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サッカー フットサル コラム 2024年4月17日

退場にも動じなかったU-23日本代表。主力としてJリーグを戦っている選手の完成度は高い

後藤健生コラム by 後藤 健生
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パリ・オリンピック出場を目指すU-23日本代表が、U-23アジアカップ初戦で中国を破って白星発進に成功した。ただし、背後からチャージを受けたDF(センターバック)の西尾隆矢が相手を振り払おうとした腕が相手の顔面に入るというアクシデントがあり、西尾が退場となってしまったことで、思わぬ苦戦を強いられたのだが……。

ポイントになったのは退場処分が前半17分という早い時間だったこと。そして、この退場処分の前に日本はすでに先制ゴールを決めており、1対0でリードしていたことだ。

大岩剛監督の選択は明確だった。「まずは1点のリードを守ること」である。

日本では、こういう状況で守りに入ることが悪いことと思われている。

たしかに「攻めの姿勢を持ち続ける」ことは大事なことだ。だが、10人で戦う時間が75分近くあるのでは、エネルギーを守備面に割くのは当然のこと。そして、そのためには1点をリードという状況を最大限に活用すべきだろう。失点さえしなければ、相手には焦りが生じるから、そこをカウンターで衝いて仕留めれば、それが最高のシナリオとなる。

大岩監督は攻撃的MFの山本理仁を退けて、センターバックの木村誠二を投入して4人の最終ラインを再構築。そして、藤田譲瑠チマと松木玖生の2人をボランチとして、前線はトップに細谷真大、両サイドが右に山田楓喜、左に平河悠を置いた。

戦い方も守備的にシフトした。

11人が揃っている状況では前線からのプレスでボールを奪いに行っていたが、相手より人数が少ないのでは前線のプレスは不可能だ。トップの細谷は深追いはせず、相手陣内に10メートルほど入った位置で相手を追いかけてパスコースを制限する作業を交代で退く88分まで続けた。

そして、中盤では藤田と松木の2人がよく守った。

藤田はそのボール奪取能力と奪ってからドリブルで持ち上がる能力を生かして最終ラインの負担を軽減させ、状況判断に優れた松木は苦しい場面では最終ラインに入っていたかと思えば、味方がボールを前に運べた時には最前線に飛び出すなど豊富な運動量でチームのバランスを支えた。

また、最終ラインも長身の選手が多い中国の攻撃陣をしっかりマークした。フィジカル能力の高い高井幸大は空中戦で競り負けることがなかったし、交代で入った木村もマークをはずさなかった。さらに、GKの小久保玲央ブランドンが素晴らしいセービングを連発。ハイボールにも適切なタイミングで飛び出してキャッチしたかと思うと、後半開始早々には日本が攻めに出て裏返され、相手の謝文能をフリーにしてしまった場面で果敢に飛び出してシュートをキャッチして見せた。

こうして、前半38分に陶強龍のシュートがクロスバーの下を叩く場面もあったが、日本は中国の攻撃をシュート10本に抑えることに成功した。

最後までハードワークを続け、割り切って守備に徹するという難しい戦いをアディショナルタイムを含めれば90分近く続けた選手たちは称賛に値する。

今回のU-23代表では多くの選手がJリーグですでにチームの主力として活躍している。そのため、「U-23代表の活動で選手を抜かれたことがJリーグを戦う各チームにとって痛手だ」と言われている。

Jリーグは、アジアで最も競技力の高いサッカーリーグだ。そのJリーグで主力として戦っている彼らは(アジアのレベルでは)選手としての完成度が高いと言っていい。90分を戦え終えた後、日本の選手たちが余裕のある表情を見せていたのがとても頼もしかった。

最近は、優れた選手が次々とヨーロッパのクラブに渡ってしまうが、その分、Jリーグに残った若い選手たちが出場機会を増やしている。それが、この苦しい中国戦で勝利をつかみ取った原動力になったのだろう。

さて、中国戦ではアクシデントによって守備的な戦いを強いられたが、退場の場面までは攻撃もよく機能していた。

8分に先制した場面も、右サイドでサイドハーフの山田とサイドバックの関根大輝にMFも絡んでパスを回し、最後は山田からペナルティーエリアのいわゆるポケットを取った関根にパスが渡り、相手が対応しようとしたところで関根から山田にボールが渡り、中国の陣形が崩れていたため、山田は狙いすましたクロスを上げ、長い距離を走り込んだ松木が左足ボレーで決めた。

多くの選手が絡んだ理想的な攻撃だった。

その後は、1人少なくなって中国の猛攻を受けて攻撃の形は作れなかったが、終盤に入って中国選手の足が止まり始めると、中盤でボールを奪って何度かカウンターのチャンスをつかんだ。

最大のチャンスは71分。一度は奪われたボールを交代で入ったばかりの佐藤恵允が再びカットして、そのままドリブルで持ち込んだ場面。その流れからゴール正面でFKを獲得し、松木がFKから無回転系のシュートで直接狙った。

佐藤は85分にも細谷がつぶれながらつないだボールをドリブルで持ち込んだが、最後のタッチが大きすぎてシュートできなかった。こうしたカウンターの場面で2点目を奪うことができれば完璧な試合だったのだが、とにかくこうした苦しい試合をチーム一丸で戦ったことで、チームの一体感はさらに増したことだろう。

さて、無事に白星スタートとなった日本としては、第2戦以降をどう考えるべきなのだろうか。

中2日で試合が続く厳しい大会だ。当然、ターンオーバーを使いながら戦うことになる。それができるところが日本の強みでもある。

では、第2戦では初戦とメンバーを変えるべきなのだろうか?

この大会で最も重要なのは準々決勝と準決勝だ。

第2戦でターンオーバーを使って韓国と戦ったとすると、その重要な準々決勝、準決勝まで選手にとっては3連戦となってしまう。できれば、第2戦でUAE(アラブ首長国連邦)に勝利して、その時点で準々決勝進出を決めてしまい、韓国戦では休ませる選手は休ませ、万全な状態で準々決勝に臨みたいところだ。

だが、中国戦ではピッチに立っていた選手たちは1人少ない分をカバーするために予想以上のハードワークを強いられた。従って、UAE戦ではメンバーを大きく変える必要があるのかもしれない。リカバリーの状況を見ながら、大岩監督以下のスタッフがどのように考えるのだろうか。

理想を言えば、ターンオーバーを使ったメンバーでUAEに勝利してグループ2位以内を決めてしまいたい。そうすれば、大会全体の流れを考えながら余裕を持って戦いを進めることができるのだが……。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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