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サッカー フットサル コラム 2022年11月17日

明らかになった等々力競技場再整備計画 Jリーグの将来のために必要なのは専用スタジアム

後藤健生コラム by 後藤 健生
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横浜F・マリノスと川崎フロンターレが最終節まで優勝争いを繰り広げてくれたおかげでJ1リーグは大いに盛り上がり、「声出し応援」が復活したこともあって、終盤戦にはJリーグらしい雰囲気が戻ってきた。

第33節に横浜のホーム最終戦が行われた日産スタジアムには4万6387人もの観客が入り、この節の観客動員数は22万0832人に達し、1試合平均でも2万2083人と2万人を超えた。

最終節は横浜と川崎の試合がともにアウェーだったこともあって第33節より数字は減ったが、それでも17万2445人を動員。平均は1万9000人を超えた。

J1リーグの観客動員数は2019年には635万人近くに達し、平均でも2万人を大きく超えた。ところが、その翌年には新型コロナウイルスの影響でリーグ戦が一時中断。再開後も無観客開催を強いられて動員数は大幅に減少してしまう。そして、パンデミックもようやく峠を越えた2022年の終盤戦に観客動員数がようやく元に戻ってきたのだ。

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来シーズン以降も1試合平均観客動員数2万人台回復が一つの目標になるだろう。

観客動員数が増えれば試合自体も盛り上がる(無観客や声出し禁止を経験したことによって、そのことはいっそう強く感じるところだ)。観客が増えれば、入場料収入だけでなく広告収入やマーケティング収入も増え、各クラブの経営が安定。チームの強化や若手選手の育成も進み、競技レベルはさらに上がっていく。

そのようにしてリーグ全体が発展していけば、Jリーグの競技レベルはヨーロッパのトップリーグに近づけるだろうし、そうなれば日本のトップクラスの選手が軒並みヨーロッパのクラブに流出するような事態も避けられる。また、アジアや南米などから将来ヨーロッパの舞台を目指すクラスの選手がJリーグで経験を積んでステップアップにつなげようと考えるようになれば、ハイレベルの外国籍選手がJリーグでプレーするようになる。

そうしたことを考えれば、いずれは平均入場者数を2万人台から3万人台へと増やしていきたいものである。

そのために必要なのが、スタジアムの整備である。

ドイツでは20世紀末から21世紀の初めにかけて近代的なスタジアムが整備された。ドイツでは、ほとんどのスタジアムはクラブではなく、市などの地方政府が所有している。そのため、かつてはスタジアムのほとんどが陸上競技との兼用スタジアムだった。1974年に西ドイツでワールドカップが開催された時、サッカー専用だったはドルトムントのヴェストファーレンシュタディオンだけだったが、2006年に再びドイツでワールドカップが開かれた時には、陸上競技との兼用スタジアムはたったの2つだけ(ベルリンとニュルンベルグ)となっていた。

この時期にスタジアムが近代化されたことによってブンデスリーガの観客動員数は飛躍的に伸び、1990年代初頭には平均2万人程度(つまり、現在のJ1リーグをやや上回る数字)だったブンデスリーガは今では世界で最も多くの観客を動員するリーグとなっている。

近代的なサッカー専用スタジアムが、どれだけ試合が見やすく快適な環境であるのか・・・。それは、最近日本に建設されたいくつかのスタジアムを見ればすぐに理解できる。

たとえば、亀岡市に建設された「サンガスタジアムby KYOSERA」(京都府立京都スタジアム)。JR山陰本線の亀岡駅からすぐという立地も素晴らしいが、スタンドからピッチまでの距離が短く、試合が本当によく見えるし、売店やトイレなどへの導線も工夫されていて各所で快適さが感じられる。

それより少し前に完成したパナソニック・スタジアム吹田(市立吹田サッカースタジアム=大阪府吹田市)なども専用スタジアムの素晴らしさを感じることができるスタジアムだ。

サンガスタジアムとパナスタだけでなく、関西圏には2002年ワールドカップを前に建設された兵庫県神戸市のノエビアスタジアム(御崎公園球戯場)やセレッソ大阪が整備した「ヨドコウ桜スタジアム」(長居球技場=大阪市)など、Jリーグクラブが使用しているサッカー専用スタジアムがいくつも存在している。

収容人員は2万人から4万人程度。大きすぎもせず、小さすぎもせず、Jリーグのホームに相応しい手ごろなサイズ感なのもいい。

ところが、首都圏にはこうした専用スタジアムが少ないのである。

じつは最近の6年間、J1リーグのタイトルは横浜と川崎という神奈川県の2チームが分け合っている。神奈川県内にはそのほかにもJ1残留を決めた湘南ベルマーレ、J2リーグで準優勝してJ1昇格を決めた横浜FC、さらにJ3で戦っているSC相模原やYSCC横浜と、なんと6つものクラブがJリーグで戦っている。そして、東京都や埼玉県、千葉県など首都圏にも多数のJクラブが存在しており、Jリーグは“東高西低”と言っていい状況にある。

だが、スタジアムという面に限って考えると、サッカー専用スタジアムは圧倒的に関西に多いのだ。

首都圏のサッカー専用スタジアムと言えば、浦和レッズのホーム、埼玉スタジアム2002(埼玉県さいたま市)以外は、ジェフ市原のホーム、フクダ電子アリーナ(蘇我球技場=千葉市)や横浜FCがホームとして使用しているニッパツ三ッ沢球技場や大宮アルディージャのNACK 5スタジアム大宮(さいたま市大宮公園サッカー場)のような小規模なスタジアムしか存在しないのだ。

首都圏にある大規模スタジアムは東京オリンピックのために改築された国立競技場をはじめ、日産スタジアム(横浜国際総合競技場)、味の素スタジアム(東京スタジアム=東京都調布市)、レモンガススタジアム平塚(平塚競技場=神奈川県平塚市)など陸上競技場との兼用ばかりだ。

首都圏と関西でこうした違いが生まれたことには、首都圏のスタジアムが“官主導”で建設されたものであるのに対して、関西のスタジアムは“民間主導”で造られたという背景がある。

国立競技場は、国がオリンピック開催のために建設したものだし、日産スタジアムや味の素スタジアムは神奈川県や東京都がそれぞれ国民体育大会(現、国民スポーツ大会)のために建設したスタジアムなのだ。

それに対して、関西のサッカー(球技)専用スタジアムは所有者は市や府であっても、民間企業が主導して、資金調達も民間企業が中心となって建設されたものなのだ。民間主導であれば、収益性が重視されるため、使い勝手の良いスタジアムが完成する。

一方、“官主導”の場合は公平性が重視されるため、サッカー専用でなく陸上競技との兼用が多くなり、サッカーの試合には使い勝手の悪いスタジアムとならざるを得ない。

そんな中で、11月初めには川崎フロンターレの本拠地、等々力陸上競技場の再編整備事業について「東急を中心とする企業グループが落札した」と発表された。

首都圏で初めての“民間主導”でのスタジアム整備がスタートするわけである。計画によれば、現在の陸上競技場は3万5000人程度のサッカー(球技)専用スタジアムに改築され、現在のサブグラウンドにスタンドを建設して中規模の陸上競技場とするという。

Jリーグをリードする存在である川崎フロンターレに相応しい新スタジアムの完成が待ち遠しい。そして、これをきっかけに首都圏にも同様のサッカー専用スタジアムが増えていくことを期待したいのだが・・・。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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