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13戦無敗のその先へ。進撃の止まったクリムゾンレッドに問われる底力【高円宮杯プレミアリーグWEST ヴィッセル神戸U-18×名古屋グランパスU-18マッチレビュー】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史寺阪尚悟
続けてきた無敗の進撃が13でストップした試合後。ヴィッセル神戸U-18のキャプテンを任されている寺阪尚悟は、それでもはっきりと言い切った。「もう他力ではありますけど、そこは自分たちを信じてやるしかないので、絶対にあと2勝できるように、全員で前だけを向いてやっていきたいなと思います」。
現在は優勝争いを繰り広げている神戸U-18だが、決してシーズン序盤から結果が付いてきたわけではない。開幕戦こそガンバ大阪ユースに4-0と快勝を収め、最高のスタートを切ったものの、第2節からはまさかの3連敗。その3試合で重ねた失点は10を数え、守備面には明確な課題を抱えていた。
チームはその部分の改善に着手する。「普段の練習から守備だけの練習というのをやるようになりましたし、練習前にもかなりミーティングをするようになって、前日の練習のビデオを見て守備ラインを揃えることもありました。映像を見た方がわかりやすいですから」と話すのは寺阪。映像からフィードバックされた細部を、日々の練習から綿密に詰めていった。
左サイドバックの村井清大の証言も興味深い。「まず最終ラインの4枚でコミュニケーションが取れているというのが、1つの良いところかなと思います。ラインコントロールもそうですし、ポジショニングがズレていたとしたら、お互いに見えている選手が喋るということを約束事にしています」。右から本間ジャスティン、横山志道、寺阪、村井で組む4バックは不動。連携も日を追うごとに深まっていく。
チームスタイルの微調整も見逃せないポイントだ。11年間に渡って指揮を執っていた野田知前監督の退任を受け、安部雄大監督がコーチから昇格。寺阪が「去年は『繋いで、繋いで、繋いで』ということが多かった反面、球際でやられる部分もあった中で、今年は練習から1対1の強さも監督が要求してくれているので、全体的に激しさが増していて、そういう部分で僕らも応えられていますし、1対1で負けないというのが結構大きいと思います」と、本間も「自分たちは1対1で負けないことをベースにしていますし、むしろ1対1で勝つのは当たり前だと捉えているので、そういう部分で負けていない手応えはあります」と声を揃えて『1対1の強さ』の進化を強調する。
加えて、「球際では絶対に負けないということがチームの決まりごとの1つなので、そこはみんなが厳しく行けるようになったと思います。監督は怒ると怖いですけど、自分たちがやることをやれば褒めてくれますし、みんな褒められたら伸びるタイプなので(笑)」と笑うのは村井。この言葉からも選手たちと指揮官の信頼関係が窺える。
ドイスボランチの一角を務める中盤のキーマン、安達秀都も守備面の改善を口にする。「負けが続いた時は複数失点するような負け方が多かったんですけど、負けなしが続き始めたら、ゼロで終われる試合も増えて、失点の数は明らかに減ったので、そこが負けていなかった要因かなと思います。守備が圧倒的に良くなりましたね」。
冨永虹七
開幕6試合で14失点を喫していたが、無敗が始まった第8節の清水エスパルスユース戦以降は、13試合でわずかに11失点。そのうち7試合でクリーンシートも記録するなど、確かな成長は数字が雄弁に物語る。その中で身に付けてきた勝負強さに言及するのは、チームトップスコアラーの冨永虹七だ。
「無敗の時には悪い試合もあったんですけど、負けるまで行かないというか、悪い内容の中でも勝ったり、引き分けまで持ち込んだり、負けないことに対しての執念というか、『絶対に負けない』という気持ちは大きかったですね」。ストライカーの言葉を聞くと、目の前の試合を丁寧に重ねたことで、気付けば13戦無敗という数字が付いてきたというところが正直な流れだろうか。
この日の名古屋グランパスU-18戦は先制したものの、後半に2点を奪われての逆転負け。「今までの僕たちの勝ちパターンとしても、先制点を獲って、しっかり守ってゼロで抑えて、追加点を獲って勝つということが多かったんです」と寺阪が語れば、「自分たちが先制する試合は勝つことが多いんです」とは冨永。勝ちパターンに持っていけるはずだった展開の中、まさかの逆転負けで14試合ぶりの黒星。勝ち点で並んでいた首位のサガン鳥栖U-18へ、プレッシャーを掛けることには失敗した。
だが、神戸U-18にはまだ“2試合”が残されている。第5節延期分の東福岡高校戦が11月30日(水)にスケジューリングされたことは、彼らにとっての小さくないアドバンテージ。この試合で勝点3を獲ることができれば、鳥栖U-18とまったく同じ40ポイントで並んだ状態で、運命の最終節を迎えることとなる。
「ラスト2試合は絶対勝ちたいですし、得失点差も稼がないといけないので、フォワードとして複数得点して、チームを勝たせられるように頑張ります」(冨永)「厳しい前半戦を経たことでファイナルは見えてきたものなので、それを掴み取ろうとしか思っていないです」(本間)「残り試合は自分がチームを勝たせてファイナルへ連れていけるように、もっと来週の練習からもっと生き生きとしたプレーができるように、心を入れ替えてやろうと思っています」(村井)。
長かったシーズンも、いよいよ最終局面。神戸U-18か。鳥栖U-18か。プレミアWESTの覇権の行方は果たして。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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