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サッカー フットサル コラム 2024年3月26日

五輪予選前最後の試合で完勝したU-23日本代表。バランスの良い中盤がウクライナを封じ込める

後藤健生コラム by 後藤 健生
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松木玖生

松木玖生

3月22日の強化試合でマリに逆転負けしたU-23日本代表。中2日で迎えたU-23ウクライナ代表戦では90分にわたってゲームを支配して快勝。4月のU-23アジアカップ(パリ・オリンピック予選)に向けて最後の試合を良い形で終えることができた。

もちろん、ウクライナは良いコンディションではなかった(「若い選手は長距離移動に慣れていない」とルスラン・ロタン監督)。だが、相手との比較ではなく、日本チームのパフォーマンスが良かったことは間違いない。

マリ戦から改善された原因はいくつかある。

一つは、スピードを全面に押し出すマリと違って、ウクライナは基本的にはパスで崩してくるチームだったこと。こういう相手であれば、日本の前線からのプレッシングも効果を発揮するし、中盤でも優位に立つことができる。

そして、マリ戦からの反省も含めて、チーム内の意識統一ができたこと。集合してすぐ試合をしたマリ戦と違って、1試合実戦を戦い、トレーニングを通じてチームの目線が同じ方向を向いていた。

ウクライナは国外組があまり招集できず、フルメンバーというわけではなかったようだが、中盤の構成がしっかりした好チームだった(なにしろ、U-23EUROで3位に入ってオリンピック出場権を獲得したチームだ)。

ウクライナの中盤はイバン・ゼリズコをアンカーに置いた逆三角形がオリジナル・ポジションだが、右インサイドハーフのキリロ・シヘイエフは前線に飛び出してみたり、サイドバックが攻撃参加した時に後ろをカバーしたりと縦横無尽に動き回り、それに伴って陣形も変化する。右サイドバックのオレクシー・シチは、つねにタッチライン沿いで高い位置を取るだけでなく、時にはインナーラップして中盤に加わったりもする。

そうした相手の変化に対しては、しっかりとスカウンティングもできていたようだ。日本のMF陣は相手の変化に惑わされることもなく、しっかりと対応してウクライナのパス回しを阻止できた。

ボランチに入ったのは、マリ戦でも終盤に登場して能力の高さを見せた藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)と、マリ戦では出場機会がなかった松木玖生(FC東京)の2人。

松木は、78分に交代で退くまで好守のつなぎとして素晴らしいプレーを続けた。

藤田がアンカーとして後方に構えているから、松木は攻撃にも積極的に絡めたし、逆に松木という戦術眼のあるMFが存在するから、藤田も後顧の憂いなく攻撃に出られる。

とくに松木は、前半15分くらいまでには相手の中盤の中心がシヘイロフであることをしっかりと見抜いて、絶えずシヘイロフを意識しながらプレーしていた。このへんの戦術眼は大したもの。地味なプレーではあったが、勝利の立役者は松木だった。

藤田と松木の呼吸もしっかりと合っていたし、セカンドトップの荒木遼太郎(FC東京)も必要な場面では中盤での守備に加わるので、ウクライナの攻撃は無力化されてしまった。

中盤が安定したことの効果は大きかった。

中盤での守備でパスコースが限定されるので、最終ラインも狙いを絞りやすかったのだろう。相手のロングボールにも的確に対処し、危険な場面を作られることも少なかった。

一方、攻撃陣も中盤を支配できたので思い切ったプレーをすることが可能となり、前半の立ち上がりからチャンスを作り続けた。

佐藤恵允

佐藤恵允

攻撃陣で存在感を発揮したのは、やはり10番を付ける佐藤恵允(ヴェルダー・ブレーメン)。佐藤がしかけることによって、相手のストロングポイントであるサイドバックの攻撃参加を抑制する効果もあった。2点目は、バイタルエリアで佐藤が粘って、こぼれ球が田中聡(湘南ベルマーレ)に渡って生まれた。

後方からの“くさびのパス”を使って速い攻撃を仕掛ける形はマリ戦でも目立っていたが、ウクライナ戦でもセンターバックの馬場晴也(北海道コンサドーレ札幌)や藤田から良いパスが供給された。馬場も藤田も相手がプレッシャーをかけてきても、ちょっとボールを動かし、体の向きを変えることでプレスをはがすだけのテクニックを持っているので、余裕を持ってパスを供給することができた。

馬場晴也

馬場晴也

もちろん、ウクライナもシヘイロフやセンターバック・コンビからの長いボールを使ってチャンスを作る場面もあったし、馬場のミスを拾われてピンチを招いた場面もあった。

だが、強い雨が降りしきるコンディションを考えれば、テクニカルなミスは仕方のないこと。むしろ、試合中も強い雨が降り続いていたことを考えれば、ミスは最小限で防ぐことができた(これだけの雨でもピッチに水が浮くこともなかった。スタジアムの芝生の状態にも感謝しなければならない)。

完勝した日本代表に関して、強いて課題を探すとすれば、やはり決定力だろうか?

前半からチャンスをいくつも作ったものの、ゴールはなかなか生まれなかった。もちろん、シュート場面では体の大きなDFが寄せてくるので難しかったろうが、シュートが浮いてしまう場面が目立った。

後半の2ゴールはともに幸運な形ではあった。

先制点は、右CKからのボールをサイドバックながら187センチと長身の関根大輝(柏レイソル)がヘディングし、そのボールがゴールポストに当たったところを佐藤が詰めて頭で決めたもの。

76分の追加点は佐藤が入れたボールが相手DFに跳ね返され、その跳ね返りが飛び出してフリーになっていた田中に渡ったものだった。

田中聡

田中聡

ただ、1点目に関して言えば、左サイドを佐藤、荒木、細谷真大(柏レイソル)が完全に崩して荒木が放ったシュートをGKのキリル・フェシュンが弾いて獲得したCKだったし、2ゴール目にしても、日本が押し込んで連続してチャンスを作っていたからこそ、相手DFにコントロールミスが生まれたわけで、単なる幸運だけで生まれた得点ではなかった。

大岩剛監督は、ウクライナ戦ではマリ戦から先発を10人変更し、そして、2戦を通じてフィールドプレーヤー全員に出場機会を与えた。

相手も違えば、コンディションも違う2試合を観察してアジアカップに臨むメンバーを23人に絞り込むの大変な作業だろう。今回は海外組5人を招集できたが、アジアカップで誰を招集できるかは、所属クラブとの今後の交渉にかかっている。そして、さらに予選を突破した場合にはオーバーエイジの招集問題があるし、A代表でプレーする鈴木彩艶(シントトロイデン)や久保建英(レアル・ソシエダード)の扱いも考えなければならない。

しかも、今回はオリンピック予選に当たるU-23アジアカップが4月に開催されることになったため、予選を突破してから本大会に向けて準備する時間も少なくなるのだ。

オリンピック代表の監督というのは、本当に大変な仕事のようだ。

大岩剛監督

大岩剛監督

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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