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サッカー フットサル コラム 2021年9月14日

日本代表の主力級が続々とJリーグに復帰。代表の戦い方にも選択肢が増えるのではないか

後藤健生コラム by 後藤 健生
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アーセナルに移籍した冨安

アーセナルに移籍した冨安

アーセナルに移籍した日本代表DF冨安健洋が鮮やかなデビューを飾った。移籍期間の最終日にアーセナル入りが決まり、その後日本代表で戦っていた冨安はアーセナルでのトレーニングがわずか1日だけという状況だった。だが、チームの中で十分に機能していた。スリーバックの一角ながら機を見て的確に攻撃参加。前半終了間際にはこぼれ球に飛び込んで強烈なボレーシュートまで披露した。相手との接触があったためシュートは枠をとらえられなかったが“挨拶代わり”としては十分すぎるプレーだった。

かつては、ヨーロッパのクラブでプレーするのはほんの一握りの特別な選手だけだったが、今では数十人の日本人選手がヨーロッパで活躍している。まだイングランドのプレミアリーグやスペインのラリーガで成功する日本人は数少ないが、いずれそうした壁も切り開かれていくことだろう。

もちろん、それは喜ばしいことではある。だが、日本のサッカーファンにとっては寂しい現実でもある。たとえば、あの三笘薫のドリブルはJリーグではもう見られないのだ。

日本を代表するようなタレントが次々と海外に渡ってしまうのだ。Jリーグが空洞化してしまってもおかしくない。

そうした事態を防ぐには、流出した才能に見合うだけのタレントを補強していくしかない。今シーズンは、たとえば浦和レッズにはキャスパー・ユンカーとアレクサンダー・ショルツというデンマーク代表クラスの選手が加入した。名古屋にもヤクブ・シュヴィルツォクという典型的なセンターFWタイプのポーランド選手が加入した。今後も、各国代表級の選手が数多く日本でプレーするような環境を作ってもらいたい。

日本の若手が海外に移籍し、そこでクラブに残していった移籍金がそうした海外のタレントと契約するための資金となる……。そういうシステムが早く構築されてほしいものだ。

この夏の移籍期間には、海外のクラブで活躍していた知名度の高い日本人選手が続々とJリーグに戻ってきた。これも、流出したタレントの穴を埋めるに十分な動きだ。

酒井宏樹が浦和レッズに戻ってきたと思ったら、大迫勇也もヴィッセル神戸入り。そして、乾貴士は古巣のセレッソ大阪に入団し、最後に(?)先日の代表ウィークでは無所属のまま日本代表入りしていた長友佑都が、これまた古巣のFC東京に戻ってきた。

今では、J1リーグの実力は国際的にもかなり高い水準にある。

もちろん、プレミアリーグとかラリーガ、ブンデスリーガといった、いわゆる「3大リーグ」、あるいはそれにセリエAやリーグアンを加えた「5大リーグ」とは、戦力的にも財務的にも比較するのもおこがましいほどの差があるが、ベルギーのジュピラーリーグやオランダのエールディヴィジ、その他ヨーロッパの中堅国のリーグと比べれば、J1リーグもけっして遜色ないレベルにある。

若い選手であれば、マイナーなリーグとか、2部リーグでプレーすることで次のステップアップにつなげることもできるし、少なくとも競争の激しい中でプレーしたり、たとえばアフリカ系のフィジカル能力の高い相手とプレーすることで力を付けることもできる。

だが、ベテラン選手であれば、ビッグクラブと契約できないのなら、あるいはビッグクラブに在籍していても出場機会に恵まれないのなら、Jリーグ復帰はけっして悪い選択ではない。

9月のオマーン戦の先発11人のうち、GKの権田修一はもともと国内組だった。そして、その後、長友、酒井、大迫の3人がJリーグに復帰して「国内組」となったのだ。そうなると、日本代表の編成に当たっても新しい方向性が見えてくる。

9月のワールドカップ予選では、ヨーロッパから帰国した選手たちのコンディションがきわめて悪く、それがオマーン戦の敗戦の原因となってしまった。いくら選手の能力が高くても、コンディションが悪くては、しっかりと準備を重ねてきた相手に勝てないということが明らかになったのだ。

そこで、オマーン戦後には「Jリーグ組をもっと活用すべきだったのではないか?」という声が高まった。しかし、一方で「難しい最終予選だからこそ、経験豊富な選手、海外で活躍している選手に任せたい」という森保一監督の考え方もよく理解できる。

しかし、最近になって何人もの代表選手がJリーグ復帰を果たしたとすれば、国内組だけでも十分な戦力を持った日本代表が組めるようになったはずだ。

今、名前を挙げた帰国組だけではなく、9月の代表にも招集されていた山根視来や佐々木翔、あるいは森保体制でも招集歴のあるDFの谷口彰悟や稲垣祥などもいるし、森保体制では未招集なたら、ロシア・ワールドカップでレギュラーとしてプレーしていた山口蛍もヴィッセル神戸でプレーしているし、乾も帰国した。そこに、オリンピック代表だった前田大然や相馬勇紀、上田綺世といったアタッカーを組合わせればかなり強力なチームができるはずだ。酒井高徳や家長昭博といったベテラン選手も、招集されれば代表でも存在感を発揮するのではないか。

10月のワールドカップ予選は最初にサウジアラビアとのアウェーゲームがあり、その後日本に移動してオーストラリア戦という日程だ。ヨーロッパの選手にとっては距離的に近い中東にまず集合するので、移動の負担が小さくなる。従って、10月シリーズでは移動の問題は9月ほど大きくはない。

問題は11月の連戦だ。11月11日の木曜日にベトナムとのアウェーゲームがあり、その後、移動してオマーン戦アウェーという日程になっているからだ。

ヨーロッパの選手がベトナムまで移動するのは、きわめて負担が大きい。

そこで、11月のベトナム戦は国内組で臨むべきではないだろうか? Jリーグでプレーしている選手たちが国内で集合して調整してからベトナムに移動すれば、コンディションの問題はカバーできる。南北の移動だから時差の問題も小さいし、南部のホーチミンは違ってベトナム北部のハノイは11月になれば、かなり暑さは収まっているはずだ。

そして、国内組中心の日本代表はベトナム戦後にオマーンに入りし、一方、ヨーロッパのクラブに所属する選手たちは早めに中東に集合してコンディション調整をすませておいて、ベトナムから移動してくる国内組と合流してオマーン戦に臨めばいい。

代表の主力級が続々とJリーグに復帰したことによって、日本代表の戦い方にも選択肢が増えたようだ。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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