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ひとつでも前を狙ってスタートした山本は、1コーナーでポジションをひとつ上げると、当初から決めていた作戦でピットウインドウが開いた10周目にタイヤ交換を敢行。上位陣がピットストップを終えたところで3番手に浮上した。
前を走る山下健太(KONDO RACING)の隙をうかがいながらも、後方から迫ってきている太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)の動きもしっかりチェック。「前を追い抜くことを考えて、どこかで仕掛けようと考えていましたが、そこでオーバーテイクシステムを使って抜けなかった時に後ろからやられてしまう可能性もあったので、板挟みの状態にありました」と冷静に戦況を分析し、最適な選択肢を探りながら周回を重ねた。
結局、山下を先頭とした2番手争いは最後までこう着状態が続き、山本は3位でチェッカーフラッグ。2022年第7戦もてぎで優勝して以来、彼にとっては1年半ぶりの表彰台となった。
1年半ぶりの表彰台となった山本(右)
過去3度のチャンピオン経験を持つ山本にとって、表彰台に上がるというのは珍しいことではない。しかも、順位は優勝から2つ下の3位。普段の彼なら悔しさを見せたかもしれない。ただ……今回の山本は違った。レース後のパルクフェルメインタビューでは涙を流して、この3位を喜んでいた。
自身のSNSや普段の取材では、気丈に振舞っていた山本だが……怪我をしてからの半年間がいかに苦しいものだったのか……その涙が物語っていた。
「振り返れば、なんでも短くは感じるんですけど……あの9月以降、(2024年の)開幕が3月にあるのを分かっていながら、半年後ここに戻ってこられるとは思わなかったですし、表彰台に上がれるとも思えなかったですので……ちょっと辛かったです」
「(今回の3位獲得については)ホッとしたの一言です。優勝したわけではないですけど、昨年は表彰台にすら上がれなかったし、ずっとうまくいかないレースが続いていた中で、怪我もしてしまいました。正直『もうチャンスはないだろうな』と思っていたんですけど、またチャンスをもらえたってことは逆にちょっとビックリしているくらいです。ここまでチャンスをもらったら……もうやり切るしかない」
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