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モーター スポーツ コラム 2024年6月24日

福住仁嶺選手(No.14 ENEOS X PRIME GR Supra)「あんなに喜べない表彰台はない」 | SUPER GT 2024 第3戦 鈴鹿【SUPERGT あの瞬間】

SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子
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福住仁嶺 | No.14 ENEOS X PRIME GR Supra(写真左)

福住仁嶺 | No.14 ENEOS X PRIME GR Supra(写真左)

「あのとき、何があったの?」__ レースウィークの出来事、ドライバーに話してもらいたいと思いませんか? タフなレースを終えたドライバーに改めて話を聞く「SUPER GT あの瞬間」。2024年シーズンもレースの舞台裏に着目し、ドライバーの気持ちをコラムでお伝えします!

今年、トヨタ陣営へと電撃移籍した福住仁嶺選手。開幕から2戦は不運なハプニングが続くも、鈴鹿ではQ2で自身トップタイムをマーク! 即戦力をアピールし、シーズンベストとなる予選3位獲得に貢献した。だが、決勝レース終盤、手の届くところにあったシーズン初勝利がこぼれ落ちる“あの瞬間”に遭遇。今でも目を瞑るとそのシーンが浮かぶと言う。悔しさをバネにシーズン中盤戦以降、さらに躍進を目指す福住選手に話を訊く。

── 鈴鹿では予選3位スタート、決勝は2位。ひとつポジションは上がりましたが、レース内容を振り返ると複雑な思いがあるのではないでしょうか。どんな表彰台になりましたか?

福住仁嶺(以下、福住):とにかく悔しい……ですね。表彰台でまぁまぁ悔しいときは今まであったかもしれないですが、こういう風にドライブスルーペナルティを喰らってしまっても表彰台に乗ったことはあんまりなかったんです。今回、僕たちはもともと調子が良かったですし、普通に行けば優勝できるポテンシャルがあるなかでのドライブスルー(ペナルティ)だったので、なんとか2位までは巻き返すことはできたんですけど、とにかくもう悔しいというか、あんなに喜べない表彰台はないなっていうくらい、精神的に本当にきつかったです。こんなにもやり直したいって思ったことがないぐらい、いろいろと考えさせられるレースでした。

── 今回、シーズン初めてQ2を担当。その理由は?

福住:特別、理由はないです。どちら(のドライバー)がどっち(の予選)に行こうが、そんなにパフォーマンスに差はないと思います。ただ、開幕戦と第2戦の流れが良くなかったですし、何か流れを変えるきっかけにしたいなっていうのも含め、今回は大嶋(和也)さんがQ1、僕はQ2になりました。やっぱり違った緊張感もすごいありました。(公式練習のGT500クラス)専有走行では、大嶋さんにニュータイヤで走っていただき、いつもと流れが違ったのでやっぱり感覚が変わっちゃう部分もあったと思うんですが、そのなかでもQ1をしっかりとまとめていただきました。Q2では、そこからのフィードバックとチーフエンジニアの阿部(和也)さんのおかげで……でも、やっぱりプレッシャーはかなりありましたね。緊張感みたいなのはそんなになかったんですけど、ユーズドタイヤで予選という感覚が初めてだったんで、どれぐらい(タイヤの)グリップが落ちているんだろうとか、どういう手応えのなかで走れるのかなっていう不安感みたいなものがあったんです。

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福住仁嶺選手(No.14 ENEOS X PRIME GR Supra)「あんなに喜べない表彰台はない」 | SUPER GT 2024 第3戦 鈴鹿

ただ、クルマのほうは仕上がり良かったんで、全く違和感がありませんでした。僕のイメージのなかでは、鈴鹿が一番(タイヤ)摩耗の多いサーキットかなと思っていたんで、 まさかああいうタイム(2番手に0.473秒の大差をつけて、Q2トップタイム)で終われると思ってなくて(笑)。1周してタイムを見て、“これ、悪くないな”という手応えもありました。路温が下がってコンディションが良くなったおかげで、Q2のタイムが非常に良かったと思うんです。そういう流れやチームのおかげで、あのうようなパフォーマンスで走ることができたと思います。

── 今年、メーカー含めてチームを移籍。新たなチーム“TGR TEAM ENEOS ROOKIE”は、大嶋和也選手を軸にしたアットホームなチームというイメージがありますが、もう馴染みましたか?

福住:チームは居心地がとてもいいです。トヨタ自体、“TGRファミリー”っていう家族感みたいなものがすごくあるんです。僕もすぐに馴染ませていただいているような感じです。プラス、ROOKIEレーシングも皆さんとても優しい方が多くて。もともと、エンジニアの阿部(和也)さんをホンダ時代から知ってるってこともあって、全然違和感なくコミュニケーションが取れています。高木虎之介さんは、今まで接点はなかったんですけど、いざ一緒にやらせていただくと非常にユニークですし、高木さんと大嶋さんのやり取りを見てるのもすごい楽しいです。とにかくアットホームな感じで、すごい違和感なくレースに集中できてるっていうことが、今年の僕自身のパフォーマンスにも繋がってると思えるので、それは、この環境のおかげだと思ってます。

── レースでは3周目から4周目にかけて、No.16 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R−GT #16を逆転。どのような形でアプローチしましたか?

福住:14号車が選択したタイヤは、そんなにハード側でなかったですし、わりとウォームアップにも強いタイヤだったので、スタートでほんの少し(逆転を)狙っていたんです。だけど、思ったより周りのクルマのウォームアップも早かったし、3時間レースなので全然無理しないで行こうと(思いました)。個人的にはめちゃくちゃ飛ばしていたわけじゃないんですけど、思ったより早い段階で16号車のペースが落ちてきたので、早めにオーバーテイクしておいた方が(トップの)37号車(Deloitte TOM’S GR Supra)に離されないで済むかなと思ったので、すぐにシケインでオーバーテイクを仕掛けて、1コーナーでかわすことができました。結果、あそこで行けたかどうかで今回の結果が大きく変わってきたと思うので、非常にタイミングにも恵まれ、オーバーテイクできたかなと思います。

── 交代した大嶋戦手が2番手で走行を続け、近づく2回目のピットインのタイミングが37号車との勝負となりました。結果、37号車が先にピットイン、14号車は2周後にピットインしてオーバーカットを狙う形でした。37号車が先に動いたことをどう思いましたか?

福住:意外には感じなかったですね。37号車は(笹原)右京選手がスタートして、第2スティントも走って……という流れだったので、おそらく2時間超えてまで走らないだろうと、なんとなく予測はできてたんです。対して、大嶋選手の方が(37号車に対して)ペースがありそう(速そう)だったので、向こうがどう動くかなっていうところで僕もヘルメットを被って見てたんですが、(37号車が)先に動いて。そのあとの大嶋選手の猛プッシュですが、いろんな方が言ってたように、本当にかっこいいインラップを走っていただいて。ああいう姿も見させてもらったので気合も入りましたし、刺激になりました。

── 戦略としてオーバーカットを狙いましたが、ピットから動いた直後は、No.100 STANLEY CIVIC TYPE R−GTがファストレーンを走行中。なんとか接触を回避してコースに戻りましたが(※)、心中は穏やかではなかったと思います。
※ のち、14号車は「ピットエリア遵守事項違反」(ファストレーン走行中の車両走行妨害)のドライブスルーペナルティを課せられる。

福住:そうですね。僕は、(ドライバー交代後、シートに)座ってからシートベルトをちゃんとついてるかっていうのと、エンジンをかける前にちゃんと“IG”(イグニッション)がオンになってるかとか、いろんなことを全部見てから発進するようにしてるんですが、発進前にうしろをちゃんと見れてなかったっていうことは、個人的に後悔してる部分でもあります。ピットロードを離れたら、すぐうしろに100号車が突然現れたんで、“あっ、今のやばいな”っていうのはすぐに察しました。でも、コースに出ていった以上はもう何もやり直せない状況なので、とにかく今の僕のベストを尽くそうという思いでした。アウトラップのときからもう嫌な感じ(ペナルティが出る)はしましたけど、今後は、何か起きたときに、それが2回、3回と続かないよう、なるべく焦らないようにと自問自答しながら走ってたような感じでした。

 ドライブスルーを消化する前で、結構(後続との)タイム差としては確か9秒ぐらいあったと思うんですけど、そういうことを考えたら、みんなが……みんなというか、(ピット作業で)そんなに焦ることもなかったなと思いましたね。あそこでちょっとタイミングをずらして出るだけでも、多分、“運命”(レース結果)はだいぶ変わったと思うので。でも、あのシチュエーションでは、結構みんな(平常を保つことが)難しかったと思いますね。37号車との駆け引きだったと思うし、僕ら14号車にとっては、去年は優勝はもちろん、表彰台すら上れてないようなレースが続いていたし。今年も、最初の2戦はああいう形(トラブルやハプニングに見舞われた)だったんで、やっぱり優勝したいって気持ちがみんな相当強かったと思います。なので、ほんと悔しいですね。

── 勝てる可能性がどんどん大きくなり、気持ちが前のめりになってしまったのかもしれません。この教訓がさらにチームを強くしてくれると思いたいですね。

福住:今回、こういうことが起きて、僕らに足りてないところも新たにたくさん見えてきました。こういうことを経験して、またどんどんROOKIEレーシングが強くなってくれればいいなと思いました。悔しい結果ですけど、非常にいい経験をしたなと思ってます。個人的には、ちょっと……“ドライブスーラー”!? なんて言えばいいんですかね……わからないですけど(苦笑)。トップを走っていてドライブスルー(ペナルティを受ける)っていう経験が、もうこれで3回目ぐらいなんですよ。 8号車のARTA時代にもSUGO(’21年第5戦)でありましたし、富士(’21年第2戦)でも……。富士の場合は、自分がGT300と重なっちゃって黄旗が見えなかったんですけど、トップを走っていてドライブスルーというのもありました。今年に関しては、結構最後のスティントは、うしろと離れてたので……(沈黙)。ただ、今回は結構まだまだ(順位を挽回できる)希望があったドライブスルーだったんで、タイミング的にもまだ良かったですが。でも、今、“ミスター・ドライブスルー”になっちゃってますね(苦笑)。

── とはいえ、福住選手はGT500クラスにデビュー後、毎シーズン必ず優勝しています。今年はそれを14号車で実現できるのではないですか?

No.14 ENEOS X PRIME GR Supra

No.14 ENEOS X PRIME GR Supra

福住:実は、僕自身もそのことをわかっていたし、毎年勝ち続けることが非常に大事だと思っています。去年も鈴鹿(第5戦鈴鹿)で優勝することができたし、毎年、なんだかんだ結構な割合で最後までチャンピオンシップに絡んでいるシーズンが多かったので、正直なところ、自分自身まだまだ全然焦ってもないですね。毎年そうなんですけど、GT500クラスに出始めてからは最初の数戦はダメで、そこからはずっとポイントを着実に獲れるレースが多いんです。なので、個人的にはそういうシーズンの流れには慣れてます。今回は2位でしたが、欲を言えばまだまだ(サクセスウェイトが)軽いなかでレースができると思えば、全然(焦ってはいない)。まぁ、勝ちたかったですけどね。

── 終盤、悔しいなかでドライブスルーをペナルティーを消化し、そのあとは怒涛の追い上げ。まず、72周目にNo.36 au TOM’S GR Supraを逆転します。

福住:向こう(36号車)は“燃リス”(燃料流量リストリクター調整)も入って車重も重たい状態だったので、スプーンの入口で外側に並ぶことができたんです。そこで相手のラインをちょっとだけ潰しながら、130Rに向けて僕に有利になるよう、うまく相手との距離を見ながら走って……。スプーンカーブでのアプローチが非常に良かったので、130R手前で前に出ることができました。

── その次は、“古巣”16号車が目の前に。78周目のシケインでズバっと逆転。コンビを組んでいた大津弘樹戦手を再び抜きました。

福住:そもそも最初のスティント(で抜いた16号車をドライブしていたのも)大津選手でした。去年、あんなにすごく楽しいシーズンを過ごさせてもらった16号車のメンバーもみんな知ってますしね。(チーフ)エンジニアの杉崎(公俊)さんも、SF(スーパーフォーミュラ)で勝たしていただいた経験(’21年第4戦SUGO)がありますし。(16号車との攻防戦は)去年まで走ってたクルマが目の前にいて、なんか非常に新鮮な気持ちでした。それも(その相手が)、今もすごく仲がいい大津選手っていうことで。“絶対に負けたくない”っていうのもありますが、それ以上に、お互いすごいフェアな感じでレースをして、純粋にレースを楽しむことができました。1回目、1コーナーで抜いたあとは、ハザード(ランプ)を焚いて“ざまぁみろ!”みたいな感じでやってましたけど(笑)。でも(第3スティントの)2回目に抜いたときはもうその余裕もなく……。ドライブスルーしたあと、僕は完全にもう目の前のことしか見てなかったので。36号車のときも16号車のときも、37号車にまだ追いつける可能性が少しでもあると思ってたので早く抜きたかったし、抜いたあとはとにかく前を見てずっと走ってました。

── 今回、勝てたであろうレースだったので、「あんなに喜べない表彰台はない」とおっしゃいました。この悔しさを、第4戦富士、そして今後のレースでどのように活かしていきたいですか?

福住:そうですね。この悔しさはチーム全員が感じてると思いますし、レースが終わったあとも、自分を責めてしまう人たち……僕も含めてですが、みんながみんな、本当に申し訳ないっていう気持ちでレースを振り返る感じだったんです。そういう風にみんなが思うチームであることを僕もうれしく思いますし、この14号車のメンバーで早く優勝して笑い合いたいなと、改めて思うきっかけにもなったと思います。こういう経験を得てより強いチームになれると思いますし、肝心なときにプレッシャーにも強くなれるチームにどんどんなれると思っています。ただ、個人的にはまだちょっと寝る前とか、目を瞑っていると100号車が現れる景色が……いまだに、もう何回でもやり直したいなって思っちゃうくらいです。レースが終わって3、4日経ってますけどね。個人的にはそういうことをまだ考えてしまうんですけど、チームにとっては非常にいい経験をしたとも思ってるので、今後もっと強くなるんじゃないかなと思います。

(第4戦)富士では、まだまだクルマが軽いんで、地道にポイントを獲れば全然チャンピオンシップに絡めると思います。本当にトヨタの皆さん……開発メンバーのがんばりのおかげで、今年のスープラは鈴鹿でも強いコンセプトになっていたと思うので、(同じスープラである)37号車も、あれだけうしろのクルマを引き離した状態でぶっちぎりで優勝できたと思います。いいクルマを作ってくれたトヨタの皆さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。

── では、最後に。今一番興味・関心のあることは何か、教えてください。

福住:ちょっとレース関係の話になると思うんですが、今年、SUPER GTのチームメイトの大嶋さんが、今年からFDJ_フォーミュラ・ドリフト・ジャパンに参戦しているんです。で、富士大会を見に行ったんですが、すごい迫力でカッコいいなって。レースとは違う迫力さがすごくあるなと思いました。そしたら、たまたまカート時代からの友達である和田賢志郎君も“D1 Lights” っていうのに出ていまして。彼も僕も福岡に住んでいるのでプライベートでもよく会うんですが、なんか、僕自身もドリフトやってみたいな、なんて(笑)。“ドリ車”!? とか買って、自分でいじったりクルマの勉強をしてもいいのかなとか、そういうこともすごい考えたりしてます。興味というか、ちょっとやってみたいなって思うことのひとつですかね。

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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