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モーター スポーツ コラム 2019年11月7日

SUPER GT第8戦レビュー:GT500もGT300も、ポイントリーダーが順当に王座を獲得!

SUPER GT by 秦 直之
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ついに迎えたSUPER GTの最終戦。ツインリンクもてぎを舞台に、通常より50km短い250kmでレースは競われ、GT500に関しては全車ノーハンデの戦いとなる。また、来シーズンからGT500はすべてニューマシンに改められるため、現行マシンでの見納めのレースにもなるわけだ。

何より、この最終戦で最も注目すべきはタイトルの行方。GT500には3チームに、GT300には4チームに権利が残されていた。もちろん、優勝争いも見逃せないところ。見どころ豊富なレースになるのは、もはや必至だった!

au TOM’S LC500がポールを獲得。タイトル争いを邪魔しない、と関口は語るも……

予選が行われた土曜日は、素晴らしい秋晴れに恵まれた。GT500のチャンピオン候補のうち、ポール・トゥ・ウィンが必須条件である、MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生は見事Q1をトップで突破。まだまだ可能性を残すのか、Q2に挑むロニー・クインタレッリの走りが注目された。そのクインタレッリは松田のタイムをコンマ2秒も上回って、終了間際にトップに立つ。だが、まだチェッカーを受けていないドライバーもいた。その動向次第。さて、どうだ?

au TOM’S LC500の関口雄飛と、WAKO’S 4CR LC500の山下健太が逆転に成功! その瞬間、MOTUL AUTECH LC500のふたりに、逆転チャンピオンの権利は喪失した。au TOM’S LC500の中嶋一貴と関口がポールポジションを獲得し、2番手はWAKO’S 4CR LC500の大嶋和也と山下、そしてMOTUL AUTECH GT-Rに続く4番手が、KeePer TOM’S LC500の平川亮とニック・キャシディということに。一騎討ちに転じたタイトル争いは、この時点でポイントリーダーのWAKO’S 4CR LC500に有利ということになった。

「僕らはチャンピオン争いに関係ないので、邪魔しないよう逃げていきたいと思います」と関口は語るも、候補がチームメイトとあっては100%そうもいくまい。KeePer TOM’S LC500の命運は少なからず、au TOM’S LC500にも託されたことになる。

1シーズンかけて進化させてきたMcLaren 720SがGT300のポールを獲得

GT300ではチャンピオン候補の1チームである、K-tunes RC F GT3にまさかの事態が起きた。Q1を担当したのは、ベテランの新田守男。セクター3までを好タイムで刻み、上位進出まであとはストレートを駆け抜けるだけ……だった最終コーナーで痛恨のスピンを喫してしまう。再度アタックをかけた新田ではあったが、なんと17番手留まり。阪口晴南にバトンを託すことができなかったのだ。

そして、ポールポジションを奪えなかった時点で、やはりチャンピオン獲得の権利を失う、グッドスマイル初音ミクAMGの片岡龍也はQ2で7番手。コンマ2秒差でリアライズ日産自動車大学校GT-Rの平峰一貴も、泣くに泣けぬ2番手でタイトル戦線から逸脱した。一方、ポイントリーダーのARTA NSX GT3は、Q1で高木真一が14番手でギリギリ突破を果たし、Q2で福住仁嶺が5番手に。唯一のライバルとなったK-tunes RC F GT3が17番手なのだから、十分すぎるポジションを獲得した。

一方、ポールポジションを奪ったのは、McLaren 720Sの荒聖治とアレックス・パロウ。荒は語る。「開幕戦では、全力でも走ってビリ、スーパーフォーミュラでポール争いするようなバカっ速のドライバー(パロウ)ですらビリだったんですから、ここまでの進化に自分たちも驚いています」と。最終戦で、ようやく苦労が報われたということか。

順当にトップを走り続けていたau TOM’S LC500

決勝レースはすっきり秋晴れとはいかなかったが、天候には久々に翻弄されることなく、終始ドライコンディションが保たれたまま、バトルが繰り広げられた。そのスタートを前に、ニッサン勢には不運な情報がふたつも飛び込んでくる。まず予選でエンジントラブルを抱え、出走できずクラス最後尾からスタートを強いられた、カルソニックIMPUL GT-Rの佐々木大樹とジェームス・ロシターが、エンジン交換のペナルティとしてレース中の15秒ストップを命じられた。さらに10番手からスタートを切るはずだった、CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの平手晃平とフレデリック・マコヴィッキィもエンジントラブルのため、リタイアを余儀なくされていたのだ。

14台での戦いとなったGT500で、1コーナーへのホールショットを決めたのは、もちろんau TOM’S LC500の中嶋だった。これに続いたのはMOTUL AUTECH GT-Rのクインタレッリで、WAKO’S 4CR LC500の大嶋は3コーナーでアウトに膨らみ、その隙を逃さなかったKeePer TOM’S LC500のキャシディ、そしてKEIHIN NSX-GTの塚越広大にも捕らえられて、いきなり5番手に後退してしまう。

トップの中嶋だが、思ったよりは逃げまくらず。まずは激しく争われたのは、クインタレッリとキャシディの2番手。ようやくキャシディが前に出たのは6周目の4コーナー。クインタレッリは続く5コーナーで塚越にもかわされてしまう。7周目の2コーナーでは、大嶋にも抜かれ、クインタレッリは5番手に。MOTUL AUTECH GT-Rは、どうもエンジンが本調子ではないようだ。

これによりトップを争うのは、TOM’Sの2台に。やがて接近戦になるが、KeePer TOM’S LC500がチャンピオンになるには、ポジションを入れ替えなければならないが、果たして? 一方、大嶋は硬いガードを見せる塚越を、なかなか抜けずにいた。ようやく前に出たのは、19周目の4コーナーだった。

20周目、早くもKeePer TOM’S LC500がピットイン。平川に交代し、39秒でコースに送り出される。次の周にはau TOM’S LC500、そしてWAKO’S 4CR LC500もピットに滑り込む。もちろん、先にコースに戻ったのはau TOM’S LC500の関口で、平川の前でコースに戻るも、3コーナーで痛恨のブレーキロックが! これで一気に差が詰まって、オーバーテイクを試みた平川ながら、ことごとくGT300車両に道を阻まれてしまう。そこから少し間隔を置いて、WAKO’S 4CR LC500の山下が、この2台に続くことに。24周目にKEIHIN NSX-GTが、GT500で最後のピットストップ。ベルトラン・バケットは山下の先行を許していた。

王座獲得に向けて見せた、山下の執念のオーバーテイク!

終盤に差し掛かると、LC500が3台でトップを争う位置関係になるが、なかなか入れ替わりはなく。ところが、32周目の3コーナーで平川がトップに浮上! 続いて山下も関口を抜こうとするが、鉄壁のブロックで逆転を許してくれない。このポジションなら、KeePer TOM’S LC500のチャンピオンが決まる。是が非でも、関口を山下はかわさなくてはならぬ。背後にはARTA NSX-GTの伊沢拓也も近づいてきたからなおのこと。対して関口はチームプレイに徹したようだ。その間に、平川は逃げ続けていく。

38周目のヘアピンで、関口がGT300車両に行く手を阻まれたのを、山下は見逃さなかった。ダウンヒルストレートで横に並び、続く90度コーナーで山下は前に! だが、最終コーナーで止まりきれなかった2台は、軽く接触しながらショートカットして抜けていくことに。果たしてダメージはないのか、それよりペナルティが出されるか否か。だが、心配は無用だった。2台ともペースは落ちず、ペナルティも下されず。このまま何も起こらなければ、再びWAKO’S 4CR LC500に勝利の女神が微笑むこととなる。

最後まで逃げ続けて今季初勝利をKeePer TOM’S LC500は挙げたが、王座返り咲きは果たせず。2位でゴールのWAKO’S 4CR LC500をドライブする、大嶋と山下が初のチャンピオンを獲得。ただし、チームチャンピオンにはKeePer TOM’S LC500が輝くこととなった。「勝てたけど、(ドライバー)チャンピオンは獲れなかった。言葉にできないですね……」とは、平川の偽らざる本音だったはずだ。

これに対して、「うるうるしそうになりましたが、ギリギリのところで踏み留まりました(笑)」と山下。来シーズンはWECフル参戦と言われているだけに、いい置き土産ができた格好だ。そして、大嶋は「とにかくホッとしました。11年目にして初めてですし、ようやくプレッシャーから解放されたので、来年はもう少し気楽にレースしたいと思っています」と、これも本音なのだろう。

GT300の序盤は、リアライズ日産自動車大学校GT-Rがリード

GT300ではMcLaren 720Sを駆るパロウのリードから、レースは開始された。リアライズ日産自動車大学校GT-Rの平峰がこれに続き、3番手スタートだったLEON PYRAMID AMGの菅波冬悟は5番手に後退。ARTA NSX GT3の高木が4番手に浮上し、早くも王座獲得の安全圏内に入っていく。

平峰がトップに立ったのは、6周目の90度コーナー。軽い接触があり、パロウは押し出されて、続くビクトリーコーナーではGAINER TANAX GT-Rの安田裕信にもかわされてしまう。8周目の5コーナーで高木が3番手に浮上し、タイヤ選択を誤ったというパロウは、その後も順位を落とすこととなる。

そのまま平峰は逃げ続けていく。一方、それよりハイペースでの追い上げを見せていたのが、K-tunes RC F GT3の新田だった。13周目には8番手にまで浮上し、ミニマムの16周目には早くも阪口に交代。タイヤは4本とも交換する。次の周には4番手を走るARTA NSX GT3もピットイン。福住への交代と併せて、こちらもタイヤは4本とも交換する。一方、トップを争うリアライズ日産自動車大学校GT-Rと、GAINER TANAX GT-Rは21周目に同時ピットイン。この2台の位置関係は保たれたままだったが、フェネストラズと平川の前には、なんとLEON PYRAMID AMGの蒲生尚弥が! 18周目のピットでタイヤは無交換、ロスを最小限としていたのが功を奏したのだ。

王座はARTA NSX GT3が獲得。トップ争いには最終ラップにドラマが

一方、ARTA NSX GT3の福住は4番手。もはや、このポジションを守ればいい。ところが、31周目に2番手を走行していたリアライズ日産自動車大学校GT-Rが突然ヘアピンの立ち上がりでストップ! すぐに再始動はなったが、5番手に交代。福住は表彰台に上がれる位置につけることとなる。その間に、蒲生のトップはより安泰なものとなった。また、一向にスピードの衰えがなかったのがK-tunes RC F GT3。44周目の1コーナーでは阪口が福住をかわすまでとなるが、これは福住があえて無理をしなかったからのよう。だが、こうなると予選17番手だったことが悔やまれる……。

大差をつけて今季初優勝、もてぎ3年連続優勝を飾るかと思われた、LEON PYRAMID AMGながら最終ラップに突然スローダウン! ガス欠症状に見舞われ、かろうじてチェッカーを受けることに。その脇をGAINER TANAX GT-Rが駆け抜けていき、無念の2位に甘んじた。GAINER TANAX GT-Rの平中と安田は今季2勝目を挙げて、ランキング3位にも浮上した。「タナボタではありましたが、常にあのポジションをキープしていたから勝てたわけで。完璧なレースができたと、僕は思っています」と平中。

そして4位でゴールのARTA NSX GT3は、もちろんチャンピオンを獲得。福住にとってはルーキーイヤーで、そして高木は実に17年ぶりの王座返り咲きとなった。「セットアップの面で後半、仁嶺につらい思いをさせてしまったんですが、その中でも年間通して全戦でポイントを獲れたのが大きかったと思います。これもチームやサポートしてくれた皆様のおかげです。本当にありがとうございます!」と高木。そして、「自分がレースを落とさない、ミスをしないようにと最後まで集中して走りました。チャンピオンを獲れて本当に良かったです。亜久里さんを始め、チームのみんな、ご支援してくれた皆さんに本当に感謝したいです」と福住も感謝の念を欠かさなかった。

文:秦 直之

秦 直之

秦 直之

大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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