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モーター スポーツ コラム 2019年7月3日

SUPER GT第4戦レビュー

SUPER GT by 秦 直之
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久々に飾ったWAKO’S 4CR LC500の優勝は、風格さえも感じさせ!

SUPER GT第4戦は今季唯一の海外戦として、タイのチャーンインターナショナルサーキットで開催された。今回で6回目の開催となり、例年強烈な暑さの中での走行となるのだが、こと予選が行われた土曜日までは勝手が違った。思ったよりも暑くなかったのだ。しかし、日曜日になると、ようやく暑さを取り戻してホットなバトルが繰り広げられたが、それでもポールポジションからスタートした、WAKO’S 4CR LC500の大嶋和也/山下健太組の速さに変化はなかった。チームルマンとして、実に6年ぶりの勝利を挙げていた。


初のポールポジションをWAKO’S 4CR LC500の山下健太が獲得する

時点にテストもなく、すべてのチームが1年ぶりの走行となる、チャーン・インターナショナルサーキットだが、着いてすぐ感じたのは、どうも勝手が違うということ。それほど暑くなかったのである。確かに日差しは相変わらず強烈だったのだが、上空は絶えず雲に包まれ、時折さわやかな風が吹いていたからなのだろう。これは想定の温度域を外してしまうのではないか、当初はそうも思ったほどだった。
しかし、タイヤメーカー的には動じていた様子は微塵にも感じられず、そこは過去5回の経験のなせる技か。そんな中、予選でポールポジションを獲得したのは、WAKO’S 4CR LC500だった。Q1を担当した大嶋和也こそ「セット変更が裏目に出て、思ったように走らせられなかった」と、8番手でギリギリの突破になっていたものの、Q2に向けて改めて行ったセット変更が大成功。

「クルマの状態はほぼ完璧で、走りは無難にまとめたつもりだったので、帰ってきてから順位を聞いたら『ポールだよ』って言われたので、びっくりしました。Q2までにほぼ完全な状態に整えてくれたので、チームで獲ったポールだと思います。明日(決勝)も普通に大丈夫だと思います」と山下は語っていた。その山下はレコードタイムをも更新。
WedsSport ADVAN LC500の国本雄資/坪井翔組が2番手で、3番手はCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの平手晃平/フレデリック・マコヴィッキィ組。トップ3位はブリヂストン、ヨコハマ、ミシュランと異なるタイヤのユーザーが続き、どこか1社だけが強いというわけではなさそうだ。
4番手には前回のウィナー、au TOM’S LC500の中嶋一貴/関口雄飛組が、そしてKeePer TOM’S LC500の平川亮/ニック・キャシディ組も5番手で、ウエイトを積んでなお、勢いを保っているあたり、まさにダークホース的な存在になっていた。ホンダ勢の最上位は、RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴/ジェンソン・バトン組で7番手だった。

一方、GT300ではHOPPY 86 MCの松井孝允/佐藤公哉組が、2戦連続でポールポジションを獲得。松井はQ2で自らのレコードタイムを3年ぶりに塗り替えた。「今回は構造を改めたタイヤを持ち込んで、本当は決勝に強いはずだったんですが、予選でもしっかり機能してくれました」と、意外な結果に少々驚きのよう。
だが、2番手はリアライズ日産自動車大学校GT-Rの平峰一貴/サッシャ・フェネストラズ組、3番手はD’station Vantage GT3の藤井誠暢/J.P.デ・オリベイラ組、4番手はGAINER TANAX GT-Rの平中克幸/安田裕信組、そして5番手はARTA NSX GT3の高木真一/福住仁嶺組と、ターボ車がずらり並ぶ展開に。松井の読みでは「厳しい戦いを強いられそう」だったが、果たして実際のところは……。

au TOM’S LC500に交代直前、抜かれはしたものの、WAKO’S 4CR LC500はピットで再逆転

日曜日のチャーンサーキットは、快晴とまではいかなかったものの、雲の切れ間から青空も見えるようになって、ようやく「らしさ」を取り戻していた。スタート直前の気温は35度、路面温度は50度にも迫っていたほど。
まずはWAKO’S 4CR LC500の大嶋、WedsSport ADVAN LC500の国本の順でグリーンシグナルの点灯後は1コーナーをクリアしていくが、続くストレートでCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rのマコヴィッキィを、au TOM’S LC500の中嶋がかわしていく。2周目には、リアライズコーポレーションADVAN GT-Rのヤン・マーデンボローが4番手に浮上、この4台でまずはトップグループが形成される。
国本が序盤は何度も大嶋を揺さぶりにかかるも、そのたびガードを固められて、逆転を許されず。逆に国本は、6周目のGT300集団との最初の遭遇で位置取りを誤り、中嶋にかわされて3番手に後退。勢いに乗る中嶋は、8周目のターン3でトップにも立つかと思われたものの、大嶋は冷静に対処した。やがてトップ争いは大嶋と中嶋の一騎討ちに。
その一方で、3番手争いも激しくなり、国本の背後にはマーデンボロー、さらにKeePer TOM’S LC500の平川も激しく迫ってくる。そればかりか、いったんは順位を落としていたCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rのマコヴィッキィも近づいてきたこともあり、28周目にはWedsSport ADVAN LC500、リアライズコーポレーションADVAN GT-Rは、ともにピットイン。タイヤは4本交換で、それぞれ坪井と高星明誠をコースに戻すこととなった。
 3番手に浮上したKeePer TOM’S LC500は29周目にキャシディと交代。そして、その周には中嶋が大嶋をかわしてトップに浮上! 大嶋がターン4で姿勢を乱したのを逃さずとらえた格好だ。この2台も30周目、同時にピットイン。さらにCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rも平手に交代する。ここで先にピットを離れたのはWAKO’S 4CR LC500! 素早いピット作業が山下を後押しした。全車がピットに入ると、その山下が再びトップに躍り出る。

脇阪寿一監督は就任4年目の初優勝に!

だが、関口も遅れをとることなく山下に食らいついていき、レース序盤の中嶋のようにしきりにプレッシャーをかける。そんな中、37周目にホンダ勢同士の接触があって、セーフティカー(SC)がコースに入ることに。これでバトルはいったん中断。WAKO’S 4CR LC500、au TOM’S LC500、KeePer TOM’S LC500という順位となっていた。43周目からバトル再開。山下はなんとか逃げた一方で、ターン3ではキャシディに迫られた関口が接触の後、オーバーシュート! マシンは縁石で一瞬宙に浮いて、その後順位を徐々に落とすことに……。
その後は山下とキャシディによるトップ争いが激しくなり、45周目に2台で併走するシーンが何度も見られたものの、しっかりと踏ん張ったのは山下。その間に3番手には、WedsSport ADVAN LC500の坪井が浮上していた。やがてリアライズコーポレーションADVAN GT-Rの高星も続くように。
50周目を過ぎたあたりからWAKO’S 4CR LC500の山下は、キャシディとの差を広げるようになり、安全圏内に入ることとなる。最後はペースを抑えてなお、逃げ切りを果たしたWAKO’S 4CR LC500と大嶋が2013年の第8戦・もてぎ以来の勝利を飾り、山下はGT500での初優勝に。脇阪寿一監督にとっても就任4年目の初優勝に。さらに、わずか1ポイント差ながら、KeePer TOM’S LC500の平川/キャシディ組を抑えてランキングのトップにも立つこととなった。
3位はWedsSport ADVAN LC500が獲得し、これが今季初の表彰台に。4位はリアライズコーポレーションADVAN GT-Rで、高星はファステストラップも記録した。ホンダ勢はModulo KENWOOD NSX-GTのナレイン・カーティケヤン/牧野任祐組が最上位。10位でかろうじて1ポイント獲得することとなった。

「ずっと勝てず、プレッシャーもすごかったので、やっと……という気持ちです。山下がいいレースをしてくれたので、優勝することできたので、みんなに感謝しています」(大嶋)
「チームに心から感謝しています。スタートからペース的には厳しそうに見えましたが、それでもずっとトップを守ってくれて、ピットに入ってからもすごく早い作業で、前で入ったトムスより先に出させてもらったからには、絶対トップを守ろうと。ちょっと強引な時もありましたけど、絶対引かないつもりでした。今はホッとしたという感じですかね」(山下)

オープニングラップからトップを走り続けたリアライズ日産自動車大学校GT-Rだったが……

GT300でポールスタートは、HOPPY 86 MCの佐藤だったが奥のヘアピン、ターン3までトップを守り抜けなかった。代わってトップに立ったのは、リアライズ日産自動車大学校GT-Rのフェネストラズ。予想どおりターボパワー炸裂となった一方で、佐藤も意地を見せて、先行を許したのはその1台のみ。まずは2番手からレースを開始した。3番手はD’station Vantage GT3のオリベイラ。
その後、フェネストラズがひとり逃げていく中、その後方では6周目のターン3でGAINER TANAX GT-Rの安田を、GAINER TANAX triple a GT-Rの星野一樹が抜いて4番手に浮上。星野とチャーンサーキットの相性は良く、過去2度の優勝経験を持つも、硬めのタイヤ選択が裏目に出て予選は7番手に甘んじていたが、決勝ではいきなり本領発揮となった。6番手はLEON PYRAMID AMGの黒澤治樹だ。
2番手をHOPPY 86 MCの佐藤が走っていたが、徐々に迫ってきたのがD’station Vantage GT3のオリベイラ。ここまでの3戦、苦戦を強いられていたものの、今回から性能調整が見直されてブースト圧が若干高められ、なおかつアストンマーチンレーシング(AMR)のタイヤ分析が功を奏して、本来持つ戦闘力を発揮できるようになったようだ。一方、佐藤はあらかじめタイヤ無交換作戦を予定していたこともあり、無理は禁物と判断。17周目のターン4でオリベイラに抜かれた後、星野と安田の先行も許して5番手に。
一時はフェネストラズとの差が11秒にも達していたオリベイラだったが、視界が開けてからは徐々に近づいていくように。一方、19周目にはLEON PYRAMID AMGが早々とピットイン。タイヤをフロント2本のみ交換して、黒澤をコースに送り出す。ほぼ最後尾まで落ちてはいたが、自分たちのペースで走れる強みが後に大きく効いてくる。
上位陣で最も早くピットに入ってきたのは、GAINER TANAX GT-Rで23周目。平中に交代すれば、25周目にはGAINER TANAX triple a GT-Rも石川京侍に。27周目、HOPPY 86 MCは、この中で唯一タイヤ無交換。松井にバトンを託すこととなる。そして、29周目にはトップのリアライズ日産自動車大学校GT-Rも平峰に交代。その位置関係は?
平峰、平中、そして蒲生を挟んで石川、そして松井という順に。あとはD’station Vantage GT3がどう出るかだ。30周目に石川は、蒲生を抜いてきた。その間に2番手に上がっていたのは、グッドスマイル初音ミクAMGの片岡龍也。ギリギリまで谷口信輝との交代を遅らせる作戦が、ここまではうまくいっていた形だ。

レース後半に相次いだドラマ。最後の最後に栄冠をつかんだのは……

34周目、GT500車両のアクシデントを見て、SCが入るだろうと判断したD’station Vantage GT3がピットイン。藤井との交代と併せ、タイヤは右側2本だけの交換とした。逆に判断をしたのがグッドスマイル初音ミクAMGだったが、実際にSCは入ってしまったからたまらない。SCラン中のピットインは禁じられているから、必然的にステイを余儀なくされてしまう……。
リスタート後にグッドスマイル初音ミクAMGがピットに入り、大きく順位を落とした後に、トップに返り咲いていたのは、もちろんリアライズ日産自動車大学校GT-R。D’station Vantage GT3も真後ろにつけていたものの、バックマーカーに行く手を阻まれたばかりか接触も。その際に無交換だったタイヤにダメージを負い、やがて順位を落とす羽目になる。代わって2番手に浮上したのは、GAINER TANAX triple a GT-R。しばらくは1秒強の間隔で、着かず離れずの展開を続けていたが、ゴールが近づくにつれ、石川のペースが平峰を上回るようになる。一方、その後方ではGAINER TANAX GT-Rの平中に、LEON PYRAID AMGの蒲生も急接近。この順位が保たれたなら、チャーンサーキットと相性が良いとされるGT-Rが表彰台を独占することとなる。それぞれ逆転の決め手を欠いているようには見えてはいたが、追われる方の厳しさの方が圧倒的だったようだ。
最終ラップにドラマは起こる。ターン5でGT500の車両、しかも同じKONDO RACINGのリアライズコーポレーションADVAN GT-Rに進路を譲った平峰のインを、石川がスパッと刺していき、待望のトップに浮上! さらに同じ場所でGAINER TANAX GT-Rの平峰もスピンを喫し、その脇をすり抜けていったLEON PYRAMID AMGが前に出ることに成功する。それまでかけ続けていたプレッシャーが効いたようだ。
GAINER TANAX triple a GT-Rが今季初優勝。星野がタイで3勝目をマークして、石川はSUPER GT初優勝を飾ることに。リアライズ日産自動車大学校GT-Rは悔しい2位ながら、初めての表彰台に立ち、LEON PYRAMID AMGも今季ベストとなる3位を獲得。HOPPY 86 MCは4位でのフィニッシュに成功した。5位はマネパ ランボルギーニGT3の小暮卓史/元嶋佑弥組で、予選22番手から激しい追い上げを実らせていた。

「予選は、決勝のペースを重視したこともあって7番手になっちゃったんですが、レースのペースは自分たちがいちばん速いと信じて、僕はスタートからガンガン行って。3番手まで上がることができたし、チームもいいピット作業で少し追いついて、さらにSCで差も縮まるという、運にも恵まれました。京侍の走りも安心して見ていられたんですが、ファイナルラップで逆転までしてくれて、まさにニューヒーローの誕生です。本当に嬉しい!」(星野) 「レースペースは良かったし、硬めのタイヤを選んでいたこともあって、粘っていればチャンスがあるかなと。最後の最後までプッシュしていたら、本当にチャンスがやってきました。軽い接触はあったんですけど、平峰選手はクリーンなバトルをしてくれて、本当に感謝しています」(石川)

文:秦 直之

秦 直之

秦 直之

大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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