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モーター スポーツ コラム 2023年6月2日

SUPER GT2023第3戦プレビュー ~失敗と成功は隣り合わせ~

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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開幕戦の悔しさを第2戦で晴らしたNo.36 au TOM’S GR Supra

2023年のSUPER GTシリーズは、早くもRd.3鈴鹿を迎える。今回も450kmレースフォーマットとなり、レース中には2度の給油を伴うピットストップが必要となる。ドライバー交代に関しては、全体の3分の2を越えなければ、ダブルスティントを担当することも可能となり、戦略の幅が広がっている。

昨年初導入された新フォーマットも徐々に定着してきているようで、各チームの間でも戦略面での工夫などが見られるようになったが、それでも、前回のRd.2富士では、GT300クラスの1位(リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R)と2位(muta Racing GR86 GT)が、わずか0.579秒差でフィニッシュするという、SUPER GT特有の接戦も見られ、わずかなミスやタイムロスが、レース結果に直結することは言うまでもない。

僅差で勝利を勝ち取ったNo.56 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R

特に最近では、ドライバーだけでなくチームスタッフの働きぶりも、勝敗を左右する大きな要素として注目を集めているのだが、ここまでの2戦を振り返ると、コース上ではないところでの“失敗と成功”が明暗を分けている気がする。

5月3日・4日のRd.2富士。100周にわたって一度もセーフティカーが出ないレース展開となり、各チーム・ドライバーの実力がぶつかり合う1戦となった。その分、わずかなミスが目立つ1戦にもなった。

なかでもGT500クラスで顕著に現れていたのが、今年からGT500クラス2台体制で戦うARTAだ。昨シーズンのスーパーフォーミュラでダブルタイトルを獲得し、今季も強さをみせているTEAM MUGENがマシンメンテナンスを担当。経験あるARTAが指揮をとる新しい体制に生まれ変わり、NSX-GTラストイヤーとなる2023年でチャンピオン獲得という目標を達成するべく、開幕戦から戦っている。

このRd.2でも、2台のARTA MUGEN NSX-GTは力強い走りを見せたが……同時に細かな失敗が目立つ結果にもなった。3番手からスタートしたNo.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)は、序盤すぐに2番手に浮上すると、トップのNo.100 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)を追い詰める走りをみせた。展開次第では優勝の可能性も十分にあったが、ピットストップで作業違反(交換したタイヤが、ナットで固定されていない状態で給油を開始してしまったため)を取られてしまい、ドライブスルーペナルティを受けることに。これで、一気にポジションを落としてしまった。

No.16 ARTA MUGEN NSX-GT

中盤に入って2番手に上がったNo.8 ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹)も、最後まで表彰台圏内を争う力強い走りを見せていたが、残り2周というところでガス欠によりスローダウン。幸いにも症状が出たのは最終コーナー付近だったため、すぐにピットインして給油をしたが、結果は11位となり、ポイント圏外でレースを終えた。

開幕戦でも16号車がペナルティを受けるなど、新体制で期待されながらも開幕戦から流れの良くないARTA。レース後はSNSでも厳しいコメントもいくつか見られた。特にスーパーフォーミュラでは完璧な仕事をこなしているMUGENが携わっているだけに“なぜ?”と思った人も少なくはないだろう。

ARTAのミスが目立った富士大会だが、その裏では大きなミスから反省して、成功に導いたチームがいる。トヨタ勢の名門チーム『TOM’S』である。開幕戦の岡山では、No.36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)がトップ争いを演じていたが、レース終盤のピットストップで、左フロントタイヤが固定される前にジャッキが下され、マシンが発進してしまった。もちろん、すぐに走行不能となり、リタイヤとなってしまった。

TOM’Sでは昨シーズンもスーパーフォーミュラでタイヤ交換のミスが何度か見られており、両カテゴリーともTOM’Sから参戦する宮田は「何とかしないといけない」と、レース後すぐにファクトリーに行って、対策の話し合いを申し出たという。

これに対し、チームも危機感を感じており、スーパーフォーミュラとの連戦で時間がないなか、メカニックやエンジニアを含め、徹底的に問題点を洗い出した。その結果、ゴールデンウィークの富士大会ではトップ争いをしているという重要な場面でプレッシャーもかかるなかだったが、2回のピットストップともノーミスでマシンを送り出し、36号車を優勝へ導いた。

前戦の反省を活かし対策を取った36号車のPIT作業

前回の富士大会では、後続に対して28秒もの大量リードを築いて優勝を果たした36号車。コース上での速さはもちろんなのだが、チームの努力と下支えがあっての独走劇だったのだ。

現在のSUPER GTではシーズン8戦あるなかで、全てを完璧に戦い抜くのは至難の業。ARTA(MUGEN)のように、安定感抜群と言われていたはずのチームが失敗続きになるケースもあれば、TOM’Sのように失敗が目立っていたチームが、努力を積み重ねて成功に導くというケースもある。今回は、この2チームにスポットを当てたが、その他のチームも成功と失敗の連続で、各レースを戦っているのだろう。

とはいえ、レースで勝つためには失敗する率を可能な限り少なくしなければならない。そういう意味で、ARTAは前回の反省をどう活かしてくるのか注目だし、調子を取り戻したTOM’Sも、このペースを維持していけるかが、チャンピオン争いに向けて重要な要素となってくる。

今週末のRd.3鈴鹿は、セーフティカーが絡むなど荒れた展開が多い傾向にある。周囲の混乱に巻き込まれずに、柔軟な戦略と的確な作業、そしてコース上での安定したドライビングが求められるのは、間違いないだろう。

まさに、チーム総力戦となる鈴鹿大会。コース上だけでなく、ピットでも優勝をかけた争いから、目が離せない。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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