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モーター スポーツ コラム 2019年3月7日

フォーミュラE第5戦・香港~4人の勝者が生まれる大混戦の戦いを抜け出すのは?

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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電気自動車のフォーミュラカーレース「FIAフォーミュラE選手権」のシーズン5(2018年~19年)は1ヶ月のインターバルを開けてアジアへ。第5戦はシーズン3、4では開幕戦の舞台となった香港で開催。「J SPORTS」では3月10日(土)に行われる予選、決勝の模様を生放送でお送りします。

さて、今季の「フォーミュラE」は史上稀に見る大混戦のシーズンになっています。新ルール、ニューマシンの導入、メーカーワークスの力の入れようから、特定のワークス独走も考えられました。しかし、そんな予想に反して、今季はこれまで4戦終えて、4人の異なる勝者が生まれるという激しい戦いが続いています。しかも、勝者だけではなく、ポールポジション獲得ドライバーも、優勝チームも4戦ともに異なる顔ぶれ。まだどのチームも、どのドライバーも主導権を握れていません。

そんな中で開催される香港ラウンド「Hong Kong e-prix」はタイトなコーナーでの多重クラッシュが発生しやすいコース。香港の港近くに作られた1周約1.8kmの特設コースでは毎回大波乱が起きています。まさに接触も辞さない体当たり合戦的な面白さがこのコースにはありますね。そういう意味では5人目のウイナーが誕生しても何ら不思議ではない条件が整っていると言えるでしょう。

開幕戦・サウジアラビアを制したのはアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(BMW)、第2戦・モロッコではジェローム・ダンブロージオ(マヒンドラ)が勝利。第3戦チリではサム・バード(ヴァージン)。第4戦メキシコになって、ようやくチャンピオン経験者のルーカス・ディグラッシ(アウディ)が優勝を飾りました。

ただ、ディグラッシの勝利も首位のパスカル・ウェーレイン(マヒンドラ)が勝利目前となった最終ラップ、最終コーナーでまさかのエネルギー切れ。ウェーレインはガス欠ならぬ電欠を起こして、ディグラッシがドラマチックなレースを制しました。本当に見ている誰もが興奮する逆転劇。ギリギリのエネルギーマネージメントを強いられたドライバーたちの、最後まで諦めない戦いが印象的でしたね。

4人のウイナーが誕生する混戦の中、ランキング首位はジェローム・ダンブロージオ(マヒンドラ)。ダンブロージオは全戦でポイントを獲得する安定したレース運びで53点を獲得し、シリーズをリードしています。そこから7点差の46点でランキング2位につけるのがアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(BMW)。2戦連続のノーポイントでシーズンを考えると厳しい局面に居ましたが、メキシコでは2位フィニッシュのウェーレインが5秒のペナルティを課せられたことで、ダ・コスタは2位完走。今季2度目の表彰台を獲得することになりました。

そこからは1点差の45点でサム・バード(ヴァージン)がランキング3位。第4戦のウイナー、ルーカス・ディグラッシ(アウディ)が34点でランキング4位につけています。ディグラッシは首位のダンブロージオから19点差ということで、まだまだ先が長いシーズンを考えればチャンピオン争いに加わることも可能でしょう。

そんな中で、やはり前戦で光り輝いたのは今季の第2戦からフェリックス・ローゼンクビストに代わって「マヒンドラレーシング」から参戦するパスカル・ウェーレインでしょう。ポールポジション獲得、ファステストラップ獲得、そしてルーキーながらレースをリードするという快挙。素早い順応ぶりはさすが、元F1ドライバーです。

パスカル・ウェーレイン(マヒンドラ)はドイツ出身の24歳。母親はインド洋に浮かぶモーリシャス共和国の出身で、母親譲りのエキゾチックな顔立ちが印象的です。

ウェーレインは「メルセデスの秘蔵っ子」としてその才能を早くから認めらていたドライバーで、F1のルーキーテストでメルセデスをドライブした経験も豊富です。どんなマシンでも器用に乗りこなすクレバーさを持った逸材で、何といっても2015年にはハコ車のDTM(ドイツツーリングカー選手権)で史上最年少のチャンピオンに輝いていますからね。そこからF1にデビューするもマノー、ザウバーと2シーズン戦いましたが、メルセデスからの参戦は叶わず。冬に参戦した「レース・オブ・チャンピオンズ」での事故もF1でのキャリア形成に影響することになってしまいました。しかし、厳しい環境の中でもポイントを獲得できる速さを持ったドライバーですし、腕は確かなドライバーであることは間違いありません。

昨年はF1を離れ、メルセデスからDTMを戦っていたウェーレインですが、メルセデスはDTMから昨年限りで撤退。その影響もあり、今季から「フォーミュラE」へと転向してきました。本来ならメルセデスが本格的なワークス参戦を前に準備する「HWA」から参戦するのがセオリーですが、ローゼンクビストのインディカー転向に伴い、トップチーム「マヒンドラ」のシートを獲得することになりました。新規参戦のHWAよりもトップ争いができるノウハウを持ち合わせたマヒンドラの方が、より多くのことを学べるはずですから、彼はまさに最高の環境を手に入れていると言えます。

ウェーレインは「フォーミュラE」1年生ながらも第3戦・チリでは2位表彰台を獲得。トップチームの新戦力という名に恥じない活躍をいきなり見せつけました。そして前戦・メキシコでの好パフォーマンスですから、今後に大きな期待が高まります。ウェーレインは開幕戦欠場ながらもトップから23点差のランキング5位。今回の香港で混乱に巻き込まれずに上位フィニッシュを果たせば、一気にシーズンの主役となる可能性も出てきます。そういう意味ではシーズン中盤は、かつて先輩ローゼンクビストが見せた新スター誕生的なインパクトを放つウェーレインに注目。まずは香港で快進撃をさらに見せてくれるでしょうか?

一方、国内メーカーとして参戦する「日産」はセバスチャン・ブエミ、オリバー・ロウランド共に2戦連続のノーポイントと、厳しいレースが続いています。日本から飛行機ですぐ飛んでいけるし、時差も1時間の香港ラウンドは日本のファンもテレビの前で応援しやすいので、そろそろ表彰台の頂点に登ってもらいたいところですね。これから香港、中国と続く、電気自動車のビッグマーケットでの戦いはメーカーとしても負けられません。

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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