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モーター スポーツ コラム 2024年3月5日

「まずは1勝したい」その言葉に込められた覚悟と想い……牧野任祐、勝負の2024SF開幕戦へ

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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牧野任祐牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

いよいよ3月9日・10日に鈴鹿サーキットで開幕を迎える2024全日本スーパーフォーミュラ選手権。昨年シリーズチャンピオンに輝いた宮田莉朋は、今季海外に拠点を移しFIA F2とヨーロピアンルマンシリーズに参戦する。彼にとっては新たな夢への挑戦となる1年だが、同時に国内トップフォーミュラでは21年ぶりに“前年王者不在”のなかで新たなシーズンが始まることとなる。

空席となったカーナンバー1を奪い合う戦いに注目が集まる2024年シーズン。そのなかで、開幕前のテストで目に留まったのが、スーパーフォーミュラ参戦6年目を迎える牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だ。

2015年に鈴鹿サーキットレーシングスクール(現ホンダレーシングスクール鈴鹿)でスカラシップを獲得し、FIA F4日本シリーズ、全日本F3選手権を経て、2017年にはヨーロッパに戦いの舞台を移した。2018年にはFIA F2に挑戦し、第10戦モンツァのレース1で優勝を果たした。

2019年から活動の舞台を日本に戻し、国内2大カテゴリーでレギュラー参戦を開始する。なかでもスーパーフォーミュラでは、デビュー戦となった第1戦鈴鹿でいきなりポールポジションを獲得する快挙を達成。期待度は一気に高まったが、決勝レースはトラブルが原因でのクラッシュという悔しい結果に終わった。2020年第4戦オートポリスで初表彰台を獲得し、初優勝へ向けて調子を上げつつあるように見えたが、その後の最終戦直前に髄膜炎を発症。翌2021年の第2戦まで欠場を余儀なくされるなど、苦しい経験もしてきた。

そんな中、多くのファンや関係者の記憶にも新しいのが、2023年の第6戦富士。デビュー戦以来となる通算2度目のポールポジションを獲得した牧野は、スタートでリードするも、途中のピットストップでリアム・ローソン(TEAM MUGEN)の逆転を許し2番手に後退。最終ラップまで必死に追いかけるも、その差は少しずつ広がっていった。

結局2位でフィニッシュした牧野。スーパーフォーミュラでは自身最高位であると同時に“レースキャリア史上最も悔しさを感じた”と1戦となった。

2023年の第6戦。自身最高位でフィニッシュしたが笑顔は無かった。

レース後、パルクフェルメでのインタビューで感想を聞かれると、牧野は「悔しいです」と一言。インタビューを終えると、サインガードに力なく座り込み、目から溢れ出てくる悔し涙を必死に抑えようとしていた。

その後、リベンジをかけて臨んだ第7戦もてぎではスタート直後のアクシデントで宙を舞う大クラッシュを喫した。幸い大きな怪我はなかったが鈴鹿での最終大会では表彰台ならず。スーパーフォーミュラに参戦して5シーズンが経過し、まだ優勝がないという状態が続いている。

その第9戦を制したのはチームメイトであり後輩でもある太田格之進。表彰台の中央で歓喜する太田とは対照的に、レース後のメディアミックスゾーンに現れた牧野に笑顔はなかった。

「まずは『(太田選手に)おめでとう』と言いたい。だけど自分自身……思うところもあるし、悔しいところもあります。自分自身の何かが足りないのだと思います」

気がつけば、太田の他にも大湯都史樹、福住仁嶺、笹原右京など、鈴鹿サーキットレーシングスクールで育った同世代のドライバーや後輩たちが次々と初優勝を挙げていく。それがどれほど悔しいものなのか、他の誰でもない牧野自身が一番感じている様子だった。

この時はいつになくコメントが少なかった牧野。「もちろん諦めていないし、僕も勝てると思っているので……来年(2024年)は勝てるように頑張ります」と語り、メディアミックスゾーンを後にした。

迎えた2024年シーズン。開幕前恒例の公式テストが始まった。今回は走行前日に各チームの監督、ドライバー、エンジニアが出席してのメディアセッションが行われた。

そこに出席した牧野は「昨年は惜しいレースだったので、まず初優勝目指して頑張りたいと思います。チームランキングが昨年3位だったのですが、チームランキングもチャンピオンを獲れるようにみんなで力をして頑張りたいと思います」と今季の意気込みを語ったが、その目つきは今までとは異なっており、昨年以上に闘志に満ち溢れているように感じられた。

いざ2日間のテスト走行が始まると、それは結果にも現れる。ウエットコンディションとなった1日目は午前・午後ともに2連続でチームタイトルを獲得しているTEAM MUGEN勢を上回りトップタイムを記録。2日目は前日の雨の影響でセッション前半はダンプコンディションだったが、路面が乾いた後半でタイムを上げていき、1分37秒455をマーク。2番手以下に0.294秒の差をつけた。

公式テストでは安定した速さをみせた牧野

テストでは各陣営がそれぞれのメニューをこなしながらタイムを記録するため、今回の開幕前テストの序列がそのままシーズンの勢力図になるとは限らないが、各セッションでトップにつけているということは少なからず重要なこと。そこにこだわっていたという訳ではないだろうが、牧野の走りから“今年は絶対に結果を残す”という鬼気迫る雰囲気があったように感じられた。

「今回のテストでは僕たち5号車のパッケージが抱えていた問題を解決するように取り組んでいましたけど、一番手応えは感じられて、開幕に向けてすごく楽しみなテストになったのかなと思います。冬のテストはいつも速いですけど、昨年の夏に行われたテスト以降は暑い時期も良くなっています。鈴鹿は得意なコースですし、まずは開幕で良いスタートができるようにしたいです」

牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

例年になく大きな手応えを掴めているのか、自信に満ちている表情で語る牧野。彼のコメントにもある通り、昨年夏のテストからダンディライアン勢が調子を上げているのは確かで、このまま行けば今シーズンのチャンピオン争いに絡んでくる存在になりそうだ。

それでも牧野「チャンピオンを目指していきますけど、まずは初優勝を目指して頑張りたいです」と、国内トップフォーミュラで1勝目を挙げるということに強くこだわりを持っていたのが印象的だった。

チーム移籍や注目の新人ドライバーも多く、新たな勢力図が形成されそうな予感の2024年シーズン。その中で牧野は、開幕戦の優勝候補の1人となることは間違いないだろう。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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