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コロンビア戦スターティングメンバー
2026年ワールドカップを目指して森保一監督の下で再スタートを切った日本代表だったが、ウルグアイと引き分け、コロンビアには逆転負けというほろ苦い結果となった。結果だけではない。内容的にもほとんど見るべきところのない試合だった。
なにしろ、シュート数がウルグアイ戦では4本、コロンビア戦では5本に終わったのだ。“拙攻”というしかない。
それも、相手にボールを握られ続け、押し込まれた試合だというなら理解できる。たとえば、昨年6月に東京・国立競技場でブラジルと対戦した試合がそうだ。
だが、今回はの試合展開はブラジル戦とは違った。
コロンビア戦 開始3分 三苫薫がヘッドで先制ゴール
コロンビア戦では、3分にロングクロスに合わせた三笘薫が頭で先制ゴールを決めた。そして、20分を過ぎるころからは日本がボールを握る時間が長くなった。しかし、日本の選手たちは中盤でボールを回すばかり。前線にくさびのボールを入れても、打開できないとすぐに最終ラインまでボールを下げてしまう。
そんな繰り返しではゴールを奪えるわけもない。チャンスらしきものができたのは右サイドで伊東純也が仕掛ける場面だけで、先制ゴールを決めた三笘もその後はほとんど見せ場を作れなかった。
右サイドで伊東純也が仕掛けチャンスを作る
なぜ、攻撃が停滞してしまったのだろうか?
直接的には、日本の生命線であるスムースなパス回しが実現できなかったことが原因だ。
コロンビアは、先週の金曜日に韓国代表と戦って2対2で引き分けているが、試合後の記者会見で日本と韓国の比較について質問されたコロンビアのネストール・ロレンソ監督はこう答えた。
「韓国の方がコンビネーションがよかった。日本は個人能力が高くて1対1で強かった」
これまでの日本と韓国のサッカーの歴史に詳しい人だったら、「えっ、逆でしょう!」と思うだろう。
フィジカルや精神力を武器とするのが韓国サッカー。一方、日本にはテクニックがあり、パスをつないでコレクティブに戦ってきたはずなのだ。
つまり、相手の監督にそう思わせるほど、日本代表のコンビネーションが悪く、個人で勝負するしかなかったということなのだ。
では、どうしてそういう状態になってしまったのか?
最大の原因は、守備陣からのサポートがなく、前線が孤立してしまったことだ。
サイドハーフの選手が活躍するにはサイドバックとのコンビネーションが必要だ。後方から良いタイミングでパスが送られたり、サイドバックの選手が追い越す動きをしたり、あるいはサイドハーフがライン沿いでボールを持った時にはサイドバックがインナーラップしてチャンスを広げる……。
ところが、今回の日本代表は守備陣に代表経験の浅い選手たちが並んでいた。
昨年のワールドカップでは、前線では若い選手が多かったのに対して、DFでは吉田麻也主将や長友佑都、酒井宏樹などベテランが中心だった。だから、3年後を目指しての再スタートとなった今回のキリンチャレンジカップでは、森保監督は彼らを招集しなかったのだ。
その結果、前線にはワールドカップ経験者が並び、最終ラインとGKには若い(経験の浅い)選手が並ぶという構成となった。
それでも、守備面では若い選手たちは頑張った。
ウルグアイ戦ではレアル・マドリードのフェデリコ・バルベルデにゴールを決められたが、その他にはウルグアイに大きな決定機は作らせなかった。日本は4本しかシュートを放てなかったが、逆にウルグアイのシュートも8本に抑えたのだ。
しかし、若いDFたちは守備で頑張ったものの、攻撃のサポートまでは手が回らなかった。
ウルグアイ戦で左サイドバックに起用された伊藤洋樹は三笘との連携を構築しようとさまざまな工夫はしていた。試合が途切れると2人が話し込む場面もあった。だが、あまり効果的なサポートができず、結果として三笘は孤立してしまった。
右サイドの菅原由勢は前半の22分にビッグチャンスを生むスルーパスを出した。鎌田大地からのパスを受けた菅原が、前線のスペースにワンタッチでグラウンダーのパスを通すと、同じスペースを見て走り込んだ浅野拓磨が呼応した。シュートは枠を捉えなかったが前半最大の決定機だった。
鋭いスルーパスを見せた菅原由勢
菅原はコロンビア戦の前半にもやはり鋭いスルーパスを見せたが、その回数は少なかった。
ただ、攻撃のサポートに関しては、代表経験が浅い選手たちにとっては過大な要求と言うべきかもしれない。試合を重ねることによって余裕が生まれ、攻撃陣との関係性が生まれることを期待するしかない。
攻撃がスムースでなかったもう一つの原因は、前線の選手たちのコンディションが良くなかったことだ。ウルグアイ戦を欠場した久保建英はコロンビア戦も30分限定となったが、やはり良い状態ではなかったようで、久保には珍しくボールタッチのミスもあった。
三笘も、サイドバックからのサポートを得られなかっただけでなく、本来の動きからはほど遠かった。さらに、ウルグアイ戦ではトップ下に、コロンビア戦ではボランチでプレーした鎌田もコンディションが悪く、ボールロストが多すぎた。
ワールドカップに出場した選手たちには、それまでの代表活動で相当の疲労がたまっていたはずだ。そして、ヨーロッパのシーズンが終盤に差し掛かり、所属チームで順位争いや残留争いに巻き込まれている選手も多い。
そんな中で日本までの長距離移動を強いられて、コンディションが上がらなかったのかもしれない。さらに、ワールドカップを終えて気持ちが緩んでいても不思議はない。
今回の代表の活動について「ワールドカップではカウンター・サッカーで勝てたが、次の大会では自分たちでボールを動かして戦えるように新しい戦術に挑戦する」としきりに言われている。
たしかに、ボールを握ってビルドアップするサッカーにトライしているのは間違いない。
浅野拓磨に指示を伝え、ピッチに送り出す森安一監督
だが、そもそも森保監督は2018年に監督に就任して以来、カウンター・サッカーを目指してチームを作ってきたわけではない。ワールドカップではドイツやスペインとの戦力を比較して、勝利の確率が上げるためにあのような戦いを選択しただけなのだ。
だから、「ボールを動かすサッカー」というのはけっして新しい試みではない。
だが、“戦術好き”が多い日本では「新しい戦術に挑戦」というところに注目が集まってしまった。その影響だったのかは分からないが、ウルグアイ戦、コロンビア戦を通じて選手たち自身がポゼッションやビルドアップに固執しすぎた印象も強い。
どんなサッカーを目指していようと、チャンスがあるならシンプルに速い攻撃を狙うべきだ。実際、ウルグアイ戦の得点は、伊東がドリブルで持ち込んだカウンターだったし、コロンビア戦では右サイドからの守田英正のロングクロスが三笘の得点につながった。つまり、速攻で得点が生まれているのだ。
三苫薫のゴールに歓喜のスタジアム
ボールを保持してビルドアップしてゲームを組み立てるのは当然として、相手陣内にスペースがあるなら速攻やスルーパスで勝負すべきだ。ビルドアップとカウンター、両者を使い分けるのが理想なのだ。
日本代表の次の活動は6月の親善試合だ。
その時には、すでにヨーロッパのシーズンは終了しており、準備期間も今回よりは長く取れるはず。海外組の選手たちも日本代表に集中して、もっと貪欲に勝利を目指してほしいものである。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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