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YARTの連覇か?それともヨシムラの逆転か? | FIM 世界耐久選手権(EWC) 2024 第4戦(最終戦) ボルドール24時間耐久ロードレース【プレビュー】
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ鈴鹿で3位表彰台を獲得した #12 YOSHIMURA SERT MOTUL
「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(鈴鹿8耐)を含む全4戦で争うFIM EWC(世界耐久選手権)の最終戦(第4戦)がフランスのポールリカールサーキットで開催されます。「J SPORTS」では今季も4戦で開催される2輪の耐久レースシリーズを放送中。いよいよタイトル決定戦として9月14日(土)から始まる「ボルドール24時間耐久レース」のプレビューをお送りしましょう。
鈴鹿8耐から約2ヶ月、南仏のポールリカールで開催される「ボルドール24時間」はフランス伝統のレースイベントです。ボルドールは地名ではなく、日本語に訳すと「金の杯(ゴールデンカップ)」という意味。元々は耐久レースではなくオートバイのビッグイベントとしてスタートしたモータースポーツで、フランスの中でも権威ある24時間レースとして長年開催されています。
最終戦となる24時間レースでは24時間後の優勝に40点、8時間と16時間のレースリーダーに10点ずつ、そして予選でのポールポジションに5点が与えられ、最大65点を獲得することができます。逆に言うと各クラスのポイントリーダーから65点以内のチームがチャンピオンの可能性を残していることになります。
前戦・鈴鹿8耐ではFIM EWCのレギュラーチームである「#1 YART YAMAHA」(ニッコロ・カネパ/マービン・フリッツ/カレル・ハニカ/ヤマハYZF-R1)が2位表彰台。そして同じくレギュラーの「#12 YOSHIMURA SERT MOTUL」(スズキGSX-R1000R)が驚きの7回ピット作戦を敢行し(ペナルティ消化で8回になりましたが)、3位表彰台を獲得。この2チームがタイトル争いの主役であり続ける状態で、最終戦を迎えることになりました。
「#1 YART YAMAHA」は116点、「#12 YOSHIMURA SERT MOTUL」は110点と6点差。ランキング3位のBMWワークスチーム「#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」(BMW M1000RR)、ランキング4位の「#4 TATI TEAM BERINGER RACING」(ホンダCBR1000RR-R)にもタイトルの可能性が残っていますが、ポイント差が大きく離れているため、現実的にはYARTとヨシムラの一騎打ちとなるでしょう。
昨年、14年ぶりの世界耐久チャンピオンを奪取した「#1 YART YAMAHA」は鈴鹿8耐では悲願の表彰台を獲得。マンディ監督はその喜びを爆発させました。そして連覇に賭けるボルドールですが、それを前にチームのエースとも言える元MotoGPライダーのニッコロ・カネパが引退を表明しました。彼はMotoGPから耐久にライダー転向した草分け的存在であり、速さと安定した走りでどのライダーよりも総合力が高かったライダーといえます。マービン・フリッツ、カレル・ハニカとも家族のような仲の良さで、息ぴったりなトリオだったのですが、この3人でレースをするのは今回で最後になります。なんとしてでもタイトルを獲りたいところでしょう。
一方、「#12 YOSHIMURA SERT MOTUL」は日本人ライダー、渥美心のレース終盤の猛烈な走りもあり、3位表彰台を獲得。チームのエース、グレッグ・ブラックを怪我で欠く中で、見事なリカバリーを見せました。YARTにポイントは逆転されてしまいましたが、6点差に留めたのは素晴らしい拍手を送るべきパフォーマンスでした。今回のボルドールはグレッグ・ブラック、エティエンヌ・マッソン、ダン・リンフットのレギュラー3人で挑み、バックアップとして渥美心が控えます。昨年もボルドールで優勝していますし、耐久レースでの信頼性という意味でもスズキGSX-R1000Rは抜群ですから、逆転タイトルはかなり可能性が高いと言えるでしょう。
対する「#1 YART YAMAHA」は昨年タイトルを獲得しましたが、ル・マンもボルドールも敗れています。2023年はスパ24時間で優勝がありましたが、24時間レースの優勝はなんと14年ぶりだったのです。ヤマハYZF-R1は現行型になっても24時間レースでは厳しく、実際には明らかなウィークポイントがあったそうです。しかし昨年、それを改善し、24時間レースにも勝てるようになりました。8時間レースの速さは今年の鈴鹿でも証明されましたが、果たして最終戦のボルドール24時間で、どこまで「#12 YOSHIMURA SERT MOTUL」に対抗できるか?特に信頼性の部分が大きな鍵になりそうです。
どちらにしても上位を走り続けなければワールドチャンピオンの座は得られないわけですから、まさに守りに入るか、攻めに出るか、両者の駆け引きに注目です。
また、ランキング3位の「#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」はシルヴァン・ギュントーリに代わって、若手のハネス・スーマーの起用を決定。彼は鈴鹿8耐でスーパーストック(SST)クラスの優勝を果たした「TONE RT SYNCEDGE 4413 BMW」で素晴らしいパフォーマンスを見せました。勢いに乗るスーマーの起用で大逆転の可能性に賭けるBMWも伏兵として注目です。
また、SSTクラスでは今年から新規参戦の日本チーム「Team Etoile(チームエトワール)」が鈴鹿8耐のクラス2位を獲得し、タイトル獲得の可能性を残しています。4戦中3戦有効ポイントで争うため、ボルドールの活躍によっては鈴鹿8耐の2位が効いてきてタイトル争いに絡むことになるかもしれません。大久保光、亀井雄大、渡辺一樹という日本のトップライダーたちを擁するチームがキラ星の如くポールリカールで輝くか注目しましょう。
総勢45台が出場する24時間の闘い。激しく入れ替わるであろうタイトル争いの行方は最後まで見逃せません。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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