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モーター スポーツ コラム 2024年3月26日

公道区間は半分だけ!?それでも歴史的な日本初の公道・自動車レース(フォーミュラE・東京コース解説)

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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「2024 Tokyo E-prix」は日本初の公道自動車レース

「2024 Tokyo E-prix」は日本初の公道自動車レース

2024年3月30日(土)、いよいよ「フォーミュラE世界選手権」の東京大会「2024 Tokyo E-prix」がお台場で開催されます。J SPORTSでは今シーズンも「フォーミュラE世界選手権」をライブ中継!もちろん東京での戦いもオンエアされます。

待ちに待った初開催を前に「フォーミュラE」が各方面のメディアで取り上げられるようになってきました。小池百合子・東京都知事が開催決定の前段階としてフォーミュラEとのパートナーシップを発表したのは2022年秋のこと。それ以前も幾度となくフォーミュラEの開催は業界でも噂されていましたが、噂されては消えの繰り返しでした。それくらい都市部でのモータースポーツ競技開催、ましてや公道を使用する自動車レースとなるとハードルが相当高かったからです。

メディアが注目するのはやはり「日本初の公道自動車レース」であるという部分でしょう。2020年に島根県・江津市で「A1市街地グランプリ」というレースが日本初の公道レースとして開催されたため、厳密にはフォーミュラEの公道開催は日本初ではありません。しかしながら、同イベントはレーシングカートを使ったレースであり、自動車を使った正式な選手権レースとしては今回のフォーミュラEが日本初の試みとなります。

もちろん、WRC(世界ラリー選手権)の「ラリー・ジャパン」など公道区間を封鎖して行うモータースポーツはすでに存在していましたが、公道をサーキット化させるレースとなると日本ではなかなか許可がおりなかったのです。

2000年代には北海道の小樽市でアメリカの「チャンプカー」(CART/現在はインディカーと統合)を公道で開催する計画がありましたが、資金難で頓挫。街をその週末だけの特設サーキットに変身させるには、安全を担保するタイヤバリアやフェンスの設置、路面の整備、ノウハウを持ったスタッフの召集などが必要で、たった3日間のために支払うコストは莫大になってしまいます。やはり潤沢な資金を持った自治体でなければ実現が難しいのが公道自動車レースの現実なのです。

また、騒音や道路封鎖による交通渋滞など周辺の住民への配慮も必要です。鈴鹿サーキットがある三重県・鈴鹿市ですら、公道を使ったF1デモンストレーション走行の計画が運動公園の敷地内での開催に変更を余儀なくされる事案があったほどです。これは行政も後押ししていた計画だったのですが、前例が無い事案であり、地元の警察がまさかのノーを出しました。のちに鈴鹿市は関係各所と連携し、鈴鹿10時間耐久レースの公道レーシングカーパレードを実現しています。

前例のないことを実行するには段階を踏むことも時には必要ですし、時代の後押し的な部分にプッシュされ、勢いで突き進むことも必要です。そういう意味では今回のフォーミュラE・東京開催は「ゼロエミッション」「東京のシティセールス」「騒音が少ないフォーミュラE」「1周の距離が比較的短いフォーミュラEのコース」「フォーミュラEの世界選手権への昇格(以前は格下のカップ戦扱い)」「国内外EVメーカーの参戦」「お台場周辺でのモータースポーツイベント開催の実績」など様々な要因がプラスに働き、行政が開催を推し進めやすい条件が整っていたと言えるでしょう。

会場図

会場図(公式サイトより)

前置きが長くなりました。東京大会「2024 Tokyo E-prix」のコースですが、全てが公道区間というわけではありません。1周2.582kmでコーナーは18ヶ所。そのうち8ヶ所が公道部分に存在するコーナーとなり、残りは東京ビッグサイトの敷地内を走行するのです。

スタート&フィニッシュライン、そしてピットが設けられるのは東京ビッグサイトの海沿いの駐車場。昨年の東京モビリティショー(旧東京モーターショー)では試乗車の発着場所やデモンストレーション走行の会場として使用されていた場所になります。そこからスタートし、駐車場内に設けられた特設コースを通過。ターン8からターン15までが公道区間となるのです。

半公道というレイアウトにはなりますが、公道区間はとてもスピード域の高い高速コーナーを有する区間です。公道区間の途中にあるシケイン(ターン10からターン11)のブレーキング勝負は東京大会の大きな見どころとなるでしょう。ターン12となる「東京ビッグサイト前」の交差点を左に曲がり、レセプションホールと東展示場をつなぐ連絡橋の下を通過し、東1ホールの南側を左に曲がり、再び東京ビッグサイトの外周路へと入り、メインストレートのある駐車場エリアへと向かいます。

シミュレーターの映像を見る限り、公道区間には中央分離帯があるためコース幅は狭く、シケインもかなりタイト。接触があれば、後続も巻き込まれる可能性が高いので、やはり上位グリッドの確保は必須になってくるでしょう。トーナメント方式で行われる予選から注目です。

周辺住民の生活に支障がないように配慮したという意味でも東京ビッグサイト周辺での開催は妥当な選択肢だったのかと思います。今回の初開催は完全な公道レースではありませんが、日本の市街地での自動車レース開催という意味では大きな第一歩であることは間違いありません。イベントが成功すれば、難しい課題とされてきたハードルが一気に下がり、様々な自治体で公道レース開催が検討されるようになるかもしれません。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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