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モーター スポーツ コラム 2021年4月28日

SUPER GT第2戦プレビュー|ホンダNSX-GT、ニッサンGT-Rの逆襲はあるのか、富士500kmにおいて

SUPER GT by 秦 直之
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ニッサン勢は開幕戦での悔しさを晴らすことができるのか!?

岡山国際サーキットが舞台となったSUPER GTの開幕戦では、何より大嶋和也/山下健太組のENEOS X PRIME GR Supraと、関口雄飛/坪井翔組のau TOM’S GR Supraによる、終盤のトップ争いが最高の見せ場となっていた。山下と坪井がチームこそ違うが、同じメーカー同士で繰り広げたバトルは「そこまでやるか!」と感じさせるもので、まさに一瞬即発。ただ、そこにはドライバー同士の信頼があったからできたものであり、改めてプロのすごさを感じさせた。

山下と坪井の手に汗握るバトルは開幕からファンを熱くさせた。

第2戦の舞台は富士スピードウェイ。そして、第3ドライバーの起用が可能な500kmレースとして開催される。もはや誰も想像すらしなかったような、ドラマティックな展開になるSUPER GTである。何が起ころうとも不思議ではない!

開幕戦で圧倒的な速さ、強さを見せたGRスープラ

第1戦でPPを獲得したKeePer TOM’S GR Supra。

開幕戦の予選でポールポジションを獲得したのは、KeePer TOM’S GR Supra。確実に行こうということで、平川亮がQ1を担当し、トップにつけたのはシナリオどおり。が、まさか阪口晴南もQ2トップで、ポール獲得は予想していなかったのでは? ご存知のとおり、渡航制限により、来日できずにいるサッシャ・フェネストラズの代役として起用された阪口である。もちろん2回のテストは走行しているとはいえ……。

「Q1を平川選手がトップで終えられたので、緊張感が一気に高まりましたが、直前まで平川選手がアドバイスしてくれたおかげです」と、阪口が先輩を立てる気配りも見事ではあった。

しかし、それ以上の驚きはGRスープラ勢が、上位を独占したことだった。2番手は大嶋/山下組のENEOS X PRIME GR Supraで、3番手が関口/坪井組のau TOM’S GR Supra、4番手がヘイキ・コバライネン/中山雄一組のDENSO KOBELCO GR Supra、そして5番手が立川祐路/石浦宏明組のZENT CERUMO GR Supraという順番で。

6番手にようやく伊沢拓也/大津弘樹組のModulo NSX-GTがつけて、さらに驚きを加えたのは、ニッサンGT-R勢が1台もQ1を突破できなかったことだ。驚きは、まだある。公式練習でトップだった、野尻智紀/福住仁嶺組のARTA NSX-GTがQ1突破ならなかったばかりか、14番手に沈んでしまったのだ。なんと極端な!

予選でまさかの14番手となりQ2に進出できなかったARTA NSX-GT。

ARTA NSX-GTの予選での苦戦は、季節外れの暖かさが招いてしまったものとされ、公式練習より温度の上昇で、選択していたタイヤがマッチしなかったからのよう。今やそこまでGT500クラス全体がシビアな領域に突入しているのは、もう誰もが理解するところだが、GRスープラ勢の猛威に関しては、セッティングの幅がそれだけ広いということなのだろう。

そしてGT-R勢の苦戦に関しては前回のプレビューで、ハイダウンフォース仕様のエアロパッケージであるGT-Rは岡山を苦手にしないのでは、と予想したが、まるで裏腹な状況になってしまった。

決勝になっても状況は変わらず。アクシデント発生に対する、セーフティーカーランの対応やタイミングで明暗が多少は分かれたものの、GRスープラ勢がレースを完全に支配。そして、前述の激しいトップ争いが繰り広げられ、3位は序盤にトップを走っていたKeePer TOM’S GR Supra。ピットアウトする直前にキルスイッチが切れる不運があり、ロスタイムを抱えてしまったのが、その順位に甘んじてしまった最大の理由に。4位はDENSO KOBELCO SARD GR Supraで、5位は塚越広大/ベルトラン・バケット組のAstemo NSX-GTが獲得。

そして、GT-R勢の躍進はかなわず、平手晃平/千代勝正組のCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの9位が最上位。予選12番手から一時6番手にまで上がっていた、松田次生/ロニー・クインタレッリ組のMOTUL AUTECH GT-Rは接触によるダメージが大きく、リタイアを喫している。

このオフに、各陣営とも進化の手は緩めなかったはずだ。もちろん妥協など、一切なかったはず。タイヤのマッチングなど要素は、さまざまあるだろうが、これだけあからさまな結果になるとは思わなかったというのが、誰もの意見のはず。では、第2戦はどうなるのだろうか?

富士なら、やはりZENT CERUMO GR Supraか?

得意の富士で今シーズン初優勝を狙うCERUMO GR Supra。

3月26〜27日に富士で行われた公式テストでも、やはりGRスープラ勢は上位を独占。au TOM’S GR Supraがトップで、2番手がENEOS X PRIME GR Supra。奇しくも開幕戦で順番こそ異なるものの、優勝を争い合ったチームだった。もっとも、ウエイトハンデならぬ、サクセスウエイトを積む2台だけに、さすがに今回も優勝争いを、というのは至難の技だろう。

もし、GRスープラの快進撃が富士でも続くなら、前回6位で10kgのハンデで戦えるZENT CERUMO GR Supraが有利か。立川と石浦の、富士との相性良しは誰もが知るところ。前回ではなく、今回に焦点を絞っている可能性は十分にある。

そして公式テストにおいて3番手だったのが、MOTUL AUTECH GT-Rだ。ここではウイングをべたべたに寝かせて最高速を稼いでいたという情報があり、そこにハイダウンフォースのエアロパッケージがかえってマッチした可能性はある。まさに「押してダメなら、引いてみろ」の発想なのかも。4番手はAstemo NSX-GT。昨年も富士では1勝しており、このところの展開では予選より決勝を得意とする傾向にある。前回5位ながら、ウエイトは12kg積むだけとあって、このチームにも勝負権ありと予想したい。

また気になるところは、STANLEY NSX-GTが第3ドライバーを起用していることだ。前回、組んだ山本尚貴と武藤英紀だけでなく、牧野任祐が加わっている。病気が完治したのか定かではなく、レースできる状態なのか明らかにされていないとはいえ、元気な姿を見られることを期待したい。

GT300ではRUNUP RIVAUX GT-Rが台風の目に

活躍が期待される田中篤/青木孝行/内田優大組のRUNUP RIVAUX GT-R

前回のGT300クラスは、2回目のセーフティカーラン後に展開が大きく入れ替わることとなった。序盤はポールポジションを獲得した平中克幸/安田裕信組のGAINER TANAX GT-Rと、吉田広樹/川合孝汰組の埼玉トヨペットGB GR Supra GTがトップを争い、これに藤波清斗/J.P.デ・オリベイラ組のリアライズ日産自動車大学校GT-R、そして蒲生尚弥/菅波冬悟組のLEON PYRAMID AMGが続いていた。

が、アクシデントの発生に合わせ、セーフティカーが入るのを見越し、ほとんどの車両が一斉にピットに入ったことから展開は変わる。4台での争いは変化がなかったものの、順位が、LEON PYRAMID AMG、埼玉トヨペットGB GR Supra GT、GAINER TANAX GT-Rに変わっていたのだ。これはすなわちピットの滞在時間の違いによる。ドライバー交代時に通常ならピットロードに車両を平行に止めるのだが、スペースの関係で斜めに止めざるを得なかったチームもあり、その場合いったん車両は押されてからピットを離れることになる。このロスタイムが順位を入れ替えたというわけだ。

この4台、オープニングラップを除けば、このセーフティカー導入時以外に順位変動はなく、ノーハンデの状態においては極めて実力が拮抗していた、ということもできる。その上で、運も実力のうちとばかりに、ディフェンディングチャンピオンでもある、藤波とオリベイラが貫禄の勝利を挙げたことになる。

開幕前から好調を維持しているリアライズ日産自動車大学校GT-R

そのリアライズ日産自動車大学校GT-Rは、3月の富士公式テストでもトップタイムをマーク。さすがにサクセスウエイトを60kgも積んでは、連勝は不可能にも等しいが、上位でのゴールを果たせば連覇の希望もグッと増すはずだ。テストで2番手はGAINER TANAX GT-Rで、3番手は田中篤/青木孝行/内田優大組のRUNUP RIVAUX GT-R。このチームはノーハンデで挑めることから、今回の台風の目的存在になるのは間違いない。

そして、4番手につけていたのが三宅淳詞/堤優威組のたかのこの湯GR Supra GT。テスト時がシェイクダウンだったにも関わらず、いきなり速さを見せていただけに、前回の5位も納得といったところ。

一方、テストでは埼玉トヨペットGB GR Supra GTは中位に留まっていたものの、速さのみ追求してテストしていたのではないのだろう。何せ昨年、4戦行われた富士ではノーハンデの第1戦、最終戦を制しているのである。あらかじめウエイトを積んだ状態を想定してテストし、重い状況でも確実に高得点を狙いに来るのだろう。吉本大樹/河野駿佑組のSYNTIUM LMcorsa GR Supra GTも含め、今回もGRスープラ勢の大暴れに目が離せそうもない。

このところセーフティカー導入で、展開が大きく変わることが多いのは先にも触れたとおりだが、そういったことを防ぐ意味でも、できる限りFCY(フルコースイエロー)を活用するという情報も伝わってきた。50km/hでの走行が義務づけられ、一定の間隔が保たれるシステムが展開にどう影響を及ぼすのか、大いに気になるところではある。

文:秦 直之

秦 直之

秦 直之

大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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