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モーター スポーツ コラム 2018年10月24日

SUPER GT第7戦レビュー

SUPER GT by 秦 直之
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予選5番手からの大逆転で、KeePer TOM’S LC500が今季初優勝!

SUPER GTの第7戦が10月20~21日に、オートポリスで開催された。シリーズの大詰めに差し掛かったレースはウエイトハンデが半減されて、前回までのようにランキング上位陣が苦しむことはないだろう……というのが大方の予想ではあった。 しかしながら、何が起こってもおかしくないのが、このところのSUPER GTの展開だ。実際、予選からはまったく想像もつかない展開になった決勝レース。まさか、まさかの連発は、見る者すべてにエキサイティングだったに違いない。

ARTA NSX-GTが今季2度目のPP獲得。NSX-GTが予選でトップ3を独占!

走り初めとなる公式練習は、灰色の雲にオートポリスは覆われ、非常に低い気温、路面温度の中での走行となったが、予選が始まる頃にはすっかり青空が広がるようになって、気温は15度とまずまずだったが、路面温度はほぼ20度上がって34度にも! かなり、それまでのデータがリセットされてしまったのは間違いない。

さて、プレビューで予想したとおり、やはりホンダ勢がオートポリスを苦手としていたわけではなかったのは、いきなりQ1で明らかになる。トップはKEIHIN NSX-GTの小暮卓史で1分32秒650をマークし、この時点で従来のレコードタイムを更新。これにARTA NSX-GTの伊沢拓也が1分32秒706で続いていたからだ。しかも、限界はまだまだその先にあった。

Q2でARTA NSX-GTの野尻智紀が1分31秒441をマークし、第3戦・鈴鹿以来のポールポジションを獲得。順番を入れ替えはしたものの、1分31秒989でKEIHIN NSX-GTの塚越広大が2番手で続き、しかも唯一燃料レーシングシミュレーター まで絞られて、苦戦を覚悟の上だったRAYBRIG NSX-GTの山本尚貴も3番手につけることになったのだ。

レクサス勢最上位は、au TOM’S LC500の関口雄飛で4番手、これにKeePer TOM’S LC500のニック・キャシディが続いた一方で、ニッサン勢はなんと1台もQ2に到達できずに終わった。 「朝の公式練習からQ1にかけて、伊沢選手がいい走りを見せてくれて、僕が担当したQ2までにアジャストしたら、さらにいいクルマになって。何の不満もないアタックができました」という野尻選手に対し、「彼は速すぎ!」と伊沢選手。加えて「こんなチームメイトと戦えることに誇りも感じています。正直このコースに来るまでは不安もあって、ここまでの順位になるとは想像もしていませんでした。決勝は思いっきり行くだけです」と語っていた。

GT300ではHOPPY 86 MCも今季2度目のPP獲得、ランキング上位陣は赤旗に泣く

GT300のQ1でトップにつけたのは、1分43秒542をマークしたSYNTIUM LMcorsa RC F GT3のルーキー宮田莉朋。早めのアタックが功を奏した格好だった。一方、コンディションの向上を待って、後半勝負としていたチームにとっては、ラスト5分で出された赤旗が痛手になってしまう。その時、まさにアタック中というチームが大半を占めていたからだ。その中にはランキングのトップにつけるARTA BMW M6 GT3のショーン・ウォーキンショーや、ランキング2位のTOYOTA PRIUS apr GTの嵯峨宏紀も……。ウォーキンショーは22番手、嵯峨に至っては最下位に甘んじてしまう(その後、ペナルティを課せられた車両もあり、ふたつ順位を繰り上げたが)。

そのQ1を13番手とギリギリで通過していた、HOPPY 86 MCの松井孝允もそのひとり。「松井選手が、トラフィックや赤旗でストレスを溜めているのを目の前で見ていたので、解消させてあげるには、僕がいいアタックをしなきゃと。2番手にもしっかり差をつけられて良かった」と語るのはパートナーの坪井翔。そのとおり1分42秒498と、レコードを更新して第5戦・富士以来のポールポジションを獲得する。

2番手には星野一樹からバトンを託された、GAINER TANAX triple a GT-Rの吉田広樹がつけ、3番手は地元チームからエントリーのマッハ車検MC86 Y’s distractionが獲得。やはり地元の坂口夏月が6番手でQ1を突破し、Q2で平木湧也が躍進を遂げた格好となった。そして、前回優勝の勢いそのままに、SUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人が5番手で、ランキング3位につけるグッドスマイル初音ミクAMGの谷口信輝が6番手につけていた。

ホンダ勢の苦悩、レクサス勢の躍進

すっかり秋晴れに恵まれたオートポリスは、グランドスタンドが超満員! ファンの熱気を大いに感じる中でスタートが切られた。タイヤがまだ温まりきっていなかったのか、ウェービングをしながらもARTA NSX-GTの伊沢はトップで1コーナーに飛び込み、これにKEIHIN NSX-GTの小暮も続いた一方で、早くもau TOM’S LC500の中嶋一貴が3番手に浮上する。一方、燃料リストリクターの影響が大きいのか、RAYBRIG NSXのバトンは出足が鈍い。オープニングラップはKeePer TOM’S LC500のキャシディにも激しく迫られるが、ここは何とかしのいで4番手で踏み留まっていた。

トップを伊沢が守り続けた一方で、小暮には中嶋が迫り、しばらくの間激しいバトルを繰り広げる。その後方では、7周目にキャシディがバトンをかわして4番手に浮上。そして11周目には第2ヘアピンで中嶋が、ようやく2番手に躍り出ることとなった。その勢いで次の周の1コーナーで、中嶋はGT300車両をうまく使って伊沢をもパス! 伊沢はタイヤのピックアップに苦しんでいたのか、はたまたタイヤのグリップが早くも落ちていたのか、中嶋の逃げを許したばかりか、小暮とキャシディ、バトンをも近づけてしまう。

その2番手争いの中で、明らかにペースがいいのがKeePer TOM’S LC500だ。というより、明らかにホンダ勢のペースが鈍り始めていた。そんな中、16周目に7番手を走っていたWedsSport ADVAN LC500がピットイン。山下健太選手が乗ったまま、タイヤを4本交換するが、これはあらかじめ決められていた作戦だった。オートポリスは抜きどころの少ないコースということもあって、あえて積極的に2ピットを選んだのだ。 そして20周目、バトンがZENT CERUMO LC500の立川祐路に抜かれて6番手に後退。いよいよホンダ勢が揃って悲鳴を上げ始めた中、その直後にセーフティーカーがコースに入った。セクター3で止まった車両があったためだ。これでいったんは休戦状態に……。と同時に、WedsSport ADVAN LC500が、遅れを大きく取り戻すことにもなった。

TOM’S勢が今季2度目の1-2フィニッシュに成功、レクサス勢としても4位までを独占!

なかなか抜けないということで我慢の走りを強いられていた、キャシディの視界が開けたのが26周目。SCがピットに戻って間もなく、まずRAYBRIG NSX-GTがピットイン。その次のKEIHIN NSX-GTがピットに滑り込んできたからだ。そしてRAYBRIG NSX-GTも。続く27周目にはARTA NSX-GTもピットイン。これでKeePer TOM’S LC500は自動的に2番手へと浮上することとなった。 一方、TOM’Sの2台は30周目に揃ってピットイン。それぞれ関口、平川亮に交代する。戻った場所はホンダ勢の前! そして33周目からトップを走ったのは、WedsSport ADVAN LC500の山下だった。42周目には国本雄資と交代するが、それでも3番手に踏み留まることに。そして、その頃のホンダ勢は明らかに苦しそう。KEIHIN NSX-GTの塚越が4番手につけていたが、42周目にZENT CERUMO LC500の石浦宏明に抜かれたばかりか、次の周にはRAYBRIG NSX-GTの山本にも塚越はかわされていた。

その頃、トップを行くau TOM’S LC500の関口は、KeePer TOM’S LC500の平川を4秒以上も離しており、そのまま逃げ切ることが予想された。しかし、残り10周を切ったあたりから、平川のペースが上回るようになり、徐々に差が詰まっていく。そして、残り6周となった59周目の第2ヘアピンで、平川がトップに浮上! そのまま逃げ切ったゼッケン1は、今季初勝利を飾ることとなった。

3位はWedsSport ADVAN LC500で、4位はZENT CERUMO LC500とあって、レクサス勢は上位を独占。そのZENT CERUMO LC500の背後に終盤つけたが、抜くまでには至らなかったRAYBRIG NSX-GTは5位に。その結果、山本とバトン、平川とキャシディは同点で並んで最終戦に臨むこととなった。一方、ポールポジションからスタートしたARTA NSX-GTは、48周目の第2ヘアピンで追突を食らっていたこともあり、12位につけるのがやっとだった。

「素晴らしいクルマを用意してくれたチームに、とても感謝しています。僕のスティントはペースも良くて、それほどリスクを追わずに走りました。100号車(RAYBRIG NSX-GT)の前に出ることだけを考えて、安全に行ったつもり。去年もシーズン終盤に追いついて、逆転もしているから、少しは自信もある。ホンダ勢も強いし、次のもてぎは短いし、なかなか抜けないので、どうなるか分からないけど、僕としてはすごく楽しみです」とキャシディ。そして平川は「予選でホンダ勢に上位を独占されて、少し落胆していたんですが、決勝では僕らTOM’S勢がワンツーで、すごく強いチームなんだなって改めて思いました。またチャンピオンを争えることは嬉しいんですが、油断はできないと思います。次も100だけ見て、前でゴールすることを心がけます」と語っていた。

好調にトップを走り続けていたかに思われていたHOPPY 86 MCに……

GT300では後方グリッドからスタートを切るはずだった、TOYOTA PRIUS apr GTがピットスタートを切ることに。これは本来装着するタイヤが、上がった路面温度に対応できないことがウォーミングアップで明らかになっていたための積極的な戦略だ。どこまで順位を上げて来るか注目された。

一方、ポールスタートのHOPPY 86 MCの坪井はグリーンシグナルの点灯とともに鋭いダッシュを決めて、後続を寄せつけず。GAINER TANAX triple a GT-Rの吉田、マッハ車検MC86 Y’s distractionの坂口、SUBARU BRZ R&D SPORTの山内英輝が順当に続いた一方で、6番手の好位置からスタートした埼玉トヨペットGreen BraveマークX MCの番場琢はスピンで遅れ、グッドスマイル初音ミクAMGの片岡は第2ヘアピンを曲がりきれず。先を行く4台からは離されてしまう。

その片岡に迫ってきたのが、Modulo KENWOOD NSX GT3の道上龍だ。高地に位置するサーキットではターボパワーが効く。3周目に道上は前に出た一方で、片岡が次の周にピットへ戻って来る。タイヤがマッチせず、2ストップ作戦を採ることとなったからだ。その頃、6番手を争っていたのが、リーガルフロンティアランボルギーニGT3の元嶋佑弥とK-tunes RC F GT3の中山雄一だった。7周目に中山は前に出る。 その間にも激しく2番手を争っていたのが、吉田と坂口、そして井口だ。8周目に坂口が吉田を抜いて2番手に浮上。この段階でトップの坪井とは4秒の差があったが、勢いに乗る坂口はそのまま差を詰めていく。13周目からはテール・トゥ・ノーズ状態に。18周目からSCランが行われたことは、坪井にとって有利に働いた。リスタートを決めて、坂口との差を再び広げられたからだ。このあたりは経験の差と言えるだろう。

26周目、トップのHOPPY 86 MCがピットイン。松井に交代するとともにタイヤはフロントの2本だけ交換する。その直後には、4番手を争っていたSUBARU BRZ R&D SPORTとModulo KENWOOD NSX GT3もピットに入ったが、先に大津弘樹がコースに戻って、井口とポジションを入れ替えることとなった。その頃、順位を入れ替えていたのが中山と元嶋だ。28周目にK-tune RC F GT3が前に出ていたことが、後に重要な意義をなす。

トップを走っていたマッハ車検MC86 Y’s distractionが、ピットに戻ってきたのが31周目。しかし、ピット作業に手間取り、代わった平木は順位を落とすことに。その間にトップに立ったのはK-tunes RC F GT3の中山で、2番手はリーガルフロンティアランボルギーニGT3の元嶋。このあたりが、ピットに入った後の順位も注目されていた。

気がつけば、K-tunes RC F GT3がトップに浮上! 新田はまた最多勝に並ぶ

34周目、リーガルフロンティアランボルギーニGT3が佐藤公哉と交代。戻ったのは、なんとHOPPY 86 MCの直後で、次の周には松井の前に出る。HOPPY 86 MCのペースが明らかに鈍い! ピックアップに苦しんでいたのが、その理由だった。そして40周目にはK-tunes RC F GT3も、中山から新田守男に交代。なんと、そのままトップをキープすることとなった!

そして、その40周目にはアクシデントも発生。高木真一と代わった直後の、ARTA BMW M6 GT3のウォーキンショーと接触した坪井がスピンを喫し、順位を落としてしまったのだ。その後、HOPPY 86 MCはやむなくピットに戻って、無交換だったリヤ2本のタイヤを換えたことから、完全に入賞圏から離れてしまう……。 逆にトップで折り返したK-tunes RC F GT3は好調そのもの! チェッカーまでアクセルを緩めず走り続けて、第3戦・鈴鹿に続く今季2勝目をマーク。これで新田は最多勝タイとなる通算20勝目を挙げることとなった。2位はリーガルフロンティアランボルギーニGT3が獲得し、3位はModulo KENWOOD NSX GT3が獲得し、4位はARTA BMW M6 GT3。その結果、高木とウォーキンショーはランキングのトップを守ったばかりか、貯金をさらに増やすこととなった。

5位はLEON CVSTOS AMGの黒澤治樹と蒲生尚弥で、ランキング2位にも浮上。地元の声援を受けたマッハ車検MC86 Y’s distractionは7位で、ピットスタートだったTOYOTA PRIUS apr GTの嵯峨と平手晃平は激しい追い上げが実って、ラスト3周で10位となり、貴重な1ポイントを稼いでいた。またノーポイントに終わったグッドスマイル初音ミクは首の皮一枚、王座獲得の権利を残した一方で、HOPPY 86 MCは権利を失った。

「タイヤの磨耗が厳しいことが予想できていて、レースのペースがどれぐらいになるのか分からなかったんですが、練習走行の感じでは保つな、という印象があったし、ロングも何回かできていたから、僕は不安にならず攻めていこうと思っていました。自分のペースでプッシュしていったんですが、無線で『残り5周、頑張って』って言われて、さらにプッシュしたら何故か1秒ぐらい上がって。運良く、SCが入っている間にタイヤのピックアップも取れたんでしょう。さらに3周することもできて、その間にマージンも作れたし、その後のピットもすごく速かったのが勝因だと思います」と中山。そして、新田は「雄一が挑んだQ1は路面とのマッチングなのか、思っていたよりパフォーマンスは出なかったんですが、テストや練習走行でコンスタントは良かったから、優勝までは想定していなかったんですが、表彰台の一角には入れるんじゃないかと。この優勝で僕らにもチャンピオン獲得の可能性が残ったからには、最後まで諦めずにいこうと思っています」と語っていた。

秦 直之

秦 直之

大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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