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最速男たちの技が光った予選、両クラスともにPP獲得記録を更新する
ゴールデンウィーク真っ最中の富士スピードウェイを舞台とし、500kmの長丁場で争われるSUPER GT第2戦は公式練習、予選で思いがけぬハプニングに見舞われていた。早朝まで降り続いた雨はやんではいたのだが、代わりに濃い霧がサーキットを覆ってしまったのだ。そのため、スケジュールは大幅に改められて、公式練習は30分間に、そして予選は20分間に短縮され、両セッションともドライバーひとりだけで挑んでもいいということになった。ともにドライコンディションでの走行になったが、必ずしも最適な状態になっていたとは言い難い。
そんな厳しき状況において、GT500、GT300ともにベテランの技が光った。GT500でポールポジションを獲得したのは、ZENT CERUMO LC500の立川祐路。自身が持つポールポジション獲得記録、23回にまで伸ばすこととなった。
「正直、予想していなかったというか、短い公式練習を走っただけで予選だったので、それほど手応えは感じられなくて。コンディションがどうなのかわからなかったし、タイヤは2セット使ってアタックしたんですが、1セット目はうまくいかなかったんで、よけいに嬉しい」と立川。不安材料としては、パートナーの石浦宏明が決勝レース直前のウォームアップ走行まで、まったく走れなかったことだが、それはすべてのチームにも共通する。
2番手は大嶋和也/フェリックス・ローゼンクヴィスト組のWAKO’S 4CR LC500で、3番手は松田次生/ロニー・クインタレッリ組のMOTUL AUTECH GT-Rが獲得。なお、前回のウィナー、塚越広大/小暮卓史組のKEIHIN NSX-GTはウエイトハンデの影響だけでなく、決勝レースを見越したタイヤ選択もあって、14番手からのスタートとなった。
そしてGT300では、ARTA BMW M6 GT3の高木真一がポールポジションを獲得。こちらも自身が持つ記録を14回目にまで伸ばしている。「富士は僕らのクルマに特性がすごく合っていてポールポジションが獲りやすい、というのはあるんですが、急な予選だったにも関わらず、よくメカが合わせてくれました。僕は安心してアタックできました」と高木。そしてパートナーのショーン・ウォーキンショーは「僕は走れていないけど、不安はないよ。去年もポール・トゥ・ウィンしているし、事前のテストでもレース仕様で走っているからね」といたって冷静だ。2番手は井口卓人/山内英輝組のSUBARU BRZ R&D SPORTが、そして3番手は黒澤治樹/蒲生尚弥組のLEON CVSTOS AMGが獲得している。
クインタレッリが、そしてコバライネンが魅せた序盤の戦い
さて決勝当日は、前日午前までの悪天候が、まるで嘘のような好天に恵まれた。スタンドには大観衆が。サーキットは55,000人を詰め込んでいた。ドライバー全員が満足に走れているわけではないことから、スタート進行の始まりと同時に行われるウォームアップは、通常の20分間から25分間に拡大されていた。スタート時の気温は18度、路面温度は36度と、やや高め。ストレートにかけて強めの追い風が吹いていた。
立川がスタートドライバーを務めた、ZENT CERUMO LC500グリーンシグナルの点灯に鋭く反応して、トップで1コーナーに進入。その背後につけたのは、MOTUL AUTECH GT-Rのクインタレッリで、まず1コーナーでWAKO’S 4CR LC500のインを刺す。クインタレッリの勢いは止まらず、1周目のダンロップコーナーで立川をも交わしてトップに浮上。立川は最終コーナーで姿勢を乱したこともあって、次の周の1コーナーでは同じレクサス集団にも襲い掛かられるも、なんとか2番手は死守。しかし、3番手にはau TOM’S LC500のジェームス・ロシターが浮上する。
本来であれば、関口雄飛とau TOM’S LC500を走らせるのは中嶋一貴ながら、WECスパ戦を優先したため欠場。その代役であるロシターが、まず仕事をした格好だ。だが、それを上回る勢いを、4周目の100RでDENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ・コバライネンが見せて、3番手に浮上することとなる。
一方、一時は立川に対し、約2秒の差をつけていたクインタレッリながら、GT300のバックマーカーが現れ始めた、10周目あたりから再びバトルが勃発する。やがて、この戦いにはコバライネンとロシター、そして大嶋も加わることに。GT300をひととおりパスすると、バトルは落ち着くものの、それぞれ有視界で周回を重ねていく。
17周目の1コーナーでコバライネンが、立川を抜いて2番手に浮上。予選こそ5番手に留まっていたものの、決勝でのセットが完璧にマッチしていたのは間違いない。続いてクインタレッリにも迫っていき、23周目の1コーナーでは、ついにトップにも躍り出る。これを複雑な表情で、ピットで見守っていたのが坪井翔だ。普段はGT300のHOPPY 86 MCをドライブするも、小林可夢偉が一貴同様、WECスパ戦出場のため代役として坪井が起用されていたのだ。
ひとたびトップに立ったからには、そのまま逃げていくのかと思われたコバライネンながら、どうやら長いレースのことを考えて、タイヤをセーブし始めたようだ。続くクインタレッリも今は我慢の時と、モードを切り替えていたのは間違いない。
初めてのGT500ドライブにも、予想以上の適性を見せた坪井
38周目、トップを争うDENSO KOBELCO SARD LC500、MOTUL AUTECH GT-Rが同時にピットイン。それぞれ坪井、松田にステアリングが託される。ピットを離れた段階で、ふたりの差は約3秒。これがすぐ縮まるものと思われたものの、松田はすでに交代を済ませていたZENT CERUMO LC500の石浦、そしてau TOM’S LC500の関口に迫られていたため、坪井はむしろ差を広げていた。
一方、40周目には関口が石浦を抜いて、3番手に浮上。それでも石浦は少しも遅れることなく続いていき、73周目に関口が先にピットに入るまで激しいバトルを繰り広げた。しかし、ロシターへの再交代と併せて行ったピット作業に、2周後のZENT CERUMO LC500より多くの時間を要したことが致命傷に。立川はロシターの前でコースに復帰した一方で、WAKO’S 4CR LC500の大嶋には抜かれていた。
GT500のレギュラーたちを相手に少しも遜色ないどころか、時に上回るタイムで周回を重ね、コバライネンに「アメイジング!」とまで言わせていた坪井は、76周目まで走り続け、もちろんトップを死守し続けていた。その様子は、今すぐにでもGT500のレギュラーでも通用すると、関係者に感じさせることとなった。
素早いピット作業で逆転を遂げたMOTUL AUTECH GT-Rが、逃げ切り成功!
しかし、次の77周目には2番手を走行していたMOTUL AUTECH GT-Rもピットに入ると、ニスモ得意の素早いピット作業でクインタレッリは、コバライネンの前でコースに戻ることに成功する。その後もファステストラップの連発で、クインタレッリは後続を寄せつけず。
その後、トップ2台が単独走行となる中、80周目の1コーナーで大嶋を抜き、3番手に浮上したのは立川だった。だが、前を追おうにもクインタレッリもコバライネンも遥か彼方。そこからは立川もポジションキープに徹していた。最後に見せ場を作ったのは、au TOM’S LC500のロシターだ。WAKO’S 4CR LC500の大嶋を残り2周となる、108周目の最終コーナーでかわして4番手に浮上し、そのまま振り切って見せた。
後続に大差をつけてMOTUL AUTECH GT-Rがトップチェッカーを受け、松田がGT500の最多勝となる20勝目をマーク。
「正直言って今回、自分が最多勝を挙げられるとは思っていませんでした。むしろ立川選手に並ばれるかと思っていたぐらいで。これもチームのおかげですし、その半分ぐらいはロニー選手と達成しているので、とても感謝しています。これから、もっと増やしていきたいです、25とか30勝まで! 坪井選手の新人らしからぬ走りに感心しながら走っていましたが、このぐらいの差ならロニー選手のアウトラップと、ピットできっと逆転してくれると思っていました」と松田。そしてクインタレッリは「次生が最多勝を狙うなら、僕は5回目のチャンピオンを早く獲りたいので(笑)。これからもふたりで力を合わせて頑張ります」と語っていた。
ARTA BMW M6 GT3が、圧倒的速さでポール・トゥ・ウィン!
GT300ではARTA BMW M6 GT3の高木が、スタートと同時に逃げていった。圧倒的なストレートパフォーマンスを武器に、後続をまったく寄せつけず。驚くべくは、SUBARU BRZ R&D SPORTが本来ストレートの長い富士を苦手としているはずが、離されているとはいえ、しっかり2番手を保っていたことだ。これは予選一発の速さだけではないことと、卓越した旋回性能、さらにブレーキングを極めていたことの証明と言えるだろう。
上位の2台がそれぞれ単独走行の中、バトルを繰り広げていたのはグッドスマイル初音ミクAMGの片岡龍也、そしてTOYOTA PRIUS apr GTの平手晃平だ。その平手が前に出たのは17周目の1コーナーで、3番手に浮上。開幕戦では嵯峨宏紀からバトンを託される前にリタイアしていただけに、これが平手にとって久々に走るGT300の決勝ながら、すっかりマスターできていたのは間違いない。
上位陣で最初にピットに戻ってきたのが、SUBARU BRZ R&D SPORTで30周目に山内に交代。次の周にはTOYOTA PRIUS apr GTも嵯峨と代わり、素早いピット作業で山内の前に出るも、冷えたタイヤでの踏ん張りが効かず、再逆転を許してしまう。その間にもARTA BMW M6 GT3のトップは盤石。高木から38周目に20秒以上の貯金を渡され、交代したウォーキンショーもそのままトップを快走する。
そんな中、2番手を走っていた、SUBARU BRZ R&D SPORTが55周目にストップ。エンジンが音を上げてしまったのだ。これにより、TOYOTA PRIUS apr GTの嵯峨が2番手に浮上し、ウォーキンショーはさらにリードを広げることにもなった。72周目に再び高木が乗り込み、タイヤはしっかり4本交換。これに対し、1周前に嵯峨から平手に代わっていたTOYOTA PRIUS apr GTはタイヤ無交換でロスを最小限とするも、高木に近づくことは許されなかった。
1周目に最後尾まで落ちながら、GAINER TANAX GT-Rが3位まで追い上げる
さて、ドライバー交代をギリギリまで伸ばし、暫定ではあったがトップを走っていたグッドスマイル初音ミクAMGの谷口信輝は、83周目にようやくピットへ。なんと最初のピット同様、左側のタイヤ2本の交換に留め(ということは、右側は終始無交換だ!)、ロスを最小限としたことで、3番手で片岡はコースに戻ったかと思われたが、すぐにGAINER TANAX GT-Rの平中克幸に抜かれてしまう。
GAINER TANAX GT-Rは、周回遅れ? いや違う、同一周回で3番手を奪い取ることに成功。実はスタート直後のヘアピンで平中は後続車両に追突され、いったんは最後尾まで退いていたのだが、安田裕信とともに激走を見せて、いつの間にか順位を上げてきたのだ。対して、なんとか4位は欲しかった片岡ながら、換えていない右側のタイヤの負担は大きく、ラスト4周でLEON CVSTOS AMGの蒲生にかわされていた。
最後は25秒差での圧勝となったARTA BMW M6 GT3は、ゴールデンウィークの富士を2年連続で制覇、高木はGT300最多となる通算19勝目をマークした。
「嬉しいです。最多勝にしても、最多PPにしても、勝てるクルマに仕上げてくれるチームがいないと達成できないので、すごく感謝しています。レースは思っていた以上に路面温度が高くて、僕らの選んでいたタイヤは柔らかかったんで、ロングの落ち込みが心配でしたが、思ったより後ろが離れてくれたし、後半の落ち込みが少なくて。心配だった温度も途中から下がってくれたおかげで、僕らずいぶん楽させてもらいました!」と高木。
2位はTOYOTA PRIUS apr GTが、そして3位は怒涛の追い上げを見せたGAINER TANAX GT-Rが獲得した。
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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