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フットサル日本代表
リトアニアで開催されているフットサルのワールドカップ。日本代表は9月17日(日本時間18日)にスペインと対戦。前半(第1ピリオド)は2対1とリードして折り返したものの、後半に3失点を喫して惜敗した。善戦だったことは間違いない。
なにしろ、スペインはFIFAランキング1位であり、またワールドカップでも優勝2回、準優勝3回という戦績を誇り、つねにブラジルと「世界のトップ」の座を争っている強豪国なのだ。
ボールポゼッションで上回ったのはもちろんスペイン。フルタイムでの数字は55%対45%だったが、もっとボールを持たれていた印象もあった。そして、シュート数は47本対33本でこれもスペインが上回る。ところが、「枠内シュート」の数では、14本対16本で逆に日本が上回ったのだ。
この数字が、この日の試合の内容を物語っている。
つまり、スペインがボールを持って攻撃を仕掛ける回数が多かったのは間違いない。だが、スペインは日本の組織的で分厚い(あるいはしつこい)守備に手を焼いていた。高い位置からプレッシャーをかけ続ける日本の守備の結果、スペインのパスが流れてラインを割る場面が非常に多く、スペインは日本の守備を完全に崩してシュートまで行けなかったのだ。
実際、失点のシーン以外には守備が崩されたという印象は受けなかった。
スペインはこの試合で4ゴールを決めた。前半4分の先制ゴールはボルハ・ディアスが左サイドのアドルフォ・フェルナンデスとパス交換。アドルフォがドリブルで抜けて、リターンをボルハが決めた美しいゴールだった。そして、後半に入って26分にチーノが決めた同点ゴールも、左サイドでフランシスコ・ソラーノの突破力が光ったゴールだった。
だが、30分にラウル・カンポスが決めた彼らの3点目(つまり決勝点)はFKの場面でタイミングをズラされたものだった。しかも、そもそもスペインにFKが与えられたのも、ソラーノがうまく倒れて反則を誘う狡猾なプレーによるものだった。さらに、勝負が決まった4点目(38分)は1点を追う日本がGKをベンチに引き揚げてフィールドプレーヤー5人で攻めるパワープレーを仕掛けている間にスペインのキックインとなり、そこから無人のゴールにロングシュートを蹴り込まれたもの。
つまり、失点の場面を振り返っても、やはり完全に崩されたのは1点目と2点目だけだったのだ。
一方、日本の得点は前半5分の1点目が前線で室田祐希と西谷良介がプレッシャーをかけて作ったこぼれ球を星翔太がミドルレンジから決めたもの。同7分の2点目がCKからのボールを逸見勝利ラファエルがボレーで叩いたもので、どちらも文句のつけられない連続ゴールだった。
完全に崩し切れなくても得点するパターンを持っていたスペインと、枠内シュートで上回ったものの、2点目を決めた7分以降、得点を生み出すことができなかった日本の決定力の差、あるいは試合運びの巧拙が勝敗に結びついてしまった。
しかし、高い個人能力を誇る相手に対して40分間高い位置で的確にプレスをかけ続け、奪ってからも正確にパスをつないで前線までボールを運び続けたのだから、たとえ逆転負けを喫したとしても、この日の戦いは大いに誇ってもいい。
さて、日本は初戦でアンゴラを8対4で破っており、2戦目を終えて勝点が3。得失点差も+2と悪くない数字である。
もちろん、まだ何も手にしたわけではない。9月21日(日本時間20日深夜0時)開始のパラグアイ戦が決勝トーナメント進出を懸ける大事な戦いとなるのだ。しかし、2戦目終了の段階でパラグアイは勝点は3で日本と並んでいる者の、得失点差は−2。つまり、日本は引き分けても2位以内が確定するし、万一パラグアイに敗れても、僅差での敗戦なら3位での通過の可能性は大きい。
もちろん、スペイン相手に戦い切ったことによる疲労はあるだろうし、次戦はアンゴラ戦、スペイン戦が行われたバルト海に面したクライペダから、内陸の首都ヴィリニュスまでの移動もある。だが、中3日あればリカバリーはできるし、リトアニアは小国なので移動距離は長くはない。そして何よりも、スペイン相手に互角に近い戦いができたことが大きな自信になるだろう。
決勝トーナメント進出に向けて、しっかりと戦い切ってほしいものだ。
一つ心配なのは、スペイン戦で4人がイエローカードをもらってしまったことで、決勝トーナメントに入ってから出場停止の処分を受ける可能性があることだが、今はそれを気にしていても仕方がない。まずは、パラグアイ相手に勝点を奪って、2位に入って決勝トーナメント進出を確定することだ。
フットサルの日本代表は、前回2016年のワールドカップはアジア予選でベトナム、キルギス相手にまさかの敗退を喫して出場を逃してしまった。その後、2020年の大会が新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって1年延期になったこともあって、今回がなんと9年ぶりのワールドカップとなった。
その間、全国リーグFリーグで観客数が伸び悩むなど、フットサルには一時の勢いがなくなってしまっていた。まさに、“屈辱の9年間”だったわけだ。
その間、日本サッカー協会(JFA)が編成する日本代表チームは男女あらゆるカテゴリーのワールドカップに出場し、しかも直近の大会ではすべて決勝トーナメント進出に成功するという偉業を達成していた。ワールドカップだけでなく、8月から9月にかけての東京オリンピックでも男女とも決勝トーナメント進出を果たしたし、先日のビーチサッカー・ワールドカップでは日本は決勝進出という成果を出していた。
従って、フットサルの日本代表としても最低限でも決勝トーナメント(ラウンド16)進出は果たしたいところだし、できればさらに上位も狙いたい。
ブルーノ・ガルシア監督の下、アジアカップが中止となるなど、試合数をこなせない中で日本代表はしっかりと時間をかけてチーム作りを進めてきた。その成果がスペイン戦でも表れたのだが、一つの問題は選手が高齢化していることだ。
もちろん、フットサルは年齢が高くなってもプレーできる競技ではあるが、ワールドカップに出場している16名の選手のうち8人が30歳以上。26歳以下は清水和也(24歳)と毛利元亮(20歳)の2人のみというのは今後が心配になる。
今大会終了後には若返りが課題となるだろう。そのためにも、ベテランを揃えてピークを迎えている今のチームが結果を出して、日本のフットサル界全体を活性化させ、次の世代手につないでいく必要がある。
次のパラグアイ戦は日本のフットサルの将来を占う意味でも注目したい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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