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デビュー戦に期待が掛かるリアム・ローソン。
2023年は全7大会9戦のスケジュールで開催される全日本スーパーフォーミュラ選手権。今年も富士スピードウェイを舞台に“2レース制”のフォーマットでシーズン開幕を迎えるのだが、開幕前からさまざまな要素が絡み合い、近年稀に見る“大荒れな開幕大会”となりそうだ。
すでに本コラムでもお伝えしている通り、2023年は参戦車両の空力パッケージが変更となり、前走車により接近しやすくなるようなマシン特性を狙って製作された分、ダウンフォース量はSF19から減少している。これにより、開幕前の鈴鹿公式テストでは、各チームとも速さを引き出すためにさまざまなテストメニューを組んでいたが、結局手応えをつかめたというところは、ほとんどいないという状況だった。
本来なら、富士スピードウェイでも開幕前に公式テストが行われてきたのだが、昨今の国内モータースポーツ界で深刻化している過密なスケジュールに伴うチーム関係者への負担軽減のため、富士テストは実施されなかった。
このため、全ドライバーにとっては開幕大会が行われる今週末に、初めて富士でSF23をドライブすることとなる。
さらに、土曜日の第1戦公式予選を前に、金曜日には90分間のフリー走行が行われるのだが、現在の天気予報では雨になることがほぼ確定。つまり全員がドライコンディションで富士を走れるのは、土曜朝の予選ということになる。まさに“超ぶっつけ本番”の状況だ。
もちろん、各チームとも過去のデータや鈴鹿テストで得られたデータをもとに、持ち込みセッティングを決めてくるのだが、それが当たっているのか、微調整が必要なのか、それとも大外れなのかはQ1を走り出してみないと分からない。しかもQ1は10分と限られているため、一度ピットに戻って修正する時間もない。そういう意味でも、チームとドライバーの対応力が求められる1戦となるだろう。
そうなってくると、スーパーフォーミュラで経験あるドライバーだけでなく、今年から参戦を開始するルーキードライバーにとっても、例年以上にチャンスが出てきそうな予感がある。ここ数年続いていたコロナ禍に伴う入国規制などが緩和され、今年は久しぶりに多くの海外ドライバーがフル参戦を果たすのだが、なかでも注目なのはレッドブルジュニアドライバーのリアム・ローソンだ。
これまでDTMやFIA F2など様々なカテゴリーに参戦し、短期間で好結果を残してきたローソン。F1でもレッドブルとアルファタウリのリザーブドライバーを務める。
リアム・ローソンはF1でリザーブドライバーを務めている。
スーパーフォーミュラに関しては同郷ニュージーランドの先輩であるニック・キャシディが日本で活躍していた頃から、情報を集め、レースも細かくチェックしていたとのこと。昨年12月にはルーキーテストでSF19をドライブし、「こんなにハイスピードでダウンフォースがあるとは思っていなくて、最初のテストでは首が筋肉痛になった」と明かすほど。ハイパフォーマンスなマシンをドライブでき、興奮を隠しきれない様子だった。
ローソンは前述のルーキーテストに加えて、今年3月の鈴鹿公式テストの2回のみ。本人も「スーパーフォーミュラのクルマを知るために、もっと走り込みたい」と毎回話していたが、合計4日間のテストでコースオフやクラッシュをすることなく、着々とテストプログラムをこなしていた。
ルーキーテストを着々とこなしたリアム・ローソン。
これには田中洋克監督も「テスト前日に『走行時間をきっちり使って走り込むことが重要だから、クラッシュはしないように』と話しました。けっこう外国人ドライバーはこちらの言うことを聞かなかったりするのですが、彼はきっちりと守ってテストにしていましたね」と感心していたのが印象的だった。
ローソンは、日本でのレース経験がないというのは、ライバルと比べると不利に感じてしまうところもあるが、逆にSF19での走行経験が他より多くない分、特性が少し変わったSF23に対する違和感を感じていないというのも、特筆すべきポイントかもしれない。鈴鹿サーキットモータースポーツファン感謝デーでのシェイクダウン後にも「ダウンフォースが減っていると聞いていたから、その辺を想定して走ったけど、実際には大きな違いを感じなかった。それは嬉しい驚きだった」と笑顔で語っていた。
2017年にピエール・ガスリーが来日した時ほど、テストで速さを見せているという印象はないが、しっかりと地に足をつけて、スーパーフォーミュラのことを学び、シーズン本番に向けて備えている。今週末の舞台となる富士スピードウェイについても「レッドブルのシミュレーターで練習はしているし、それこそグランツーリスモで何度も走ったコースだから不安はない」と自信をみせていた。DTMやF2での活躍ぶりが日本の地でも発揮されれば、開幕戦の戦いぶりが非常に楽しみな存在だ。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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