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チームが纏う一体感はシーズン初勝利への大事な鍵!柏レイソルU-18×市立船橋高校マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグEAST第3節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史
柏レイソルU-18と市立船橋高校。同じ千葉県に居を構える両チームが激突する今節の一戦。どちらもリーグ開幕から3試合目にして、今シーズン初勝利を狙いに行くという点は一致している。
柏U-18の開幕戦はショッキングな90分間だった。ホームゲームにも関わらず、前半に相手のストロングとして警戒していたCKから2失点を献上すると、後半にも3つのゴールを奪われ、0-5というスコアでの大敗。前節はチームにとって、いきなりの正念場を迎えることになる。
酒井直樹監督の不在に伴い、昌平高校戦の指揮を任された藤田優人コーチは、この試合に向けての1週間で意識してきたことを問われると、シンプルな言葉を口にした。「練習から特に何かを大きく変えたわけではないですけど、まずは選手が良い顔をしてプレーできるようにモチベートしたというだけですね」。
“良い顔”というのは、面白い表現だ。それは「生き生きとサッカーを楽しんでいる顔」とでも言い換えられるだろうか。確かに青森山田戦は失点を重ねるたびに、チームの雰囲気がしぼんでいく様子は、映像で見ていた画面上からも見て取れた。まずは選手たちが表情から明るくなるように、スタッフ陣は彼らの“心”に働きかけたのだ。
試合会場となった昌平高校グラウンドのピッチの外を、黄色いウェアに身を包んだ選手たちがぐるりと取り囲んでいた。柏U-18はこの日の試合のメンバーに選ばれなかった選手たちもアウェイの地に集結し、ピッチの中で何とか現状を打破しようと必死に身体を張る仲間へ、声援を送り続けていた。
その光景の意義を、藤田コーチはこう語っている。「改めて確認したのは戦術的なところよりも、『輪になるというか、1つになろう』と。『サッカーはチームスポーツなんだから、1+1を3だったり4だったり、そんなふうにできるようにしようよ』という話をしました。今日は非常に外からの声援も選手の力になったと思いますし、いいチームになってきたなと思います」。
試合は1-1のドロー。勝利には届かなかったものの、ピッチの中でも、ピッチの外でも、柏U-18の選手たちは、間違いなく戦っていた。「前節と別人というか、物凄くファイトしてくれて、見ていて気持ちが良かったですし、僕自身も感心したというか、勇気付けられましたし、逞しくなったなと思います。もともとそういったファイティングスピリットは持っている子たちなので、これが本来あるべき姿だと思いますし、選手たちもそう感じていると思うので、続けていきたいなと思います」という藤田コーチの言葉にも頷けるような、太陽王子たちが発していた一体感が印象的だった。
市立船橋の開幕節は大宮アルディージャU18とアウェイで対峙。先制を許しながら、いったんは逆転まで持っていくも、終盤に同点弾を許して2-2のドロー決着。勝ち点1を携えて、前節のホーム開幕となる第一カッターフィールドでの試合に挑む。
彼らはホームゲームの恒例として、試合に臨むメンバーとスタッフを、メンバー外の選手たちが列を作って出迎え、ハイタッチで鼓舞するという“儀式”を行っている。柏U-18戦もその流れに則っていたのだが、一昨年や昨年にも増して出迎える側の選手たちがとにかく元気。最後に現れた波多秀吾監督に対しても、果敢に向かっていくヤツまでいて、見ているこちらも非常に楽しかった。
試合中もスタンドの選手たちからは、ピッチの選手たちを鼓舞するチャントが響き渡り、その周囲には保護者も含めて、市立船橋を応援しに来た方々がその声に呼応して、拍手を送る。コロナ禍に覆われたここ数年ではなかなか見ることのできなかった光景が、この日の会場には確かに帰ってきていたのだ。
「ホームですし、これだけたくさんのお客さんが見に来てくださったことはありがたいなと。選手の応援もだいぶ久々で、たぶん今までやったことがなかったので、ちょっと間違えていたりしていましたけど(笑)、少しずついろいろなことが元に戻っていく中で、チーム一体となって、地域の人を巻き込んで、ということができたらなと思っています」とは波多監督。その感想こそ、サッカーを取り巻く環境が再び元に戻りつつあることを如実に物語っている。
試合は2-2のドロー。勝利には届かなかったものの、ピッチの中でも、ピッチの外でも、市立船橋の選手たちは、間違いなく戦っていた。「今はどのカテゴリーもみんな1つになってくれているので、誰一人欠けてはいけない存在だと思っていますし、誰も腐っていく選手もいないのは今年の特徴ですし、目標に向かって1つになれる本当に良いチームかなって。近年は市船も結果を残せていないですし、もう1回市船の力を全国に示さないといけないので、先輩方が築いてきた伝統も守りつつ、自分たちで新たな歴史を作っていく意味でも、しっかりといろいろな新しいことにチャレンジしながら、強い市船をもう一度取り戻したいと思います」と話したのは、2年生だった昨年からキャプテンを託されてきた太田隼剛。今年のチームが持っているエネルギーは、確実に彼らを前へ、前へと進めていってくれることだろう。
これまでに失われたものを嘆くより、ここから得られるものを築き上げていく。まだシーズンは始まったばかりではあるが、両チームが確かに纏ってきている一体感は、今季のリーグ戦初白星を手繰り寄せる上で必要不可欠。この一戦はピッチ内での躍動はもちろん、ピッチ外での献身にも、是非注目してみてほしい。
試合前の“儀式”に臨む市立船橋・波多秀吾監督
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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