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サッカー フットサル コラム 2024年5月1日

苦しみの中から成長した細谷真大。CFとしてオーバーエイジは招集すべきか?

後藤健生コラム by 後藤 健生
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U-23日本代表がアジアカップ準決勝でイラクを破ってパリ・オリンピック出場を決めた。

左サイドハーフの佐藤恵允に替えて平河悠を起用しただけで、他の10人はカタール戦と同じメンバーだったが、今大会で初めて中3日の休養日を挟んだ日本はコンディションも良さそうで、前半開始早々から試合をしっかりとコントロールした。

グループリーグではローテーションを駆使しながら乗り切った日本は(韓国戦で1敗を喫したが)、準々決勝と準決勝という最も大事な2試合を現時点でのベストメンバーで戦うことができたのだ。

日本代表は、あらゆるカテゴリーで、どのメンバーが出ても同じように戦えるチーム作りを目指しており、今回のU-23アジアカップでもその効果を示すことができたのである。

一方、中2日のイラクは体力的に不安があったのか、前半は両ウィングバックも下がってファイブバックで守備的な入り方をしてきた。そのため、日本はハーフライン手前付近までは余裕を持って前を向いてボールを持つことができた。

そうした余裕がある展開の中でもパススピードを上げたり、またセンターバックの木村誠二や高井幸大が持ち上がることで、日本はパスコースを増やしていった。この試合ではとくに高井が積極的で、正確なパスを前線に送って攻撃のスピードアップに貢献。また、アンカーの藤田譲瑠チマも前を向くことができたので、余裕を持ってタクトを振るった。

そして、グループリーグでは点を取れずに苦しんでいたワントップの細谷真大はカタール戦の決勝ゴールを決めたことですっかり重荷が取れたようで、積極的に相手守備ラインの裏を狙う動きを続けた。

10分には藤田がバイタルエリアにいた荒木遼太郎に速いパスを通し、荒木がワンタッチで細谷に通すという、カタール戦決勝ゴールの再現のようなプレーから決定機が生まれた。細谷のシュートはGKフセイン・ハサンにブロックされてしまったが、幸先の良いスタートだった。

前線の動きは守備面でも際立ち、素早くボールを回収しながら日本は攻撃を続けた。左右のサイド攻撃と中央からの崩し。パス攻撃とロングボールのバランスも良かった。

そして、28分に待望の先制ゴール。藤田がハーフライン付近からフワッとしたロングボールを送ると、走り込んだ細谷が柔らかいタッチでコントロール。ゴール前まで持ち込んでからターンして、インサイドキックでコースを狙ったシュートを決めた。

相手守備ラインの裏への走りと、正確なボール技術。そして、ゴール前での冷静さ……。まさに、この日の細谷は一級品のストライカーだった。

細谷は、その後も相手ラインとの駆け引きを繰り返し、また前線でのチェイシングも手を抜かず、90分間戦い抜いた。

なお、前半はその後も日本の攻撃が続き、43分には左サイドで大畑歩夢が相手に囲まれながらボールを持ちだし、中央へグラウンダーの速いパスを送る。そのパスを荒木がスルーすると、藤田がワンタッチで走り出していた荒木の前に正確なパスを送り、今大会絶好調の荒木は冷静にゴール右下隅に突き刺した。

後半はイラクが積極的に攻め込んできて何度か危険な場面も作られたものの、好調の両CBやGKの小久保玲央ブライアンの守備で切り抜け、攻撃でも細谷のヘディングシュートがゴールポストに嫌われた場面など、何度か決定機を作った。

こうして、日本は中東最強の一角に返り咲いたイラクに対してシュート数では16本対11本(枠内シュートは10本対3本)と完勝して見せた。

1月のアジアカップでは準々決勝敗退となり、アジア各国に「日本にも勝てる」という気持ちを持たせてしまったが、U-23代表がイラクに続いてウズベキスタンも破って優勝すれば、日本に対するリスペクトの気持ちは再び強くなるだろう。

従って、今大会の決勝戦はA代表も含めてアジアでの今後の戦いにも影響がある重要な戦いとなるだろう。

さて、U-23アジアカップの開催が当初の予定より遅れたことで、パリ・オリンピックの開幕まで3か月もない。チームはオリンピック出場が決まったのだが、選手にとってはメンバー入りの競争がこれから激しくなる。

今大会の招集メンバーは23人だったが、オリンピック本大会での登録は18人。規定のオーバーエイジ枠3人が招集されたら、U-23年代の選手の枠は15人に減るし、今大会に参加できなかった海外組の招集に向けた各国クラブとの交渉もこれから本格化するはずだ。

さて、オーバーエイジは使うべきか? そして、使うとしたら誰を入れるのか。これから、メディアでもそうした議論が白熱することだろう。

2021年の東京オリンピックでは吉田麻也や酒井宏樹、遠藤航といったA代表の中心選手がオーバーエイジとして招集されたが、これは自国開催という特殊事情があったから。

今シーズンは1月にアジアカップがあった関係でA代表の選手たちには疲労が蓄積されている(クラブでもUEFAチャンピオンズリーグとかイングランド・プレミアリーグで激しい戦いに関わっている選手も多い)。A代表の選手は休養を与えるべきだろう。

そこで、経験豊富な選手でありながら、様々な理由でA代表に招集されていない選手をオーバーエイジとして起用してはどうだろうか。

たとえば、CFのの大迫勇也だ。

U-23アジアカップで細谷が苦しんでいたのを見ていると。オーバーエイジは不可欠のように思えたが、ノックアウトステージに入って能力の高さを見せつけられるとオーバーエイジは不要。細谷に任せたい気持ちも強くなる。

だが、細谷と大迫がともにメンバー入りして切磋琢磨することは、細谷にとって貴重な経験になるのではないだろうか?

細谷はグループリーグでは結果を出せなかった。だが、ストライカーというのは本来そういうものだ。「ケチャップ理論」ではないが、ゴールは入らない時には入らないのだ。

大迫だって、PKを外すこともある。

だが、大迫は点が取れなくても明らかな攻撃の中心となる。前線でボールを収めてタメを作れるし、かなり無理なロングボールでもなんとか味方につなげることができるからだ。

トップに大迫のようなFWがいると、チームの戦術的な幅が大きく広がる。だから、たとえゴールを決められなくても、大迫はエースなのだ。

日本の将来のワントップ候補として、細谷には期待したい。

裏への飛び出しが得意なFWは何人もいるし、上田綺世や小川航基の得点能力も捨てがたい。だが、相手DFとのコンタクトでも負けずに強引に突破できる力強さでは細谷がナンバーワンだ。
パリ・オリンピックでの戦いで細谷はさらに成長してほしい。

それなら、CFにオーバーエイジは不必要なのかもしれないが、細谷には大迫のプレーの幅の広さを学んでほしいのだ。もっとも、ヴィッセル神戸としては、オリンピック世代でもない大迫を抜かれることは大迷惑な話だろうが……。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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