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第2戦はGW恒例の富士スピードウェイが舞台となる。
初夏を思わせる日差しの下、300kmの戦いが繰り広げられた2024年SUPER GT開幕戦。そのわずか3週間後に迎える第2戦は、富士スピードウェイを舞台にした3時間レースとなる。今シーズンから新たに導入される時間制の戦いを、チームそしてドライバーはどのような戦略をもって挑むのだろうか。
新たな課題に取り組んだ開幕戦
ホンダ陣営がニューマシン、シビック・タイプR-GTを投入、対するライバルのトヨタ、ニッサン両陣営は新たに空力を変更して戦闘力アップに勤しむなど、シーズンインを前に静かな戦いが始まっていた今シーズン。一方、レースそのものも、タイヤの持ち込みのセット数はじめ予選方式や車両規定において多くが変更されたことを受け、“傾向と対策”に取り組んで開幕戦に臨むこととなった。
ドライバーの多くが「先が読めない」と口にしていた初戦。トラブルやアクシデントを回避すべく、“気持ち控えめ”のレース展開になるのではという懸念もあったが、それぞれが持ちうる力を駆使し、今後の戦いに向けてある程度の予測を立てる機会にもなったことも事実。富士では、岡山での戦いをもとに、シーズンの展望を推測しながらレースを組み立てていくだろう。
カギを握るのは、やはりタイヤ?
開幕戦ではブリヂストン勢が強さをみせた。
今回の富士は、初の「3時間レース」で開催される。このほか、第3戦鈴鹿と終盤の第7戦オートポリスが3時間レースとなり、第6戦SUGOと第8戦もてぎは開幕戦同様の300kmレース、残る第4戦富士および第5戦鈴鹿は350kmレースと、今シーズンのSUPER GTでは3パターンのレーススタイルが用意されている。富士では、この新スタイルでのレースが、チーム戦略にどのような影響を与えるのだろうか。
今回、持ち込み可能なドライタイヤは6セット(ウエットタイヤは7セット)。前回、300kmレースの岡山は4セットだったが、今回は2セット増となる。一方、走る距離はどのくらいになるのか。参考までに、450km・100周で開催された昨シーズンの第2戦は、ドライコンディションで2時間33分強のレースを繰り広げた。また、500km・110周でのレースだった2021年の第2戦は、トップ車両がスタートから3時間3分過ぎにチェッカーを受けている。今シーズンは、よりロングライフ化を考慮したタイヤ作りが進んでいることを踏まえ、トップ車両が3時間で何周走破するかを予測しつつ、レース観戦するのもおもしろいだろう。
今シーズンは、Q1、Q2そして決勝スタートまで同じタイヤを装着するため、レースウィーク中にニュータイヤの走行チェックを行なう機会は少なくなっていると考えられるが、6セット使用可能な富士では、各タイヤメーカーは持ち込むタイヤの種類……いわゆる「ソフト・ミディアム・ハード」の選択にも変化を持たせることも予想される。タイヤメーカーとチームが、どういう戦略に基づいてどんな組み合わせでタイヤを準備するのか。チームごとの“細かな違い”にも注目してみたい。
ちなみに、岡山では、Q1のアタックを担当したドライバーがどこまでタイヤを使ってアタックすべきか、その見極めに苦心した様子。チームによっては、ユーズドタイヤでのタイムアタックに苦手意識を持たないドライバーが積極的にQ2を担当したようだが、Q1はQ1なりの、そしてQ2はQ2ならではのプレッシャーがあるはず。Q1とQ2では路面を含めたコンディションも異なるとはいえ、通常ユーズドタイヤのほうが“おいしい”部分も少ないだろうし、コントロールが難しいと思われるだけに、ドライバー同士が身近な“相方”に対して余計な意識を持ってしまうこともあるのではないか。予選タイムだけがすべてではないものの、シビアな状況に置かれることになったドライバーの気苦労を懸念しつつ、岡山での経験値を活かして自分なりの攻略法を生み出してくることに期待したい。
ピットタイミングはオーソドックス? それとも?
レース開催にあたり、GTアソシエイションが発表した大会規定が記されたブルテンには、GT500、300両クラスにおいて「給油義務を伴うピットインを2回行なうことが義務付けられる」とある。さらに、第3ドライバー登録も認められており、GT300クラスでは12チームが登録を行なっている。チームによっては富士で今シーズン初のレースに挑むドライバーも出てくることだろう。
一方、ピットインのタイミングはピットインの回数に合わせて基本的にオーソドックスな均等割になる可能性が高いのではないだろうか。今シーズンからの新たなタイヤ規制を考えても、最初のピットインでタイヤ交換を選択するはず。このタイミングで給油およびドライバー交代も行なう“フルサービス”を済ませ、2回目のピット作業ではドライバー交代せずに給油とタイヤ交換のみとする。あるいは、天候含め、状況次第でタイヤ無交換で第3スティントに賭けるチームも出てくるかもしれない。まだ他の方法も考えられるが、ライバルの動きを注視しつつステアリングを握るドライバー、そして自分たちに優位な戦局へと持ち込まなければならないエンジニアは、3時間のなかでさまざまなアプローチを見せてくれるはず。クルマの特性、タイヤパフォーマンスを熟慮した上で最適解を導くという“腕の見せどころ”だけに、サーキットで、またテレビの前で、それぞれのチームが採る戦略を想像しながら観戦するのも楽しいだろう。
ホームサーキットでのレースを得意とするトヨタ勢は、開幕戦でau TOM’S GR Supraの坪井翔/山下健太組の勝利で勢いづいている。昨シーズンとコンビは異なるが、富士2連覇そして開幕2連勝を意識しているはずだ。対して、Z NISMOをベースに、空力デザインを見直して車両特性に磨きをかけるニッサン勢、そして新型シビックでの初優勝を狙うホンダ勢のライバル陣営にとっても、初となる3時間レースの結果は今シーズンの流れに影響する一戦だけに、臨戦態勢で富士へ臨んでくる。開幕戦は、トヨタ勢の表彰台独占をホンダ勢が阻止する形となったが、今回、レース3時間後の表彰台の真ん中で微笑むのは一体どのチームになるのか。
GT300クラスは、Zがついにデビューか?
Zのデビューで注目が高まるGT300クラス。
開幕戦では、今シーズンからGT300クラスに参入したFIA-GT3車両のキラリと光るパフォーマンスが注目を集めた。片や、チームが独自開発した車両のデビューレースが近づきつつある。SUPER GTを運営するGTアソシエイションの規定に沿って作る「GT300車両」として、GAINERが日産フェアレディZを新たに投入。だが、製作に時間を要し、オフシーズンの公式テストには不参加。迎えた岡山には姿を現したものの度重なる仕様変更が必要となり、残念ながら走行は果たせず。レースウィーク中はチームピットで公開のみに留まった。果たして、富士のコースで勇姿をお披露目することはできるのか。
一方、決勝レースは、レース巧者が主導権を握る展開となったGT300クラス。速さを活かしたチーム、タイヤマネージメントを最大限引き出したチーム……それぞれが強みを発揮することで激しい駆け引きを繰り広げた。また、muta Racing GR86 GTの堤優威/平良響組と、ディフェンディングチャンピオンのGreen Brave GR Supra GTの吉田広樹/野中誠太組が初戦からいきなりタイヤ無交換に挑むという離れ業も飛び出し、高いタイヤパフォーマンスをアピールしたことに驚かされた。勝者の堤は「タイヤ性能の高さが勝因」と戦いを振り返ったが、さすがに今回の3時間レースではタイヤ交換は必要。だが、そのタイミングやドライバーの走行順含め、各チームが採るピット戦略を比較するのも観戦ポイントになると思われるので、クルマの特性や装着するタイヤの違いにも着目してみよう。
3月下旬に行なわれた公式テストでは、気温が10度にも満たないなか、雨がらみの走行セッションが続いたが、今回、好天に恵まれれば、薫風爽やかなコンディションの下でめいっぱいバトルを披露してくれるはず。仮に天候が優れないときは、シーズン初となるウエットレースならではの展開を見届けたい。いずれにせよ、各チームにとって、シーズン中盤に向けていい流れを作るためにも“落とせない”戦いになる。
ドライバーからひと言!
牧野任祐(2023年第2戦富士ポールポジション獲得者)
開幕戦3位表彰台を獲得した100号車 STANLEY CIVIC TYPE R-GT。
開幕戦岡山では、久々に山本尚貴選手と一緒に表彰台に上がることができました。新型シビックでの優勝を狙っていたので悔しさもありますが、シーズンを考えれば結果が出せて、幸先のいい開幕戦だったと思います。
今シーズンからタイヤの使い方が変わりましたが、岡山を戦ってみて、まず公式練習でいろいろ気を遣わなきゃいけないなと思いました。このセッションでタイヤを傷めてしまうと、その先に影響が出ますからね。
今回の富士は3時間レース。やったことがないだけに、どうなるかまだわからない部分が多いです。ただ、チームと相談して戦う上では、いつもと変わらないと思っています。チームとして、またクルマとしてもいい流れがあるので、そこを活かした戦いがしたいです。クルマには24kgのサクセスウェイトを載せますが、まだ全然戦えるウェイトです。ポイントを獲れるうちに獲っておきたいですね。もちろん、シビック勢初となる優勝を狙います。
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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