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モーター スポーツ コラム 2024年7月19日

開幕戦は0.2秒差で決着! 熾烈極まるKYOJO CUPがスーパーフォーミュラのサポートレースとして開催

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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KYOJO CUP。

今週末、富士スピードウェイで行われる第1回瑶子女王杯 全日本スーパーフォーミュラ選手権 第4戦富士大会。そのサポートレースとして、2017年から始まった女性ドライバーのみによるレースシリーズ『KYOJO CUP』の2024シーズン第2戦・第3戦が開催される。

「女性ドライバーが活躍できる舞台」を目指して日本人で初めてル・マン24時間レース総合優勝を果たした元レーシングドライバーの関谷正徳氏がプロデューサーとなり、KYOJO CUPがスタートした。

1年目はエントリーが10台前後だったが、現在SUPER GTやスーパー耐久に参戦する小山美姫が2年連続チャンピオンとなったほか、2019年には村松日向子と翁長実希による最終戦まで白熱したチャンピオン争いなど、徐々にレースも盛り上がりをみせ、次第に参戦台数も増えていった。

近年の印象としては、カートで腕を磨いた女性ドライバーたちが4輪レースに挑戦し活躍するカテゴリーとして位置付けられ、特にここ2~3年は毎戦のように抜きつ抜かれつの展開となり、手に汗を握るバトルが見られる。

歴代参戦ドライバーをみても、前述の小山を始め、全日本F3選手権の参戦経験を持つ三浦愛も、参戦した2020年と2023年に王座を手にした。この他、2021年チャンピオンの辻本始温は今季スーパー耐久に参戦しているほか、昨年TCRジャパンシリーズで女性初のチャンピオンを獲得した猪爪杏奈もKYOJO CUPで優勝経験のあるドライバー。このようにKYOJO CUPで結果を出したドライバーが、現在は他のカテゴリーにも進出し、活躍の場を広げている。

そんな今シーズンは、2022年にチャンピオンを獲得した翁長実希が優勝候補の筆頭と言われている。昨年から新しい体制のチームで参戦し、今年はチームメイトにFIA世界耐久選手権で活躍中の平川亮の妹である平川真子が加入。さらなる注目が集まる。

翁長実希。

食らいつくのが斎藤愛未。現在スーパーフォーミュラとSUPER GTで活躍している坪井翔の妻だ。今年は三浦が率いるTeam Mに加入して、初のチャンピオン獲得を目指している。この他、FIA F4に参戦中の下野璃央も今季上位争いの一角に加わる1人だ。

斎藤愛未。

この他にも様々な経歴を持ったドライバーが参戦している。昨年、限定Aライセンスを取得し16歳でデビューを果たした富下李央菜は、初戦でいきなりポールポジションを奪うという走りを披露。2シーズン目となる今年も期待が集まる1人だ。その富下に続いて、今年は佐藤こころが限定Aライセンスを取得して16歳でデビュー戦を迎えた。

KYOJO CUPの参戦経験が長い荻原友美はレーシングドライバーの小川諒と結婚し、昨年第1子が誕生。今シーズンは育児をしながらレース参戦という新たな挑戦を始めている。またレーシングドライバーの織戸学の娘である織戸茉彩も一昨年から参戦を開始。今年はMAX ORIDO RACINGからの参戦となり、さらなる上位進出に期待がかかる。

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その他にも、現役の歯科医師でミスユニバースジャパン2022準ミスという経歴を持つ及川紗利亜や、レースクイーンとしての活動経験のある金井宥希など、様々な経歴を持つドライバーが参戦している。

また、ドライバーだけでなくチームに関しても見どころが多い。SUPER GTでお馴染みのグッドスマイルレーシングが、片岡龍也率いるTKRIとタッグを組み、『TKRI with GOODSMILE RACING』として参戦。4輪レースが今年初めてという岡本悠希を起用し奮闘中だ。開幕戦を終えてから、かなり練習走行をしてきたとのことで、今回はどこまでポジションを上げるのか期待がかかる。

TKRI with GOODSMILE RACING

もうひとつ見逃せないのが、今年4月から6月にかけて放送されたアニメ『ハイスピードエトワール』とコラボとしたハイスピードエトワールレーシングが2代体制でエントリーしている。マシンには、劇中で登場したキャラクターが描かれており、スーパーフォーミュラと併催される今大会では大きな注目を集めそうだ。

この他にも、多数のドライバーがエントリーし切磋琢磨している。

■開幕戦で繰り広げられた翁長実希vs斎藤愛未“0.2秒差の攻防”

翁長vs斎藤の激しい攻防が繰り広げられた開幕戦。

5月に行われた今季の第1戦は予選からハイレベルな戦いとなった。コンディションにもよるのだが、例年だと2分01秒を切るタイムであればトップ10圏内に入れるところが、この開幕戦では上位7台が1分58秒~1分59秒台を記録。2分01秒台だと16番手以降になってしまうという、例年以上に高い水準での争いとなった。

その中でポールポジションを獲得したのが斎藤。本人としては完璧なラップではなかったというものの、KYOJO CUPで初のポールポジションに安堵の表情をみせた。その一方で悔しさを見せたのが、自身2度目の王座を狙う翁長や0.3秒差で3番手となった下野。その後に行われた決勝レース(12周)でも3人のトップ争いが白熱することとなった。

スタート直後の攻防戦で翁長がトップに立つが「前に出られることは想定内でした」と斎藤。冷静にレース序盤を組み立てていき、4周目に逆転。3番手の下野も翁長を攻略しようと仕掛けている間に、斎藤は少しずつギャップを築いた。

レース後半に入ると、下野がトップ集団から少しずつ引き離され始め、優勝争いは斎藤と翁長の一騎打ちとなる。なかでも安定したペースを刻んでいた斎藤は、9周目を終えた時点で0.7秒のリードを築いていたが、終盤に入って少しずつタイヤが厳しくなったこともあり、翁長が徐々に迫ってきた。

そして、ファイナルラップのTGRコーナーで翁長が仕掛けに行く。続くコカ・コーラコーナーまで両者のバトルは続いたが、結果的に翁長が前に出ることとなった。これで勝負アリかと思われたが、斎藤も最終セクターで再び間合いを詰め、2台が接近した状態でメインストレートへ。最後まで目が離せない展開となったトップ争いは、0.2秒差で翁長が先にチェッカーを受け、開幕戦を制した。

レース後の表彰式。まずは開幕戦で勝利を飾れたことに安堵の表情をみせる翁長に対し、あと1周弱というところでトップを奪われた斎藤は、込み上げてくる悔しさを堪えているかのような表情をみせていた。

開幕戦ポディウム。

彼女は一昨年の最終戦でも初優勝のチャンスがあったのだが、ファイナルラップに入る手前の最終コーナーでハーフスピンを喫し、トップから陥落。表彰式を終えても悔し涙が止まらなかった。

その時から、勝利に近づいた感があった開幕戦。「一昨年の最終戦に比べると非常に冷静に走れて、メンタル面でも全然違った部分があったので、そこは大きな収穫でした。2位は悔しいですが、次に向けても良いデータも取れましたし、今後に活きるかなと思っています。非常に前向きなレースでした」とコメント。この瞬間から第2戦でのリベンジに向けて、心の中で動き出している様子だった。

対する翁長も優勝こそ飾ったが、課題も同時に見つかった様子。「優勝することはできましたが、まだまだ良くできるところがあったレースだったかなと思います。最終ラップでの逆転も“狙い通り”というものではなかったです。斎藤選手が速くて、後半にタイヤが苦しくなるところでチャンスが出てくるかなと思っていましたけど、本当にミスなく走り続けていたの、こちらが差を詰めていく機会が少ない中で、少しずつタイムを稼いでいきました。次戦に向けてもっとアジャストして、勝利を確実なものにできるようにしたいです」と振り返った。

0.2秒差の決着となった開幕戦から、スーパーフォーミュラとの併催となる今回はどんな展開が待ち受けているのか。通常は1週末に1レースだが、今回は土曜日に第2戦、日曜日に第3戦が開催される。

他のカテゴリーにも負けないくらい熱いバトルに、ぜひ注目していただきたい。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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