【サッカー】流通経済大柏高校を率いるキャプテン、渋谷諒太の圧倒的な人間力【NEXT TEENS FILE.｜高円宮杯】

流通経済大柏高校キャプテン渋谷諒太

それこそ話し出した一言目から、その優れた人間性は手に取るように伝わってきた。チームを指揮する榎本雅大監督が、「これだけ謙虚にやって、これだけ運動量を出して、これだけチームに貢献して、こんな子なかなかいないでしょ。頭が下がりますよね」と大絶賛するのも十分に頷ける。2021年の流通経済大柏高校にとって、キャプテンを任されている渋谷諒太の存在は、絶対に欠かせない。

高円宮杯プレミアリーグEAST第3節の清水エスパルスユース戦は、ホームの流通経済大柏にとってやや不運な判定の続くゲームとなった。一度はGKが止めたPKが蹴り直しになり、先制点を献上。渋谷がヘディングで決めたゴールも、オフサイドの判定で取り消され、結果的に1-2で敗れてしまう。

ただ、試合後の榎本監督は苦笑交じりにこう語る。「一番感情的になっているのが監督なんですから。選手が冷静じゃないですか。こういうことが凄いなと思うんですよ」。そのグループを率いているのがキャプテンの渋谷だ。

「こういう試合はあまり経験したことがないですけど、判定だったり、自分たちの決定力のなさは受け止めていますし、リーグ戦なのでもう切り替えるしかないです」という言葉に続けて、チームメイトたちについても、少し誇らしげに語ってくれる。

「今年は本当に流経らしくないと言ったらアレですけど（笑）、全員が本当にマジメで、チームが勝つためにどう貢献できるかを全員が考えていて、試合が終わってすぐに『もう切り替えるしかない』と全員で話していたので、自分もキャプテンで『何を話そうか』と思っていたんですけど、全員の考えていることが本当に一緒だなと感じました」。何度も出てくる“全員”というフレーズに、渋谷のチームへの愛着が滲む。

本人はボランチを主戦場にしていたものの、この2月からフォワードにチャレンジしている。「スタッフや監督とも『ボランチの守備を前線でも生かせるんじゃないか』と話していて、やはり守備があっての攻撃だと思っているので、ボール奪取という所でチームにプラスの勢いを付けられたらと、今はフォワードをやらせてもらっています。流経のハイプレスとマッチしてきていると自分でも感じていますし、攻撃でも自分が引っ張っていく意識があります」。既にプレミアの舞台でも1ゴール2アシスト。数字という意味でも結果を残しつつある。

また、最前線に立つことでチームに与える影響についても、自分の中で新たな意識を抱いている。「キャプテンって指示をするのも仕事ですし、自分的にはそういうキャプテンもいいかなと思っていたんですけど、やっぱり自分が前線でやっている姿を見せれば、みんなも付いてくるかなと。練習でも先頭に立ってやっている姿を見せれば、全員が真似して付いてくるんじゃないかなと思っているので、試合でも絶対最初の入りは前線から全力で行こうと決めてます」。背中で語れるキャプテン像をイメージしつつ、もちろん全体を鼓舞することも忘れない。生粋のリーダーが誰よりも先頭に立って、今年の流通経済大柏を牽引している。

その上で、秘かに、それでいてはっきりと携えている“野心”も頼もしい。「自分たちの代では有名な選手とか、代表で活躍している選手もいますし、そこでインターハイ、プレミア、選手権と全部の大会で自分の名前を多くの人に知れ渡らせるように、『流経と言ったら渋谷』というのをしっかり認識してもらえるように、プレーと結果を示せればな、と自分の中で思っています」。

例えば、選手権で初めて全国出場を果たした代の犬丸圭吾。プレミアで優勝を成し遂げた代の石田和希。インターハイで日本一を勝ち獲った代の宮本優太。彼らを筆頭に、流通経済大柏のキャプテンには代々人格者が揃っている印象がある。チームが掲げる『百打一音』のスローガン。その“百”の個性を束ね、“一”つの音を奏でられるだけの人間性が、既に渋谷には備わっている。

文　土屋雅史