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サッカー フットサル コラム 2024年5月27日

「1点リード」を利用できなかった横浜。審判にゲームを壊されてしまったACL決勝

後藤健生コラム by 後藤 健生
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横浜F・マリノスがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝の第2戦でアル・アイン(アラブ首長国連邦=UAE)に1対5で大敗。アジアのタイトル獲得を逃してしまった。

第2戦は内容的にも明らかにアル・アインが上回っていた。だが、第1戦でのリードを守り切れることは十分に可能だったはずだけに、結果は残念だった。

敗因は2つある。

1つは、せっかくホームでの第1戦で逆転勝ちしてつかんだ「1点リード」という状況を生かせなかったことだ。

ホームでの第1戦(5月11日)では、アル・アインが引き気味に守ってカウンター狙いの戦いをしかけてきた。そして、前半の13分にスフィアン・ラヒミがスピードを生かして突破し、GKのポープ・ウィリアムが弾いたところをモハンメド・アルブルーシが決めてアル・アインが狙い通りの形で先制した。

だが、その後は横浜FMがゲームをコントロール。なかなか得点できなかったものの、2列目からの飛び出しが効果的で、72分と86分に植中朝日と渡辺皓太が決めて逆転勝ちに成功。「18本ものシュートを撃っていたのだから、もう1点は取りたかった」試合ではあったが、1点をリードした状態で第2戦に臨むことができた。

そのリードをどう生かすか……。それが、第2戦の立ち上がりのテーマだったはずだ。もし、リードを保ったまま時間が経過すればアル・アインには焦りが生じるはずだった。

1つのポイントは、第1戦ではカウンター狙いだったアル・アインが勝つしかない状況のホームゲームでどのようにやり方を変えてくるかだった。それを、いかに早く見極めて対応するか。それが、横浜FMにとっての課題だった。

アル・アインは第1戦では出場機会のなかったサイード・ジュマを左サイドバックに入れただけで、他の10人は変更がなかったが、前線のポジションを変えてきた。

トップには第1戦と同じくラヒミが入ったが、2列目は第1戦では右からアルブルーシ、アレハンドロ・ロメーロ(カク)、マティアス・パラシオスだったが、第2戦では同じく右からカク、パラシオス、アルブルーシ。そこに、ボランチのヤヒア・ナデルも加わって、横浜FMの最終ラインの裏のスペースに飛び出す形を狙ってきた。

非常に流動的でつかみにくい動きだった上に、ワンタッチで正確なパスを通してきたので、横浜FMのDFは対応が難しくなった。

横浜FMは高い位置から積極的にプレスをかけてボールを奪いに行った。このあたりは、第1戦のイメージのまま戦っていたように見えた。

しかし、アル・アインは横浜FMの選手がボールを奪いに行くのを利用して、ワンタッチで裏を狙ってきたのだ。1点のアドバンテージを持っていた横浜FMとしては、もう少し相手の様子を見てもよかったのではないだろうか。無理にボールを奪いに行って引っ繰り返されるようであれば、スペースを埋めて構えて守って相手の動きが落ちるのを待ってもよかったのではないか。

ところが、横浜FMは前半の9分に先制ゴールを奪われてアドバンテージを失ってしまう。クリアボールがハーフライン付近にいたヤヒア・ナデルに渡り、ナデルはそのボールをすぐにラヒミに預けて、トップスピードでペナルティーエリアに侵入。ナデルはラヒミからの縦パスをヒールでラヒミに戻し、ラヒミが横浜FMゴールに突き刺した。

これで、アル・アインは完全に勢いに乗ってしまい、横浜FMはアル・アインの猛攻を受け続けた。ただ、その後はゴール前でしっかり守り、20分過ぎにはMFの並びを変えて守備を安定させることにも成功した。

スタートは喜田拓也をアンカーに渡辺と植中をインサイドハーフに置いていたが、渡辺のポジションを下げて喜田と2人で中盤の底のスペースを埋めたのだ。

横浜FMが中盤の並びを変えてからはボールを持つ時間も長くなり、26分に右から攻撃参加した松原健のクロスを渡辺がシュートして初めての決定機を作ると、28分にも左のエウベルからのクロスを喜田がシュート。横浜FMは、流れを変えることに成功した。

もちろん、これは結果論ではあるのだから、せっかく1点リードで臨むことができたのだから第2戦は最初からこの守備的な並びでスタートすべきだったのではないかという気もする。

こうして、2試合合計でも、また試合の流れでも互角の勝負になったと思われたのだが、その矢先の29分にアル・アインはPKをゲットする。

右サイドバックのバンダル・アルアハバビからのアーリー・クロスにラヒミが飛び込み、畠中槙之輔と接触。タンタシェフ主審はラヒミのシミュレーションと見てイエローカードを提示したのだが、ここでVARが介入。畠中のファウルと判定されてしまったのだ。

スロー映像で見れば、たしかに畠中の膝がラヒミに接触している。だが、ラヒミがPKを狙って飛んでいたのは明らかだ。うまく、相手に接触するように飛んでいるのである。しかし、VARでスロー映像を見れば足が接触しているので審判はファウルを取りたくなってしまう。プレーの流れを見ないで、一瞬を切り取った映像だけを見る結果だ。

結局、カクがPKを決めて、アル・アインは2試合合計で3対2と逆転に成功する。しかし、40分にはアル・アインのクアム・クアディオがバックパスを漫然とコントロールしようとしたところをヤン・マテウスが後方から奪って1点を返して、2試合合計は再び3対3のタイとなった。

ところが、45分+10分に今度は抜け出したラヒミを飛び出したGKのポープが止めようとしたところで、再び、ラヒミがうまく倒れてポープが退場となってしまう。

こうして、後半は横浜FMは1人少ない状態での戦いを強いられることとなってしまったのだ。

試合後のフラッシュインタビューで、ハリー・キューウェル監督は「審判によってゲームが壊された」と主張していたが、まさにその通り。あらゆる事象にVARが介入してゲームの行方を左右してしまう……。AFCの大会では、何度も経験してきたことがまたも起きてしまったのだ。

第1戦とは戦い方を変えてきたアル・アイン。エルナン・クレスポ監督の意思をピッチ上でうまく表現した選手たち。そして、トップのラヒミの決定力および演技力……。アル・アインが強力なチームだったことは間違いない。

一方、昨シーズンはJ1リーグで準優勝という成績を残した横浜FMだったが、今シーズンはまだ新監督の下でのチーム作りの模索が続いている状態で、消化試合数が2試合少ないこともあってJリーグでも暫定14位と低迷している横浜FM。ACLでもラウンド16のバンコク・ユナイテッド戦、準々決勝の山東泰山戦、そしてPK戦にもつれこんだ蔚山現代戦と苦戦続きで、けっして良い状態とは言えないチーム状態での戦いだった。

従って、優勝を逃がしたこと自体はある意味で仕方のないことではあったが、レフェリーによってゲームが壊されてしまったことは非常に残念な結末だった。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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