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6月28日にJ1リーグ第12節の延期分、浦和レッズ対湘南ベルマーレの試合が行われた。
6月に入ってからの5試合で、浦和が勝利したのは天皇杯2回戦の関西大学戦のみ。リーグ戦およびルヴァンカップでは4試合がすべて引き分けに終わっていた。しかも、その4試合で得点は2点だけと得点力不足が課題となっていた(ちなみに、勝利した関西大学戦もスコアレスのまま延長に入っての1対0の勝利だった)。
しかし、6月最後となった湘南戦は4対1の快勝。勝点3を積み重ねた浦和はこれで消化試合数も他チームと並び、首位の横浜F・マリノスに勝点6の差まで接近し、「逆転優勝」に望みをつないだ。しかも、湘南戦では4ゴールを決めた。「得点力不足」解消のきっかけにしたいところだ。
湘南戦は早い時間(前半20分)に興梠慎三が決めてスコアが動いた。
ハーフラインの手前の岩尾憲から左サイドに斜めの深いボールが入ると、走り込んだ左サイドバックの大畑歩夢が見事なワンタッチで・コントロールでボールの勢いを殺すことなく持ち込み、大畑からのクロスに合わせた興梠が落ち着いて決めた。
その後も浦和がボールを握り、長短のパスをバランスよく繰り出し、選手たちはダイナミックに動き続けた。ここで、浦和が1点を追加できていれば、ゲームはあっさりと終わっていたはずだ。
ところが、1点をリードした浦和はフィニッシュ段階でのプレーが雑になってしまった。
得点力不足解消のために、マチェイ・スコルジャ監督は得点意識を高めるような働きかけをしていたのだという。そのため、選手たちはボールを持つと素早くパスを前線につけ、また自分たちもよく動いて崩しを狙っていた。
だが、「得点意識」が高くなった分、逆に「攻め急ぎ」や「強引さ」が目立ってしまったのだ。
こうして、浦和がもたつく間に湘南は落ち着きを取り戻し、中盤から激しくプレッシングをかけて盛り返す。そして、後半が始まってすぐの53分に湘南が大橋祐紀のゴールで追いつく。
湘南に追いつかれた浦和の選手たちの反応が注目されたが、その後、浦和は3得点を加えて“快勝”した。同点とされたことで、集中が戻ったのかもしれない。
「決定機をはずす場面が多くても4ゴール取れたのなら、それはそれで嬉しい」とはスコルジャ監督のコメントだ。
61分に正面やや左サイドで伊藤敦樹からのパスを受けた関根貴大がシュートフェイントを入れながら正面までドリブルで運んで、最後は狙い済ませて右のゴールポスト内側に当たるコントロール・ショットを決めて勝ち越し。さらに、65分には右サイドから持ち込んだ大久保智明のクロスを走り込んだ関根貴大が落ち着いて決めてこの日2点目。前節(第18節)川崎フロンターレ戦で50メートルのロングシュートを決めていた関根は、2試合で3得点を決めたことになる。
そして、90+2分にはホセ・カンテがダメ押しの4点目を追加した。
今シーズンの浦和は日本代表入りも果たしたMFの伊藤(24歳)をはじめ、安居海渡(23歳)、さらには早川隼一(17歳)など若手の台頭が目につく。だが、この日の湘南戦で頼りになったのはやはりベテラン勢だった。
若手アタッカーたちが雑な攻めを繰り返す中で冷静にゴールを決めた興梠(36歳)と関根(関根ももう28歳)。中盤でタクトを振るい、伊藤に攻撃参加のチャンスを与え、セットプレーではプレースキックも蹴る万能のMF岩尾憲(35歳)。さらには、右サイドバックとしてダイナミックな上下動を繰り返した酒井宏樹(33歳)などだ。
酒井は前節出場停止だったことで体が軽かったのか、90分間フル出場。関根が決めた3点目の場面で、大久保のクロスに対してニアサイドで猛然と走り込んで関根のためにスペースを作ったのは腕にキャプテンマークを着けた酒井だった。
若手の活躍も目立つが、現在の浦和を支えているのはDFのアレクサンダー・ショルツとマリウス・ホイブラーテンの2人であり、そして、各ラインにちりばめられているベテランであるのは間違いない。
J1リーグで活躍するベテランといえば、首位争いの渦中にあるヴィッセル神戸の大迫勇也(33歳)と武藤嘉紀(間もなく31歳)も忘れてはならない。
先週末、6月25日に行われた第18節のアビスパ福岡戦でも、2人だけで3ゴールを奪って勝利を決めた。
1点目は相手のパスをカットした大迫が右サイドの武藤に預けて、折り返しをワンタッチで決めた見事な得点。高い位置でプレスをかけてボールを奪うと、互いに信頼し合ったこの2人だけで簡単に相手陣内深くまでボールを運べるのだ。
今シーズンのJリーグでは、若手FWの町野修斗(湘南)と細谷真大(柏レイソル)に期待が集まっていた。昨年、J2リーグで爆発した小川航基(横浜FC)も注目された。
だが、得点王争いでアンデルソン・ロペス(横浜M)が13ゴール、大迫が12ゴールを決めているのに対して、町野は8点で追いすがっているが、小川は6点、細谷は5点に留まっている。
一方、日本代表の6月シリーズではFWとして上田綺世と古橋亨梧が起用されたが、日本が大量得点した2試合を通じてともに1得点のみで物足りなさが残った。従って、現時点で日本最高のストライカーが大迫であるのは間違いない。
同様に、日本代表では右サイドバックとしては菅原由勢が定着しつつあるが、酒井宏樹のダイナミックなプレーを見れば、彼が今でも日本最高のSBであることは間違いない。
日本代表の森保一監督は3年後のワールドカップを見据えて世代交代を進めている。カタール・ワールドカップが終わって以来、吉田麻也前主将をはじめ、長友佑都、酒井宏樹、大迫勇也といった30歳を越えた選手は招集されていない。谷口彰悟の31歳(7月で32歳)が最年長である。
森保監督は「ワールドカップが迫っても若手が育っていなかったらベテランを復帰させよう」と考えているのだろうが、果たしてどの時点でベテランを呼び戻すつもりなのだろうか? あるいは、その“つもり”はないのか? 順当に考えれば、ワールドカップ1年前くらいの時点がリミットのように思える。
では、2024年1〜2月のアジアカップはどう考えるのか?
この大会でどうしても優勝を狙うのであれば、9月のヨーロッパ遠征からりベテランの復活=最強チームの編成に踏み切るべきだろう。だが、「アジアカップは若手の成長のための大会」と割り切るのであれば、同大会は若手やJリーグ勢を中心に戦うことになる。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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