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モーター スポーツ コラム 2018年11月14日

SUPER GT最終戦レビュー

SUPER GT by 秦 直之
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これが元F1王者の実力! 山本尚貴とともにジェンソン・バトンがチャンピオンに輝く

ついに迎えたSUPER GTの最終戦。ツインリンクもてぎが舞台のレースには、誰が勝つかもさることながら、激戦に激戦を重ねたタイトルの行方も注目された。GT500はRAYBRIG NSX-GTの山本尚貴/ジェンソン・バトン組に、KeePer TOM’S LC500の平川亮/ニック・キャシディ組が同ポイントで並べば、GT300はARTA BMW M6 GT3がライバルに12ポイント差という対照的な状況となっていた。さぁ、運命の扉はどう開かれるのか?

ARTA NSX-GTが2戦連続、今季3度目のポールポジションを奪う

4月に始まったシリーズも、早いものであっという間に最終戦をツインリンクもてぎで迎えることになった。まずは予選から。レースウィークのスタートとなった公式練習こそ、始まりはウェットコンディションだったものの、すでに雨はやんでいたことから、やがて全車がドライタイヤで走れるように。予選は完全にドライコンディションとなっていた。

GT500のQ1はRAYBRIG NSX-GTのバトンがトップで、2番手がEpson Modulo NSX-GTの松浦孝亮、そしてARTA NSX-GTの伊沢拓也という順。続くQ2はトップ6がレコードタイム更新という、まさにレコードラッシュといった状況の中、ポールポジションを獲得したのはARTA NSX-GTの野尻智紀で、2戦連続となった。

「朝の公式練習では、それほどフィーリングは良くなくて、予選に向けて不安もなかったわけではなかったんですが、チームがしっかり修正してくれて、特に僕の走りにマッチしたセットにしてくれたおかげで、この結果が残せたんだと思います。今はすごくいい方向であるので、最後のレースをいい形で締めたいと思います」と野尻。 2番手につけたのは、何としてもJBと一緒にタイトルを獲りたい」と語るRAYBRIG NSX-GTの山本。バトンは「いろんなことがあるだろうし、タフなレースになるのは間違いない。でも、ナオキと一緒に栄光をつかみ取りたいね!」と語っていた。3番手はEpson Modulo NSX-GTのベルトラン・バゲットが獲得。一方、KeePer TOM’S LC500の平川は6番手。ちなみに、ARTA NSX-GTの優勝を許そうとも、RAYBRIG NSX-GTはポジションをキープすれば、チャンピオンを獲得できるが、そこにどうKeePer TOM’S LC500が迫ってくるか注目された。

GT300はマネパランボルギーニGT3がPP獲得、ARTA BMW M6 GT3は10番手に……

GT300のQ1でARTA BMW M6 GT3の高木は2番手につけたが、Q2でパートナーのウォーキンショーが失速。なんと10番手に沈んでしまう。ポールポジションを獲得したのは、開幕戦以来となるマネパランボルギーニGT3で、その時はマルコ・マペッリがQ2を担当、今回担当したのは平峰一貴で、自身初の快挙となったばかりか、レコードタイムも更新した。それだけに第一声は「チョ?気持ちいい!」で、続けて「以前のテストでも調子が良かったので、来る前から最終戦を楽しみにしていました。今、持っている力をすべて出せたと思います」と平峰。

そして2番手につけたのは、これまたレコード更新なったLEON CVSTOS AMGの蒲生尚弥で、チャンピオン争いでは俄然有利になった。というのも、決勝でこのポジションをキープした上で、ARTA BMW M6 GT3が思うように上がって来られなければ、大逆転が可能になるからだ。「去年の反省を活かし、今年は取りこぼしのないようレースをやり続けてきて、この位置にいるからには最後まで諦めません。今回も尚弥がいい仕事をしてくれて、僕は安心してQ2を見守ることができました」とはパートナーの黒澤治樹のコメントだ。

3番手につけたのは、やはりチャンピオン候補の一台、「グッドスマイル初音ミクAMG」。谷口信輝、片岡龍也ともに3番手につけ、自慢とする安定の速さを、どう決勝でも披露してくれるか注目された。

ARTA NSX-GTが逆転を信じて、スタートから逃げまくる

今回も決勝レースは天候に見舞われ、スタンドは大観衆を飲み込んでいた。気温は19度と、この時期ならではだが、路面温度は30度とやや高め。これがどう影響を及ぼすか。注目のスタートは、ARTA NSX-GTの伊沢が少々掟破りとも言える猛ダッシュで、後続を寄せつけず。RAYBRIG NSX-GTの山本はポジションキープでオープニングラップを終えたのに対し、KeePer TOM’S LC500のキャシディはひとつポジションを上げ、5番手となっていた。 一方、キャシディに抜かれていたKEIHIN NSX-GTの小暮卓史は3周目、突然ピットに戻って来る。ボンネットがめくれ上がっていたためだ。これでホンダ勢はRAYBRIG NSX-GTに対する援護を1台失う格好に……。逆にレクサス勢に対して、抑え役となっていたのはEpson Modulo NSX-GTのバゲットだ。背後にZENT CERUMO LC500の立川祐路と、KeePer TOM’S LC500のキャシディをしっかり従えていた。

15周目を過ぎた段階で、トップを走っていたのはARTA NSX-GTの伊沢で、2番手もRAYBRIG NSX-GTの山本のまま。GT300との絡みで差は広がったり縮まったりを繰り返していたが、どうやらともに競い合おうという意識はなさそうだ。この2台で先にピットに入ったのはARTA NSX-GT。20周目にGT500で最も早く野尻に交代、タイヤを4本換えて35秒でコースに送り出す。代わってトップに立った山本がドライバー交代を遅らせたのとは対照的に、間に挟んだ車両が早々にピットに入ったこともあり、2番手にはKeePer TOM’S LC500が2番手に浮上。だが、30周目の段階で差は10秒近くに達していた。

RAYBRIG NSX-GTとKeePer TOM’S LC500のピットインは、同じ31周目。ともにタイヤは4本とも換えて、作業時間は36秒とRAYBRIG NSX-GTを1秒ほど上回ったKeePer TOM’S LC500ながら、先のタイム差があったことから逆転ならず。交代したバトンは、ARTA NSX-GTの野尻に続き……と思われたものの、なんとZENT CERUMO LC500の石浦宏明の後ろとなる3番手に。その直前に石浦は、S字でEpson Modulo NSX-GTの松浦を抜いていたのだ。そして平川は8番手でコースに復帰することに。レース展開的には、今回は早めのピットの方が有利に進められたようだ。

守りに入らぬバトン、そして最後まで諦めず攻め立てた平川

バトンは3番手のままでも、チャンピオンが決定する。しかし、あえて守りに入らず、石浦を激しく攻め立てる様子に、肝を冷やした関係者も少なくなかったのでは。一方、石浦も冷静に対処して逆転を許さず、またクリーンなバトルを見せてくれたことでKeePer TOM’S LC500との差も広がって、バトンも納得したのだろう。しかし、平川は少しも諦めることなく、オーバーテイクの連続で、37周目には4番手にまで返り咲くこととなる。

残り10周、勢いに乗る平川はバトンとの差を、2秒を切るまでに詰める。その後もじわりじわりと……。だが、GT300の処理で、若干の運がバトンの方にあった。さらにラスト2周、平川のタイヤが音を上げたことで最後は1秒半の差をつけ、バトンは3位でフィニッシュ! その結果、RAYBRIG NSX-GTのチャンピオンが決定した。

優勝を飾ったのはARTA NSX-GTで、終盤のZENT CERUMO LC500の猛追をはねのけて2連勝。チャンピオンを争った2台に続く5位は、WedsSport ADVAN LC500の国本雄資と山下健太が獲得した。「勝てたことは嬉しいけれど、100(RAYBRIG NSX-GT)にチャンピオンを獲られた悔しさの方が大きくて、まして去年まで自分がいたチーム。来年は自分たちの力で取り戻します」と語る伊沢の表情に、笑顔は少しもなかった。

「日本人でSFとGT、2カテゴリーでチャンピオンを獲れたのは、あの本山(哲)選手以来ふたり目と聞いて、夢のような気分です。SFはシングルシーターで僕一人だけの戦いですが、GTはパートナーが重要なカテゴリー。JBの力があったからこそ獲れたタイトルです。ここまでストレスもすごかったんですが、今はこれ以上ない感動を覚えています」と山本。

「僕はレース経験こそ豊富だけど、トラフィック(コース上の混雑)に関しては未経験で、こればかりは慣れるのに苦労した。しかもGT1年目とあって、新しく走るコースばかりだったからね。今さらながら、すごく勉強させてもらったシーズンだったよ」とバトン。

トップを快走したマネパランボルギーニGT3を襲った不運……

GT300のスタートは、マネパランボルギーニGT3のマペッリが順当にトップで1コーナーに飛び込んでいったのに対し、グッドスマイル初音ミクAMGの片岡が、LEON CVSTOS AMGの黒澤をかわして早くも2番手に浮上。黒澤はSUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人、GAINER TANAX GT-Rの安田裕信にも抜かれ、4番手で1周目を終えることとなる。また、この周のヘアピンでは、7番手スタートのリーガルフロンティアランボルギーニGT3の元嶋佑弥が接触で大きく順位を落としていた。

一方、ARTA BMW M6 GT3の高木は、ポジションキープの10番手からの発進に。しかし、前を行くHOPPY 86 MCの松井孝允をなかなか抜けず、ようやく5周目にModulo KENWOOD NSX GT3の道上龍を、松井ともども抜いて9番手という状況だった。そして、松井を高木がかわしたのは、13周目の5コーナー。その段階での位置関係を保っていれば、チャンピオン獲得なるのだが、後半スティントを任せるウォーキンショーに、少しでも楽をさせたいという「親心」は少なからずあったはずだ。

同じ頃、激しく5番手を争っていたのがLEON CVSTOS AMGの黒澤と、TOYOTA PRIUS apr GTの平手晃平。ともにチャンピオンの可能性を残しているだけに、意地と意地がぶつかり合う。平手の方に攻めあぐねている印象はあったものの、19周目の1コーナーでようやく蒲生の前に出る。

一方、タイトル争いには絡まずとも、最後に一矢報いたいマペッリがひとり逃げ続ける中、片岡と井口、そして安田の2番手争いが激しくなっていた。18周目の90度コーナーで安田が井口をパス。その激しさがよりマペッリを楽にして、リードが15秒にも達しようとしていた19周目、突如スローダウン!

左リヤタイヤが異物を踏んでパンクしていたためだ。急きょピットに戻り、タイヤを変えて平峰をコースに戻すも、それだけならばミニマムの周回は超えていたため、まだ優勝は十分狙えたはずだ。しかし、パンクしたタイヤがフェンダー内部を痛めていたようで、自車のパーツが同じタイヤを攻撃して、再度ピットに戻る羽目に……。これでマネパランボルギーニGT3の初優勝の夢は潰えてしまう。

中盤からトップに浮上したLEON CVSTOS AMGが逃げ切り、栄冠をもつかんだ!

その19周目にはLEON CVSTOS AMGがピットイン。なんとタイヤ無交換で蒲生をコースに送り出す。20周目にはグッドスマイル初音ミクAMGも片岡から谷口に交代、こちらは左側のタイヤ2本だけ交換する。戻った位置は、なんと蒲生の後ろ! 無交換の分のマージンが生きたのは間違いない。

22周目にTOYOTA PRIUS apr GTの平手が、130RでSUBARU BRZ R&D SPORTをパス。抜かれたSUBARU BRZ R&D SPORTは次の周に山内英輝に、そして前を行くGAINER TANAX GT-Rも平中克幸に24周目に交代。これで平手はトップにも浮上。その間にも逃げて、後に構える嵯峨宏紀に少しでも貯金を渡そうと逃げ続けていた。その頃、2番手にはARTA BMW M6 GT3の高木がつけており、平手との差は15秒。ピットに入ったのは32周目、タイヤ無交換で嵯峨をコースに送り出すも、LEON CVSTOS AMGの蒲生の前には出られず……。

続く33周目にはARTA BMW M6 GT3もピットイン。このままではチャンピオン獲得は不可能と判断し、タイヤ無交換でウォーキンショーをコースに戻すも、6番手での復帰が精いっぱい。そればかりか、間もなくSUBARU BRZ R&D SPORTの山内にも抜かれて7番手に後退したばかりか、その際にウォーキンショーは右のバックミラーを失ってしまう。

これでトップに立ったのはLEON CVSTOS AMGの蒲生で、2番手はTOYOTA PRIUS apr GTの嵯峨。そして3番手にはグッドスマイル初音ミクAMGの谷口がつけ、タイヤ無交換の前にいる2台に対し、左側2本交換のメリットがどう生きるか? また、ARTA BMW M6 GT3は7番手のままだったから、このままの順位が保たれていれば、LEON CVSTOS AMGの初戴冠が決まる。その蒲生のペースは残り10周を切ってなお鈍らず、嵯峨と谷口のバトルが激しくなっていたこともあって、よりリードを広げてもいた。逆にARTA BMW M6 GT3は、その後2台の先行を許し、万事休す……。

ラスト5周は大事をとって、ペースを抑えた蒲生ながら、難なく逃げ切りを果たして優勝を飾ることに。その結果、LEON CVSTOS AMGの逆転チャンピオンが決定した。2位はTOYOTA PRIUS apr GTが、3位はグッドスマイル初音ミクAMGが獲得。4位は1周目の遅れを帳消しとした、リーガルフロンティアランボルギーニGT3の佐藤公哉と元嶋が激しい追い上げを実らせていた。

「長い間レースをやってきましたが、チャンピオンは初めてなんです。今まで2位とかは何度もありましたが。あらかじめタイヤは無交換と考えていたので、なるべく使わないようにして尚弥に渡そうと思っていたから、正直僕のスティントは厳しかったのですが、代わってからの尚弥はしっかり走ってくれて、ほとんど心配せずに僕は見守っていられました。僕らに関わってくれた、すべての人たちに感謝しています」と黒澤。
「タイヤ無交換という、僕らは一度もやったことのない作戦だったので、不安もあったんですが、セーブして負けるのだけは嫌だったので、とにかく一生懸命走り続けた結果、勝ててチャンピオンを獲れて良かったです。実はチャンピオンだというのは、走り終わった後に知ったので、チェッカーを受けた時はホッとしたというのが正直なところで、実感はまだ湧いていないんですけどね」と蒲生。

秦 直之

秦 直之

大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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