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今季2度目のもてぎ決戦、今までとのコンディションの違いに、どう向き合うか?
今年2度目の開催となるツインリンクもてぎ
いよいよSUPER GTも佳境に差し掛かり、残す戦いは2戦だけとなった。そのシリーズ第7戦の舞台は、第4戦以来の開催となるツインリンクもてぎ。もともと最終決戦の地であっただけに、季節的な条件はこれまでのデータが活かされるだろうが、問題はウエイトハンデだ。
半減されるとはいっても、最終戦であったなら原則ノーハンデ。ならば、第4戦のデータを活かそうとなると、今度は季節的な条件の違いもある。まったく同じことが当てはまるとは、限らないだろう。なかなか難しいレースになりそうだ。
奇跡の大逆転勝利があった第6戦
幸運とチームの総合力で2勝目を掴んだ23号車 MOTUL AUTECH GT-R
前回の鈴鹿では「テール・トゥ・ウィン」なる新語も誕生した。予選でクラッシュを喫したため、最後尾スタートを余儀なくされていた、MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生/ロニー・クインタレッリ組が優勝したからだ。しかし、同じ鈴鹿での第3戦でも勝っているチームでもあり、当のクラッシュはセクター1で最速タイムを出した直後。ウエイトハンデも50kgで燃料リストリクターの規制がかからない、ギリギリの領域ではあったことも功を奏したが、何よりセーフティカー(SC)ランのタイミングを完璧に活かせた感は強かった。
アクシデントの発生に対し、SCが入るのは必至だからと、すぐピットに入れようとしたチームの判断も素晴らしかったが、SCボードが出される前に入れる場所にいたという幸運。判断できたとしても、すでにホームストレートを通過していれば実行不可能。勝利の女神が微笑むとは、まさにこういう事態なのだと改めて感じた次第である。ただ、当該車両はすぐ自走して、ピットに戻ったこともあり、本当にあのタイミングでSCを出すべきだったのか、という声もあったのは事実ではあった。
大接戦の2020シーズン、勝利の女神が微笑むのは?
安定した走りを見せるランキングトップの14号車 WAKO’S 4CR GR Supra
そういった予想外の展開もあったことと、2度のピットストップを強いられていたことで、ポイント獲得はならなかったが、WAKO’S 4CR GR Supraの大嶋和也/坪井翔組はランキングのトップを死守。しかし、改めてポイントスタンディングを見ると、今年がいかに接戦であるかが分かる。
わずか1ポイント差でKeePer TOM’S GR Supraの平川亮/ニック・キャシディ組が、そして2ポイント差でMOTUL AUTECH GT-R、KEIHIN NSX-GTの塚越広大/ベルトラン・バゲット組、au TOM’S GR Supraの関口雄飛/ニック・キャシディ組が並んでいる。また、残り2戦で14チームにチャンピオン獲得の権利が残されているシーズンなど、今までなかったのではなかろうか?
ちなみに、第4戦・もてぎで勝った時のKEIHIN NSX-GTの背負っていたハンデは46kgとあって、WAKO’S 4CR GR Supraも「勝てる」重量だと予想される。それこそ勝利の女神に微笑んでもらえるのは、チームもドライバーも、そしてマシンもタイヤも、最高のバランスで整っていることが大前提ではないか? そう考えると、今回の優勝はともかく、チャンピオンを獲得するのは、この5チームに絞られたような気がしてならない。
その上で、今回優勝候補と目されるのは、RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴/牧野任祐組ではないか。NSX-GTともてぎの相性は良く、何よりホンダのお膝元。そして、ここまで未勝利という状態に、ドライバーふたりが満足できようはずがない。
優勝を狙える位置に付けているだけに、ホームコースで今シーズン初優勝を狙いたい100号車 RAYBRIG NSX-GT。
そして未勝利といえば、ランニングトップのWAKO’S 4CR GR Supraだが、今回は確実にポイントを稼ぐ作戦に討って出るはずだ。そしてノーハンデになった富士での最終戦に総力注入となるのでは?
GT300はLEON PYRAMID AMGが鉄板ながら、果たして……
もてぎを得意とする65号車 LEON PYRAMID AMG
GT300でもてぎといえば、何と言ってもLEON PYRAMID AMGである。今年も第4戦で蒲生尚弥/菅波冬悟組が優勝を飾り、昨年の最終戦も最終ラップでガス欠に陥るまで、トップを走行。さかのぼれば、現在監督を務める黒澤治樹と蒲生がタッグを組んでいた、2017年から2年連続勝利と、圧倒的な強さを誇っている。
その強さの理由は、メルセデスAMGがブレーキング性能に優れていることと、タイヤチョイスが完璧であったことだ。今年の第4戦は予選13番手からの大逆転。それも無交換作戦を成功させるために、かなりハードなタイヤを選んでいたためだ。また、このチームは総じて公式練習で重ねる周回が多く、それは持ち込みのセットがピタリとはまり、大きな修正を要しないことを意味してもいる。
ただ、その時のウエイトハンデは55kg。今回、半減されるといっても77kgであって、22kg増がもたらす影響は少なくないと予想される。GT500とは対照的に、ランキングトップであって、2位との差は10ポイント。今回はランキング維持に徹するのではないだろうか。そして、第5戦で100kg積んでなお、ポールポジションと3位を奪えた、もうひとつ相性のいい富士での最終戦に勝負をかけるのでは?
ちなみに前回のレースでは、SCラン前にドライバー交代を行なっていたチームだけが上位につけ、以降に行なったチームはことごとく下位に沈んでいた。FIA-GTとのタンク容量の違いから、ミニマムの周回でピットに入れないJAF-GT勢がほぼ総崩れだったのは、そういった理由にもよる。
中でも最も悔しい思いをしたのが、SUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人/山内英輝組だったはず。100kgのウエイトを積んでなお、予選2番手を獲得し、決勝でもトップに立ちながら、ポイント獲得さえ許されなかったのだから。今年のBRZは絶えず重ねられる進化で、オールマイティな側面を持っており、リベンジを期待して良さそうだ。
文:秦 直之
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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