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ライバルと激しい攻防戦を繰り広げた3号車 阪口晴南(INGING MOTORSPORT)
2021年のインタープロトシリーズPowered by KeePerとKYOJO CUP supported by MUSEE PLATINUM。7月24日~25日に行われた第2大会は、今年も鈴鹿サーキットを舞台にして開催された。
昨年は雨の中でのレースとなったが、今年は練習走行日から晴天に恵まれ、両レースとも開幕戦を凌ぐほどの熱戦が繰り広げられた。
【インタープロトシリーズ】ライバルの猛追を振り切り、阪口晴南が2連勝
連勝を果たした阪口晴南(INGING MOTORSPORT)
気温30度を超える灼熱のコンディションとなった鈴鹿大会の予選。インタープロトのプロフェッショナルクラスは、0.1秒を争う接戦の展開が予想されたが、その中で頭ひとつ抜け出たのが阪口晴南(INGING MOTORSPORT)。金曜日の練習走行までは、思い描いていたような手応えをつかめていなかったというが、チームとともに徹底的に打開策を探り、予選で見事に合わせ込んだ。
しかし、ポールポジションを獲得したからと言って、決勝も絶対的に有利になるわけではないのがインタープロトの難しいところ。25日(日)の決勝では阪口を攻略しようと様々なライバルが、彼に勝負を挑んだ。
まず挑んだのは、第3戦決勝で2番手スタートの藤波清斗(GARDEN CLINIC RT)だ。予選ではわずか0.154秒差で阪口に敗れ、セッション後も悔しい表情を見せていた藤波。決勝では何としてもトップに立とうと、序盤から果敢に仕掛けていったが、阪口も隙を見せない走りを披露。2人の攻防戦は最終ラップまで続いたが、順位は変わることなく、阪口がトップチェッカーを受けた。
インタープロトのプロフェッショナルクラスでは、1レース目(第3戦)を終えるとすぐにグリッドに整列し直して、2レース目(第4戦)のスタートが切られる。基本的にグリッド上でメカニックがマシンに触れることは許されないのだが、今回は気温がかなり高いため、ドライバーを冷やす“クールスーツ”で使用する氷の交換・補充の作業のみ許された。
とは言っても、十分なインターバルがないまま第4戦に突入。阪口は休む間も無く、トップ死守のための攻防戦に臨んでいった。
第3戦では藤波が勢いをみせていたが、続く第4戦では虎視眈眈とチャンスを狙っていた山下健太(NAVUL)が勝負に出る。4周目に入るところで藤波を捉えると、徐々にトップを走行する阪口に接近。ここ鈴鹿はオーバーテイクが難しいコースではあるのだが、それでも徐々に阪口を追い詰めていく走りをみせ、特に残り2周はシケインでのオーバーテイクでは狭いスペースでも果敢に飛び込んで行こうとする動きを見せた。
まさに手に汗握る展開となったが、最後まで山下の動きを読んでいた阪口が逃げ切って、鈴鹿大会2連勝を飾った。昨年の鈴鹿大会でも完全制覇を成し遂げた阪口だが、今回は全く違う展開。その中でも勝利を掴むことができ、安堵の表情を見せていた。
「決勝では、こういう展開になることは予想していたので、色んな対策をして挑んだつもりでした。藤波選手や山下選手のペースが良かったですけど何とか抑えられて良かったです。特に2レース目の山下選手が速くて『本当にまずいな』という状態でした。あと1~2周あったら、どうなっていたか分からないです。そういう意味で、予選の結果が全てだったかもしれません」(阪口)
この2連勝で一気にポイントを稼ぎランキング2位に浮上した阪口。2021シーズンのチャンピオン争いに一気に名乗り出ることとなった。
【KYOJO CUP】辻本始温の勢いが止まらない! 堅実な走りで開幕2連勝
初のPPを獲得し、ポールトゥーウィンを飾った辻本始温(ORC ARUGOS VITA)
KYOJO CUPも鈴鹿サーキットを舞台に第2戦が開催。13台がエントリーし、白熱のバトルが繰り広げられた。今回は2019年チャンピオンである村松日向子(ZENKAIRACINGライソンMJ)が久しぶりにKYOJO CUP参戦を果たし、注目を集めた。
その他にも実力あるドライバーたちが揃う中、決勝グリッドを決める公式予選で速さを見せたのは辻本始温(ORC ARUGOS VITA)だった。計測1周目から好タイムを叩き出し、最終的にライバルに0.3秒もの差をつける2分27秒600をマーク。KYOJO CUP初のポールポジションを獲得した。
今季の開幕戦では見事初勝利を飾った辻本だが、4輪レースの経験はまだ豊富といえる状態ではない。予選アタックについても勉強中なのだが、意外にも開幕戦での優勝で“手にしたもの”が、今回のポールポジション獲得につながるきっかけとなったという。
「鈴鹿は正直自信がなくて『ちょっとまずいかな……』と思っていました。でも、前回優勝した時に(副賞の)DIREZZA賞で新品タイヤを1セットいただいて、それを使って金曜の練習走行で新品タイヤの使い方などを勉強できました。それが大きかったです! アタックに関しては悔やむところはありましたけど、自分の走りはできたと思います」(辻本)
こうして予選一発の速さを披露した辻本は、決勝では落ち着いたレース運びをみせる。スタートではミスをしてしまい2番手の猪爪杏奈(Dr.DRY VITA)の先行を許してしまうが、コース後半で追いつくと、しっかりと勝負どころを見極めて、リスクのないオーバーテイクをみせた。
辻本始温(ORC ARUGOS VITA)は終始落ち着いた走りをみせた
そこから一気に逃げようと試みるが、思ったほど後続との差が広がらない。おそらく昨年までの辻本であれば、ここで焦り始めて自らミスを誘発してしまうことがあったのだが、今の彼女は違う。
「終盤まで猪爪選手との差が思ったほど離れず、最後まで油断できませんでした。でも『あと3周!あと2周!』と自分を落ち着かせて走ることができました」(辻本)
こうして、最後までミスのない走りをみせ、見事開幕2連勝を果たした。
これで合計42ポイントまで伸ばし、ランキング2番手の荻原友美(KNC VITA)に対し16ポイントのリードを築いた。早ければ第3戦の結果次第でチャンピオンが決まるのだが、本人はここからが勝負と冷静に状況を捉えている。
「鈴鹿のようなテクニカルなコースでの経験は、絶対に富士のセクター3に生かせられると思います。油断禁物ですけど、今回も勝てたことで、またひとつ自信になりました。もっと詰められるように極限まで頑張りたいです」(辻本)
シリーズも5年目を迎え、レベルの高いドライバーが多数参戦するようになったKYOJO CUP。その中で、新たな1人期待のできる若手ドライバーが着実に力をつけてきている。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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