結果、タイトル獲得の可能性を持つチームが増えることに。各車ポイント差も小さく、残り2戦で情勢がガラリと変わっても不思議ではない。しかしながら、各チームの戦いぶりを見ると、毎戦のように少しでも上の順位でチェッカーを受けようと努力をコツコツと続けているチームが多いことにも気付かされる。サクセスウェイトの有無に関わらず、ノーミスのレースで着実にポイントを獲る戦いができるチームは、いざというときもしっかりと地力が出せるもの。混沌とした戦いになればなるほどチームとしての総合力が大きな意味を持つだけに、もてぎではどのチームがドシッと腰を据えて戦っているか、注目してみるのも面白いだろう。もちろん、シーズン後半になって上昇気流に乗っているチームの奮闘にも期待したい。

一方、GT300クラスでは、オートポリス戦を前に15点開いていたランキングトップ2台のポイント差が5点まで縮まった。とはいえ、No.2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)は、優勝を見据えてクラストップを走っていただけに、2位の結果ながらその落胆ぶりは大きいものだった。もし勝っていればシーズン2勝目となり、ランキングトップのNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)と同ポイントに並ぶことができたからだ。また、今回の勝利でランキング3位に浮上したNo.88 VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)も試合巧者のチームゆえに、残り2戦でランキングがどう変動するのか。参考までに、昨年のレースでは88号車が優勝し、65号車が2位に。”優勝必須”だった2号車は予選でクラスポールポジションを手にするも、結果を残せなかった。今年は、そのリベンジ戦でもある。それぞれ特徴の異なるトップ3台が繰り広げるパフォーマンス、さらには虎視眈々とチャンスを狙う他車の活躍をしっかりと見届けてほしい。

・”予選上位獲得”が必須条件

TOPとは7pt差の4位、3号車NISMO NDDP

戦いの舞台、もてぎは国内サーキットのなかでも特性あるレイアウトを持つ。メインストレートで加速し、第1、第2、第3…と続くコーナーを経て、終盤はヘアピンカーブのタイトなコーナーでブレーキングをして、さらにダウンヒルストレートで加速する、という”ストップ&ゴー”のコースとなっており、当然のことながらブレーキへの負担が大きいため、レースではブレーキングのテクニックが求められる。また、クルマのセットアップとしては、それに見合うスムーズな加速度と高いブレーキ性能が必要になる。ひとつのコーナーで加速が鈍るようなことにでもなれば、総じて残りのコーナーをリズミカルに走ることが難しくなり、全体の流れをうまく構築することができず、タイムを伸ばすことがでいない。走っては止まることを繰り返すため燃費も厳しく、過去のデータをもとにしっかりと準備することが重要になってくるはずだ。

また、タイトル争い中のチームに限らず、もてぎではまず予選で好位置につけることが”第一関門”となる。なにしろ、このレイアウトゆえ抜きづらいサーキットとして認識されており、ドライバーにとってはストレスを感じるコースでもある。レース中、ピタリと背後につかれても、プレッシャーを跳ね除けてなんとかあの手この手で応戦できると思えば、予選でひとつでも前のポジションを手にすることがよりいっそう重要になってくる。とりわけ、今回はサクセスウェイトを積載しての予選だけに、間違いなくセッション開始とともにヒリヒリとした駆け引きが繰り広げることになるだろう。

決勝はシーズン3回目の300kmレース。”短め”の戦いだからこそ、予選ではより前のグリッドからスタートするため、決勝ではライバルの追随を許さない速さと強さを見せつけるために、どのチームも総力をあげてもてぎに臨んでくるはずだ。白熱の戦いをしかとご覧あれ!

■ドライバーからひと言!

堤 優威(No.2 muta Racing GR86 GT)

去年まではノーウェイトの戦いでしたが、今回はランキングトップ3台が(上限の)50kgを積載する状況なので、今までとは違う戦い方になると思います。それぞれチームによってタイヤの選び方も難しくなりそうですね。ウェイトを積んでもてぎを走るのは初めてですし、タイヤのセット数も減っているので去年よりは厳しい戦いになるような感じがします。

去年はGT300クラスのポールポジションを獲って速さを見せることができました。雨に翻弄されて結果を残せなかったのですが、クルマも良くていいフィーリングがあるので、今回も上位を狙えると思います。チームを信じ、データをしっかりと活用し、チャンピオンシップに向けて取りこぼすことがないようしっかりと戦いたいですね。

サーキットで観戦するのであれば、ダウンヒルストレートから90度コーナーがオススメです。第3、4コーナーや最終コーナーが見えるし、裏側に行けばS字カーブも見えます。僕も、よくこの辺りでレースを見ていましたね。自分で移動しながらいろんな場所にもアクセスできるし、コースを広く見渡せすことができるいい場所だと思います。

J SPORTS オンデマンド番組情報

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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