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第6戦で今季初優勝をあげた野尻智紀(J-Gear KIプロモート)。
2021年のインタープロトシリーズPowered by KeePerとKYOJO CUP supported by MUSEE PLATINUMも後半戦に突入。9月25日~26日に富士スピードウェイを舞台に第3大会が行われた。
富士スピードウェイは東京オリンピック/パラリンピックの自転車競技会場となった関係で、6月上旬から9月下旬までレースが開催されず、このインタープロトが同地では久しぶりのレース開催となった。
【関口雄飛と野尻智紀、それぞれの想いが詰まった今季初勝利】
第5戦で最後まで隙の無い走りを見せた関口雄飛(人馬一体ドライビングアカデミー)
インタープロトのプロフェッショナルクラスは、今回も予選から0.001秒を争う接戦の展開となった。関口雄飛(人馬一体ドライビングアカデミー)がいち早くタイムアタックを行い、1分44秒984でトップに躍り出るが、チェッカーが振られた最終ラップのアタックで坪井翔(NETZ NOVEL MIE)が全く同じ1分44秒984をマーク。規定では先にタイムを記録したドライバーの順位が優先されるため、関口は今季初のポールポジションを獲得した。
翌26日の決勝レースだが、プロフェッショナルレースはまさかの事態が起こった。午前中に行われたジェントルマンレースの第6戦で多重クラッシュが発生。これにより、阪口晴南(INGING MOTORSPORT)、山下健太(NAVUL)、中山雄一(岡山トヨペット K-tunes)のマシンが決勝までに修復が叶わず、第5戦・第6戦ともに欠場となってしまった。特に前半2大会でコンスタントにポイントを重ね、チャンピオン争いの中心的存在だった山下にとっては痛い欠場となってしまった。
雨模様となった第5戦決勝レース。関口はポールポジションからトップを守る走りを披露。最初は設定したタイヤの内圧とコンディションが合わずライバルに攻め込まれるシーンもあったが、レース後半は徐々にリズムをつかんでいった。
最終ラップには、後方から追い上げてきた野尻智紀(J-Gear KIプロモート)が背後に迫ってきたが、最後まで隙を見せない走りを徹底した関口が、1レース目の第5戦で今季初優勝を飾った。
昨年から55号車のドライバーを担当している関口。このマシンでジェントルマンクラスに参戦する寺川和紘が第3大会の第5戦でポール・トゥ・ウィンを飾った。自分の勝利はもちろんだが、一緒に組む寺川が好結果を残せたことに嬉しさを感じている様子だった。
「自分のリクエストでタイヤの内圧を高めに設定しましたが、それがうまく噛み合わなくて苦しかったです。それでも1コーナーでのブレーキングで何とか粘ってトップを守りました。ジェントルマンレースで同じチームの寺川選手が優勝してくれたことが嬉しいです。ここまで自分がコーチングし、一緒にやって来たことが成果として現れたのは良かったです」(関口)
レース後、寺川和紘(右)と喜びを分かち合った関口。
続く、第6戦も関口が先頭でスタートしたが、1コーナーでは混戦の中でポジションを落としてしまう。さらに2周目にはバトルの中で接触してしまいスピン。マシンにもダメージが及んでおり、残念ながらリタイアとなってしまった。
代わりにトップに立ったのが7号車の野尻。序盤から安定した走りで周回を重ねていくが、後半になるとSUPER GTでのチームメイトである福住仁嶺(キーパー号)が背後に接近してきた。
刻々と変わる路面コンディションに野尻もあわやというシーンがあったが、しっかりとトップを守りきり、こちらも今シーズン初勝利を飾った。
実は野尻も、インタープロトでは優勝から遠ざかっていた。初めて参戦した2018年の最終大会でいきなり優勝を飾ると、2019年の序盤戦も勝利を重ねていたが、それ以降は苦戦するレースばかりだった。それだけに、レース後は笑顔が見られた。
「インタープロトでは、ここ最近ずっと“暗黒の時代”のような感じで……。不甲斐ないレースが多すぎたので、申し訳ないなと思っていました。その分、今日はせっかく巡ってきたチャンスだったので、SUPE GTやスーパーフォーミュラでやっている時と同じように集中して、タイムを削っていくということをやれたので、それも結果につながったのかなと思います」(野尻)
野尻智紀(J-Gear KIプロモート)
関口、野尻ともに、このシーズン1勝目を皮切りに流れを作ることができるのか。12月の第4大会も目が離せない存在となりそうだ。
そして、気になるのが2021シーズンのチャンピオン争い。第3大会を終えて福住が62ポイントでトップをキープ。10ポイント差で山下健太(NAVUL)がつけ、ランキング3位には藤波清斗(GARDEN CLINIC RT)が51ポイントで続いている。
見た目上では福住が一歩リードと言った印象だが、最終大会はポイントが1.5倍となるため、まだまだ多くのドライバーにチャンスがあると言える。今シーズンも最後の最後まで目が離せないバトルが展開されそうだ。
【ようやく今季初勝利をつかんだ翁長実希「自信を取り戻せた」】
翁長実希(KeePer VITA)は今季初優勝。ポディウムで笑顔がはじけた。
KYOJO CUP supported by MUSEE PLATINUMも後半戦に突入。ここまでの2戦は辻本始温(ORC ARUGOS VITA)が他を寄せ付けない速さをみせ、2連勝をマーク。今回は“打倒、辻本始温”がライバルたちの間では合言葉となっていた。
その中で先陣を切ったのが下野璃央(YGF Drago VITA)だ。これまではドライコンディションでの速さが課題となっていたが、今回は走り出しから好調な走りをみせ、2分00秒210で今季2度目のポールポジションを獲得。2番手の辻本に対し、0.2秒の差をつけた。
決勝は直前に降り始めた雨の影響によりウエットコンディションに。そのまま今季初勝利を狙いトップを快走した下野だが、2周目にスピンを喫し後退。さらに反則スタートがあったとして、ドライブスルーペナルティを受け、優勝争いから脱落してしまった。
代わってトップに立ったのは辻本。小山美姫以来となる開幕3連勝が実現するかと思われたが、難しいコンディションで不安を抱えながら走っていた。
「最初は下野選手の走りをみて、どうなっているかを予測することができましたが、トップに立ってからは自分で路面の状況を探りに行かなければいけなかったので、逆に焦りました。ブレーキングでも、ずっとタイヤと路面と対話しながら走っている感じでした」(辻本)
それでも、安定したペースで走行し、7周目を終えた時点で2番手以下に6秒のリードを築いた辻本。このまま逃げ切るかと思われたが、そう簡単に終わらないのが、今のKYOJO CUPレースだ。
残り3周となった1コーナーで、辻本は足元をすくわれ、コースオフを喫してしまう。何とかトップのままコースに復帰したが、背後には翁長実希(KeePer VITA)が迫っていた。
着々と周回を重ねていた翁長だが、目の前に優勝のチャンスが舞い込んでくると、ここぞとばかりにプッシュを開始。残り2周の最終コーナーでついにトップに浮上。辻本も負けじと最終ラップでの再逆転を狙ったが、1コーナーで再び飛び出しまい、勝負あり。翁長が待望の今季初勝利を飾った。
難しいコンディションの中、翁長は果敢にプッシュした。
「今年は開幕戦でマシンが不調だったり、第2戦は接触によるリタイアがあったりで、運が向かないレースが続いていました。でも、自分自身は変わらずにいつものままいるので、ちゃんと条件が揃って運がついてくれば、トップで走ることはできるんだなと。この優勝で、また自信を取り戻すことができました」(翁長)
KYOJO CUPでは常にトップランカーの1人だった翁長だが、今シーズンは歯車が噛み合わないレースが続いていた。この1勝で、再び流れを取り戻すきっかけを作れたようだ。
一方、開幕3連勝が叶わなかった辻本は、悔し涙を流したが、チャンピオン獲得に向けて、再度気を引き締め直していた。
「自分の走りに徹しなきゃいけなかったんですけど、そこが足りませんでした。(チャンピオン獲得に向けて)油断しているつもりはありませんが、今回のレースで、また一段と気を引き締められました。最終戦も優勝目指して全力で頑張ります」(辻本)
これで、ランキング2位の荻原友美(KNC VITA)に対して27ポイントのリードを築いた辻本。最終戦はインタープロト同様に獲得ポイントが1.5倍となるが、有利であることは間違いない。
今回の悔しさをバネに、有終の美を飾ることができるのか。勝負の1戦は、12月12日に富士スピードウェイで開催される。
【今回の激戦は、11月1日(月)午後9:30~J SPORTS 3/J SPORTSオンデマンドにてダイジェスト放送されます。詳しい放送予定は番組サイトをご確認ください。】
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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