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MOTUL AUTECH GT-Rが2戦連続でポールポジション獲得
3日に行われた予選は好天に恵まれ、さわやかなコンディションの下での走行となった。GT500のQ1トップは、CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの平手晃平。これにKeePer TOM’S LC500の平川遼と、ZENT CERUMO LC500の石浦宏明が続く。しかし、その順がQ2にそのまま引き継がれるわけではないのが、今のGT500のすごさ。ドライバーの力量もさることながら、Q1とQ2の短いインターバルで、より良いマシンバランスを求めて、セッティングを変更する。これがピタリとハマればタイムアップし、逆もまたありということだ。
Q2でレコードタイムをコンマ5秒も縮めて、2戦連続のポールポジションを獲得したのは、MOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリ!パートナーの松田次生との比較では、実に1秒以上も詰めてきた。「朝の公式練習では良かったバランスが、いざQ1では路面が良くなったり、温度が上がったりしたことでフィーリングが悪くなったので、エンジニアと話し合ってロニー選手が走る前にセットを変えてみたんですが、それがしっかり機能して、すごいタイムが出ました。『さすがだな』と思いましたよ」と松田。 これに対して、クインタレッリは「次生が27秒台を出してきたけど、それまで僕は29秒台しか出せていなくて。1コーナーなんかどこまで奥まで行けるか分からなかったけど、次生のコメントと走りを信じて。行けた時に『良し!』って(笑)」と。チームワークの賜物だ。
その一方で、CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rは、セット変更が裏目に出てしまったのは間違いなかろう。フレデリック・マコヴィッキィは8番手に沈み、ZENT CERUMO LC500も同様で、立川祐路をもってしても7番手に。こんな難しさをGT500は秘めていることを理解していただけることだろう。なお、2番手はニック・キャシディがアタックした、KeePer TOM’S LC500が、そして3番手は佐々木大樹がアタックした、カルソニックIMPUL GT-Rが獲得した。 GT300では、平峰一貴/サッシャ・フェネストラズ組のリアライズ日産自動車大学校GT-Rがポールポジションを獲得。KONDO RACINGがGT300にも挑むこととなり、わずか2戦で叩き出した好結果に「ふたりとも速いんで、言うことないですね。このまま決勝も頑張って欲しいね」と近藤真彦監督も大喜び。そして、「公式練習からクルマの仕上がりは良く、前回から見直したセットがピタリとはまったようです。サッシャが僕をQ2に送り込んでくれたから、得られた結果です」と平峰は語った。
2番手は松井孝允/佐藤公哉組のHOPPY 86 MCが、そして3番手は坂口夏月/平木湧也/玉中哲二組のADVICSマッハ車検MC86マッハ号が獲得し、今や富士でも速いマザーシャシーをアピール。4番手が平中克幸/安田裕信組のGAINER TANAX GT-Rだった。
スティント序盤に、圧倒的な速さを見せたMOTUL AUTECH GT-R
予選日までは好天に恵まれたが、いや正確に言えば決勝日も午前中まで良かった天気が、お昼頃から一気に崩れ出し、ウォームアップが行われる頃には灰色の雲に覆われるようになってしまう。それどころか遠くに雷鳴も!なんとか天気が保たれていて欲しい、という大観衆の願いも虚しく、マシンがグリッドに並べられてしばらくすると、またしても雨が降り始める。そのため、GT500は全車ウェットタイヤを装着。そしてレースはまたしても、セーフティカー(SC)スタートで開始されることとなった。
2周のSC先導の後、レースはスタート。MOTUL AUTECH GT-Rのクインタレッリがホールショットを決め、これに続いたのはKeePer TOM’S LC500のキャシディ。そして、早くも予選4番手だったMOTUL MUGEN NSX-GTの武藤英紀が、カルソニックIMPUL GT-Rの佐々木が前に出る。レースは早くも動きを見せ、その周のうちにダンロップコーナーで、キャシディがクインタレッリを抜いてトップに浮上。そして武藤は痛恨のオーバーラン。この混乱に乗じ、3番手に浮上したのが立川だった。
序盤のトップ争いは、まさに三つ巴。7周目にクインタレッリがトップを奪い返し、9周目には立川がキャシディを抜いて2番手に。予選の無念を叩きつけるかのように、好調な立川は13周目のストレートで、ついにトップにまで躍り出た。 しかし、雨足は強まる一方だったことから、それから間もなくSCが再び導入され、15周目を終えたところで赤旗が出されてレースは中断。なんと2戦連続だ……。しかし、この判断は正解だった。やがて雨はやんで約30分後にレースは再開、19周目にSCが戻されることに。リスタートを完璧に決めたのがキャシディで、クインタレッリを抜いて2番手に浮上。キャシディは24周目にはトップに立つも、そのまま逃げることは許されず。30周目にはクインタレッリの逆転を許すこととなる。 路面は次第に乾いていき、最初のピットストップではドライバー交代と併せ、ウェットタイヤからドライタイヤに変更。それでもMOTUL AUTECH GT-Rの有意性は変わらず、松田がしばらくの間、トップを守り続けた。
後半の粘りで優ったZENT CERUMO LC500が2年ぶりの勝利!
再びレースが動いたのは59周目。ZENT CERUMO LC500の石浦が、MOTUL AUTECH GT-Rの松田をコカコーラコーナーでかわしてトップに躍り出る。78周目に、そのふたりは同時にピットイン。先にコースに戻ったのは、MOTUL AUTECH GT-Rのクインタレッリだった。ニスモのピットワークの速さには定評がある。それをまた実証して見せた格好だ。 しかし、残り周回が少なくなると、明らかにクインタレッリのペースが鈍り出す。それはタイヤの特性なのか、3番手を走る同じミシュランタイヤを装着する、CRAFTSPORT MOTUL GT-Rの平手にも共通し、一足早く79周目に大きく順位を落としてしまう。これで3番手にはDENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ・コバライネンが浮上する。 なんとしても逃げ切りたいクインタレッリではあったが、それをZENT CERUMO LC500の立川が許してくれようはずもない。99周目の1コーナーでインを刺し、立川はトップに浮上。もはや緊張の糸が切れた……、そんなはずは歴戦の雄、クインタレッリにあろうはずはないのだが、そう見えてしまうほどに、もう余力は残されていないのは明らかだった。
一方、その後方ではまだまだバトルが続いていた。3番手争いを繰り広げていたのはコバライネンと、RAYBRIG NSX-GTの山本だ。予選ではQ1突破すら許されず、12番手からのスタートを強いられていたが、じわりじわりと順位を上げていた。そして、残り5周となった105周目に1コーナーで山本は、コバライネンをかわして3番手に浮上した。 長い長いレースはスタートから3時間20分後に、ようやくチェッカーが振られて戦いを完了。ZENT CERUMO LC500は2年ぶりの優勝を飾り、立川は通算19勝目をマークした。2位は松田/クインタレッリ組のMOTUL AUTECH GT-Rが獲得し、ランキングではトップに浮上。3位には山本とジェンソン・バトンのドライブするRAYBRIG NSX-GTが入り、ディフェンディングチャンピオンは、今季初めてのポイントを手にすることとなった。 「見たか、と(笑)。今年から新体制になったけど、勝てたぞっていうのが正直な気持ちです。監督的なこともやらねばならず、ドライバーだけじゃない立場になって、勝たなくては責任も問われるので。石浦とチーム作りもふたりでやってきて、チームのみんなが僕らの思いに応えてくれたからには、絶対に勝たなきゃいけなかった。予選はタイヤ選択に失敗して下に沈んでしまいましたが、(MOTUL AUTECH GT-Rの履く)ミシュランがウォームアップは良く、うち(ブリヂストンタイヤ)は後半が良かった。それは大きかったんじゃないかと。最後まで気の抜けないレースでした」と立川。 一方、2位に甘んじたMOTUL AUTECH GT-Rは「最後のスティントでトップに立った瞬間は、ものすごくフィーリングが良かったのに、10周ぐらいしてから、いきなりリヤタイヤのグリップがなくなってしまって……。残念です」とクインタレッリは、そう敗れた理由を分析していた。
路面がドライに転じてからの速さが効いたGAINER TANAX GT-Rが逆転勝利
GT300はリアライズ日産自動車大学校GT-Rのリードからレースが開始されたが、平峰がトップを守れたのは、わずか5周でしかなかった。前に出たのはGAINER TANAX GT-Rの安田。気合いに満ちた走りで、そのまま後続を引き離していった。赤旗が出され、そしてレースが再開した後も安田のペースに衰えはなし。 だが、そう見えたのは2番手の平峰と相対しての状況。予選13番手から明らかに他を上回るペースで、LEON PYRAMID AMGの蒲生尚弥が追い上げてきて、27周目には2番手に浮上する。そのペースはなおも保たれ、30周目の100Rでは安田さえも抜き去ってトップに立ったのだ。
しかし、路面は徐々に乾いていき、「ここだ!」というタイミングを安田は明確にキャッチした。35周目に平中へと交代し、早めのドライタイヤへの交換がどんぴしゃり。これ以上早くても、これ以上遅くても、違っていたなら展開はまた変わっていたことだろう。 逆にLEON PYRAMID AMGはセミウェットの路面と、スタートで選んだウェットタイヤの相性を過信しすぎた感も。GAINER TANAX GT-Rに3周遅れで黒澤治樹に交代するも、トップは奪われてしまったばかりか、リアライズ日産自動車大学校GT-Rのフェネストラズにも先行されていた。さらに予想以上に低くなった路面温度にタイヤは音を上げ、63周目に黒澤は2台に相次いでかわされてしまう。
その間にもGAINER TANAX GT-Rのトップは安泰。2度目のピットを行なってなお、安田は後続を寄せつけず。そして2番手にはARTA NSX GT3の高木真一が浮上する。しかしながら、すんなりとレースは終わってくれなかった。まずは2番手争いが白熱。高木にリアライズ日産自動車大学校GT-Rの平峰が迫り、コンマ5秒差にまで接近するも、逆転ならず。この時のタイヤの酷使を、4番手のマネパ ランボルギーニGT3を駆る元嶋佑弥が見逃さなかった。平峰に元嶋が徐々に迫って、101周目の1コーナーで逆転。 さらに高木も安田に近づいていた。ラスト2周で完全にテール・トゥ・ノーズ状態に!最終ラップの最終コーナーでインを刺そうとした高木だったが、それは安田の予想の範疇。からくも逃げ切りなった、平中/安田組のGAINER TANAX GT-Rが優勝を飾ることとなった。2戦連続2位の高木/福住仁嶺組のARTA NSX GT3は、これでランキングトップにも浮上。そして3位はマネパ ランボルギーニGT3、元嶋ととともに小暮卓史がGT300移行2戦目にして、早くも表彰台に立つこととなった。
「公式練習からクルマの調子は良かったんですが、Q1では路面とコンディションが合わず、僕が突破ならずというところを、ペナルティで落ちてくれたクルマがあって、安田がQ2で4番手になってくれて……。その流れで勝てるという自信がありました。ファーストスティントの豪雨の中安田が素晴らしい走りを見せてくれて、一時トップは奪われましたが、路面がドライになりつつある中、どのクルマより早くタイヤを交換できたことで、マージンを築くこともできました。最後もしっかり踏ん張ってくれたし、今日の勝利は今まででいちばん嬉しい勝利です」と平中は笑顔で語っていた。
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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