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以前はワークスマシンに近いバイクを限られたチームに貸与していたホンダですが、強力なベース車をユーザーであるプライベーターに提供することで、ホンダユーザー全体の底上げを図るというアプローチなのでしょう。昨年、ホンダの社内クラブチームである「Honda鈴鹿レーシングチーム」など小規模プライベーターが全日本で躍進しましたし、特に電子制御/ECUの熟成が進んだ今季は各チームがさらに実力を付けてきたと感じます。レースに特化したマレリ製ECUではありませんが、非常に扱いやすく優れているとプライベーターから評判です。
ホンダ勢のプライベーターで注目は伊藤真一監督が率いる「#17 Astemo Honda Dream SI Racing」(渡辺一馬/水野涼/作本輝介)です。同チームは今年、チームスタッフがほぼ総入れ替えになり、全日本の開幕時にはドタバタ感が否めませんでしたが、7月の8耐テストでは2分6秒638をマークして2番手タイムを獲得。3人のライダーのアベレージも揃い、チームとしてかなりまとまった印象を受けました。
実際に伊藤真一監督も電子制御関連の進み具合に手応えを感じているとのこと。このチームは日立アステモがメインスポンサーですが、同社のスタッフが現場でも電子制御などの開発を担っています。現在はサスペンションのショーワ、ブレーキのニッシンも合併して日立アステモを形成しており、以前はそれぞれ別々の会社としての供給だったものが、同じ会社になったことで、その効果が出ているのではないかと思います。そういう意味でチーム体制としてはかなり大規模と言えますし、その力が鈴鹿8耐で発揮されれば、最強レベルの伏兵になるでしょう。かなり期待です。
今年の鈴鹿8耐はメーカー同士のワークス対決の構図こそありませんが、かつて2003年に「桜井ホンダ」が優勝した例のように、国内プライベーターにとっては大いなるチャンスがある大会と言えます。そういう意味でプライベーターの鼻息が荒い今年の鈴鹿8耐は例年以上にバトルいっぱいのレースになるかもしれません。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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