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日本代表
カタール・ワールドカップに出場する日本代表のメンバーが、Jリーグの最終節終了を待たず、11月1日に発表されることが正式に決まった。
先日、ドイツのデュッセルドルフで行われたアメリカ、エクアドルとの準備試合を通じて森保一監督の気持ちもかなり固まってきているのではないだろうか。
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ポジション別に考えてみよう。
デュッセルドルフでの2試合でGKとして起用されたのは2名だけだった。アジア予選を通じて日本ゴールを守り続けてきた権田修一がアメリカ戦で先発。試合中に背中から落ちて負傷した権田に代わってゴールを守ったのがシュミット・ダニエルだった。そして、シュミットはエクアドル戦でも先発。後半のPKストップも含めて大活躍してアピールに成功した。
GKではこの2人の招集は確実。「第3GK」として経験豊富な川島永嗣が選ばれるのか、将来性を考えて若い谷晃生が選ばれるのかが焦点だ。
チームの“核”となるのはセンターバックの吉田麻也と冨安健洋。冨安は、このところ所属のアーセナルで出場時間が少なかったので心配だったが、アメリカ戦ではフル出場。後半はサイドバックでもテストされたが、コンディションはまったく問題なさそう。
この2名のCBに加えて、ボランチの遠藤航と守田英正の2人も素晴らしいパフォーマンスだった。とくに、今季からスポルティングに移籍してチャンピオンズリーグでも結果を残している守田の成長ぶりは著しい。
アジア予選では、4−3−3(森保監督は「4−2−4−1」と表現する)システムで勝ち抜いた日本代表だったが、デュッセルドルフでの2試合は4−2−3−1で戦い、ゲームの終盤でDFを増やす形をテストした。本大会でも4−2−3−1で戦うちもりなのは間違いない。
そして、4−2−3−1のトップ下には鎌田大地が入ってしっかりと結果を残した。
鎌田は所属のフランクフルトでの好調さを代表でもしっかりと示した形。むしろ、「好調の鎌田を使うために4−2−3−1を採用したのではないか」と思わせるような出来だった。
CBの2人とボランチ2人。そして、トップ下というチームの“中心軸”が肯定されているのは頼もしい限りである。
この“軸”は固定したうえで、両サイドとワントップではさまざまなタイプの選手を使い分けることになる。
サイドバックの右サイドは酒井宏樹で決まり。負傷明けで心配されていたが、アメリカ戦では45分だけだったが、その実力を見せつけた。ヨーロッパのクラブで長くプレー。とくにフランス時代にはマルセイユでは怪物級の個人能力を持つウィンガーと対峙した経験が豊富であり、ワールドクラスのアタッカーとの戦いでは頼りになる。しかも、酒井は高さもあるので空中戦でも大きな戦力になる。
一方、絶対の存在が不在なのが左サイドバックだ。9月シリーズではアメリカ戦は中山雄太、エクアドル戦は4度目のワールドカップを目指すベテラン長友佑都が起用された。また、エクアドル戦でセンターバックでプレーした伊藤洋樹も左サイドバック候補の1人だ。
このあたりは、対戦相手によって使い分けるべきだろう。
たとえば、空中戦で強さを持つドイツとの試合では中山や伊藤。そして、高さはないがサイドからのドリブル突破が武器のスペインに対しては長友といったように、相手のタイプによって使い分ければいい。エクアドル戦を見ても、粘り強い守備でドリブル突破を許さない長友の守備力は健在。ただ、年齢も高い長友を全試合で使い続けることは難しいだろうから、やはり相手のタイプを見ながら負担を分け合って戦うべきだろう。
両サイドアタッカーもさまざまなタイプの選手がいる。
アメリカ戦では右に伊東純也、左に久保建英が先発だったが、印象的だったのはこの2人の献身的な守備だった。これまで守備面で弱さがあった久保も、覚悟を決めたようにサイドでの守備に関わった。
格上との試合が続くワールドカップでは、やはり両サイドは守備に追われる時間が長くなることが予想される。そういう意味でも、ワールドカップ本大会でのサイドアタッカーのファーストチョイスは伊東、久保ということになりそうだ。
もちろん、堂安律もクラブで好調を維持しているので、右サイドでは伊東と堂安が交代で使われるだろう。
左サイドには南野拓実、三笘薫もいるが、クラブで出場機会が少ない南野はやはりゲーム勘を失っているようで、現状のままではワールドカップで起用することは難しい。
一方、三笘はアメリカ戦でもドリブル突破から喉から手が出るほど欲しかった2点目を決めてその真価を発揮したが、守備力などを考えるとやはりスーパーサブ的な起用が中心となるだろう。
ちなみに、レアル・ソシエダード移籍後、クラブでも活躍している久保は、鎌田に代わってトップ下もできるし、右サイドもできるので、非常にユーティリティー性が高い。
さて、問題は大迫勇也不在のワントップだ。
デュッセルドルフでの2試合でも前田大然、町野修斗、古橋亨梧、上田綺世の4人がすべて45分ずつテスト起用されたが、大迫の“代役”は見つからなかった。
古橋はチーム全体の出来が良くなかったエクアドル戦前半にプレーしたので良いパスがあまり回ってこなかったので気の毒だったが、9月シリーズで爪痕を残したのは前田と上田だった。
アメリカ戦で先発した前田は持ち前の運動量を生かして相手DFやGKに対してプレスをかけ続けた。この前田の動きでアメリカは正確なパスを供給できなくなり、日本は中盤の高い位置でボールを奪ってショートカウンターで攻めるという理想的な展開に持ち込めた。
カタール大会初戦で日本が対戦するドイツは、9月に行われたネーションズ・リーグではハンガリーに敗れ、イングランドと引き分けに終わるなど、本調子から程遠い。最終ラインから前線までのパスコースも変化に乏しいので、日本が本気でハイプレスをかけたら十分にボールを奪えるはずだ。従って、初戦では前田を先発させてドイツのDFライン相手にプレスをしかけてみたら面白い。
一方、3戦目で対戦するスペインもホームでスイスに敗れるなど調子は良くないが、パスをつなぐ能力はやはり高いから、プレスをかけてもボールは持たれてしまうだろう(スイスも、前線からのプレスは諦めて中盤で守る形で勝利に結びつけた)。スペインがボールを持ってパスを回し、日本がCBやボランチを中心に守るような展開が予想される(東京オリンピックの準決勝でスペインと対戦した時と同じ)。
したがって、スペイン戦では前線からプレスをかける前田より、引き気味の状況からのロングボールを受けるターゲットの役割をこなせる上田を先発させるべきだろう。
このように見てくると、カタール行きの22人のメンバーも、かなり絞られてきたような気がする。負傷で9月シリーズに招集されなかった板倉滉や浅野拓磨もケガさえ回復すれば、当然、メンバー入りが期待できる。
さらに、長谷部誠のサプライズ招集もあっていい。チームのまとめ役にもなれるし、何よりも対戦相手となるドイツの選手たちの特徴をよく知っているので、チームにアドバイスを与えることができるはずだ。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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