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8月にコスタリカで開催されたU−20女子ワールドカップ。日本代表は2018年大会と同じ対戦カードとなった決勝戦でスペインに1対3で完敗し、2連覇を逃してしまったが、しっかりとパスをつなぐ日本のスタイルは現地の観客の心をつかんだようで、決勝戦では3点のビハインドを追って懸命に攻める日本チームに対して「ハポン、ハポン」の大声援が起こっていた。
また、大会最優秀選手に当たるゴールデンボール賞には優勝チームのスペイン選手たちを差し置いて日本の浜野まいかが選ばれた。豊富な運動量で日本の攻撃を引っ張ったプレーが評価されたのだろう。日本代表のサッカーが高く評価された証拠である。
その浜野が、9月10日に東京調布市のAGFフィールドで行われた日テレ・東京ヴェルディベレーザ対INAC神戸レオネッサの試合でも素晴らしいプレーを見せた。
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配信期間 : 2022年9月17日午後3:50 ~ 2022年9月17日午後6:50
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日本トリムPresents 第14回全国女子選抜フットサル大会 ~トリムカップ2022~ 決勝
配信期間 : 2022年9月18日午後1:00 ~ 2022年9月18日午後4:50
日本初の女子サッカーのプロリーグ、WEリーグの2年目に当たる2022−23年シーズンのWEリーグカップのグループステージである。
正規リーグが10月22日に開幕するのを前に、加盟11チームを2つのグループに分けて1回戦総当たりで対戦し、両グループの首位チームが決勝に進んで優勝を争うカップ戦。いわゆる「リーグカップ」、JリーグでいえばYBCルヴァンカップに当たる大会である。
ただ、リーグ戦と並行して開催されるルヴァンカップではリーグ戦優先でターンオーバーを使うチームが多いが、WEリーグカップの場合は開幕前のプレシーズン大会なのでリーグ戦の準備のための「より本気度の高い大会」ということができる。
初年度のリーグ戦で3位となり、2021−22年シーズンは無冠に終わってしまったベレーザとしては今シーズンに懸ける思いは大きいはず。WEリーグ初年度に女王の座に輝いたINAC神戸戦ともなれば、本気度はさらに大きかったはずだ。
さて、この試合にはU−20ワールドカップに出場した選手をはじめとして、両チームとも若手選手が多数起用された。
U−20ワールドカップに出場した選手としては、ベレーザではDF(代表ではMF登録)の岩崎心南とFWの藤野あおばが先発で、FWの山本柚月はサブ。一方、I神戸では天野紗枝と浜野の2人がベンチスタートとなった(サブ組も全員が交代出場)。
前半に魅せたのが、ベレーザの“コスタリカ帰り”右ウィングの藤野だった。
キックオフ直後にMFの三浦成美からのパスを受けて右サイドでドリブル突破。クロスはゴールラインを割ってしまったが、ファーストプレーから積極的な仕掛けをさっそく見せたのだ。
前半は、完全にベレーザがリズムを握り、17分と20分の連続ゴールで優位に立ったが、その両方の得点で藤野は起点となった。
17分には右サイドでパスを受けて中に返したボールから三浦、植木理子とつながって先制ゴールが生まれた。そして、さらに直後の20分には右サイドの深い位置まで進出して三浦からの縦パスを引き出した藤野がポイントを作ってから三浦に戻し、三浦からのクロスを再び植木が決めた。
どちらも藤野が起点となっていたが、とくに2点目は深い位置で三浦からのパスを引き出したのが決め手となった。
前半の藤野は深い位置でボールを受けてポイントを作り、また、ドリブルでの突破で攻撃の糸口を作った。決定力の高さを見せて2ゴールを決めた植木とともに、藤野は前半の2点リードの立役者だった。
さて、前半を2点のビハインドで折り返すことになったINAC神戸レオネッサの朴康造(パク・カンジョ)監督は、後半のアタマから浜野を投入してきた。
そして、この浜野の自信にあふれたプレーで盛り返したI神戸が後半はゲームを支配することになった。
豊富な運動量はU−20日本代表でのプレーと同じ。左の深い位置でパスを引き出したかと思えば、右サイドでドリブル突破と、前線のさまざまな位置に顔を出した。とくに、DFラインの裏に抜けようとする飛び出しのタイミングの良さでベレーザの最終ラインも対応に苦しんでいた。
反撃のきっかけとなった62分のI神戸の1点目は左サイドに進出した浜野が最終ラインの脇阪麗奈からのロングパスを引き出して、持ち直してから入れたクロスを守屋郁弥が頭で合わせたものだった。
浜野は後半だけのプレーで3本のシュートを放っている。これは、90分プレーした成宮唯と並んでチーム最多の数字で、彼女が後半のI神戸の攻撃を引っ張ったことを示している。
やはり、世界大会で活躍してさらにMVPの表彰を受けたことによる自信は大きかったようで、それがプレーの落ち着きに現われていたような気がする。また、ワールドカップで日本チームはさまざまな相手と対戦した。また、完勝したアメリカ戦や点の取り合いとなったフランスとの準々決勝、そしてスペインとの決勝での完敗と、さまざまな試合展開も経験したことによって、プレーの引き出しも増えたのではないか。
U−20という年代で世界を体感し、そして結果を出したことの意味は大きかったようだ。
この試合、ワールドカップ・メンバーの藤野、浜野以外にも若手が活躍したし、もちろん上の年代の選手たちもそれぞれの持ち味を発揮した。
前半、2ゴールを決めた植木理子は現在23歳。4年前のU−20女子ワールドカップで日本が初優勝した時の代表である。ベレーザの先制ゴールなどは相手DFのマークを受けながらも落ち着いてGKの足元を通して決めた難しいゴールだった。
そして、フル代表のFWとして植木のライバルとなるI神戸の田中美南は相手のマークに合って見せ場を作れなかったが、後半のアディショナルタイムには右CKに合わせて強烈なヘディングシュートを決めて見せた。
さらに、大ベテラン(35歳)で2011年のワールドカップ性はメンバーの1人でもある岩清水梓も落ち着いた守備を見せ、また前線へのフィードも非常に正確で代表クラスの実力を維持している。
2023年には年齢制限のない女子ワールドカップに挑む女子日本代表も、世界で結果を出した世代を融合させてさらに強化を進めていってほしいものである。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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