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2023-24シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が開幕した。今シーズンから「秋春制」したACL。12月までにグループステージを終えて、決勝戦は来年の5月に予定されている。
中東諸国と同じ「秋春制」が採用されたことによって日本や韓国など「春秋制」を採用している国にとっては難しい大会となるが、準決勝までは東アジア勢同士の対戦ばかりなので、シーズン制の違いによるハンディキャップはそれほど大きくはない。
そして、決勝戦が行われる5月はJリーグが開幕して2か月経った頃で、チーム状態が良い状態で決勝を戦える(はずだ)。
さて、9月19日にはグループステージ第1節が開催され、マレーシアに遠征した川崎フロンターレはマルシーニョのオーバーヘッドによる1点を守り切ってジョホール・ダルク・ダクジムに勝利したが、ホームに韓国の仁川ユナイテッドを迎えた横浜F・マリノスは2対4で敗れてしまった。
この日の横浜FMはエウバルやアンデルソン・ロペスなど主力組を温存した。そして、仁川の快速FWに手を焼いて2度先行されるが、2度ともCKから得点してなんとか追いついてハーフタイムを迎える。そして、後半は攻勢を強めたが、どうしてもゴールを割ることができず、逆にカウンターから2点を奪われてしまった。
ボールを握って攻め込んではいたが、それが得点に結びつかず、ボールを失った瞬間の危機管理ができずに失点を重ねた。攻撃がうまくいかないので、選手たちは焦って好守のバランスを崩して攻めに出てしまう。そこを狙われたのだ。
最近の横浜FMの攻撃陣はチグハグな状態が続いている。自陣からアグレッシブにアップテンポなパスをつないで組み立てていくのが横浜FMだったが、最近は前線のブラジル人頼りの、いわば「戦術はアンデルソン・ロペス」的な状態なのだ。
攻撃がテンポが悪いので、守備にも綻びが出る……。悪循環である。
さて、仁川との試合、2対2で迎えた後半は勝負所だから「アンデルソン・ロペスやエウベルの登場か」と思ったが、ケヴィン・マスカット監督はとうとう最後まで主力を投入しなかった。
「Jリーグ優先」という姿勢を崩さなかったのだ。
横浜FMは8月末の横浜ダービーで横浜FCに1対4という衝撃のスコアで敗れ、柏レイソルにも0対2で完敗。ルヴァンカップ準々決勝のファーストレグでも北海道コンサドーレ札幌に敗れた(セカンドレグでは勝利して準決勝進出)。下位チーム相手の取りこぼしが続いたのだ。さらに、直近の第27節では87分にサガン鳥栖に先制され、90分の吉尾海夏のゴールで辛うじてなんとか勝点1を積み重ねた。チーム状態は最悪に近い。
それだけに、これからのJ1リーグの優勝争いに集中せざるをえず、ACLでは主力を休ませたかったのだろう。当然と言えば当然の決断なのだが……。
横浜FMのチーム状態が上がらず、第27節終了時点でヴィッセル神戸が首位に立っているが、しかし、神戸も第27節ではサンフレッチェ広島に0対2で敗れて、勝点の差はわずかに1ポイントに縮まった。9月29日の両者の直接対決(横浜FMのホーム)までに、横浜FMがどこまでチーム状態を上げて行けるかが注目点となる。
第27節では、3位に付けていた名古屋グランパスもアビスパ福岡に敗れて、いわば「上位陣総崩れ」となった。
そして、その第27節でセレッソ大阪との“死闘”を制した鹿島アントラーズが順位を3位にまで上げてきた。着実に順位を上げてきた鹿島には勢いがあるし、鹿島はACLの負担もないし、国内のカップ戦もすべて敗退しているので、Jリーグに集中できる。
「鹿島の逆転優勝」も、今後の注目点の一つと言っていい。
C大阪との試合は、まさに“死闘”だった。
前半の13分にC大阪のDF同士のパス交換を鈴木優磨がカットして先制したのだが、25分にはMFのディエゴ・ピトゥカが一発レッドで退場となり、以後、鹿島は1人少ない状態で戦うことになったのだ。
前半は、C大阪の攻めに迫力がなく、鹿島は相手にボールを持たせながらゴール前を固めて、無難に守って無失点で折り返す。
そして、後半になるとC大阪が攻勢を強めてきたのだが、鹿島の選手たちは体を投げ出してシュートをブロックし続けて「虎の子の1点」を守り抜いて勝利したのだ。
鹿島は岩政大樹監督の下で守備の組織の構築が進んでおり、また関川郁万が成長し、植田直通とのセンターバック・コンビは強力で、さらに昌子源も控えているのだ。そして、守備意識の高さ、あるいは勝負への執着という鹿島の伝統も守られている。
それを証明したのがC大阪戦だった。
また、特筆すべきは鈴木優磨の献身的な働きだ。先制ゴールを奪った鈴木は、退場者が出た後は守備でも貢献。プレスバックしてボールを奪い、相手のシュートやクロスを跳ね返し続け、さらにカウンターの起点にもなって勝利を手繰り寄せた。
ただ、攻撃面では鈴木への負担が多すぎる……。それが、昨年来の鹿島の1つの問題点だった。
だが、その鹿島に攻撃面を任せられる“助っ人”が帰ってきた。そう、柴崎岳である。2017年にスペインに渡って以来、6年半ぶりの帰還となる。
C大阪戦では、その柴崎が初めてカシマスタジアムのピッチに登場した。
しかし、C大阪戦では柴崎らしいプレーは見ることができなかった。1人少ないチームが1点のリードを守るという、難しい状況だった。柴崎は、攻撃的なパスを駆使する天才的なMFだが、守備面には脆さがある。それを意識したのか、柴崎はC大阪戦では堅実なプレーに徹していた。
コンディション的にも「まだまだ60%」という状態だったようだ。
コンディションは、これからどんどん上がっていくはずだ。そして、6年半ぶりとはいえ、古巣の鹿島なのだから、チームへの適応にも問題はない。相手陣内を切り裂く正確なパスを前線に付けるテクニックは超一流。柴崎の存在によって鈴木の負担を軽減できれば、鈴木の得点力がさらに上がるかもしれない。
鹿島は首位の神戸とも、2位の横浜FMとも直接対決を残している。それだけに、逆転優勝の可能性は大いにある。これから鹿島と当たる上位チームにとっては、柴崎の加入というのは、さぞかし不気味に感じられることだろう。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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