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サッカー フットサル コラム 2021年4月5日

代表での活躍で自信が漲った山根視来のプレー。A代表とU-24代表が共鳴し、それがJリーグにも拡散

後藤健生コラム by 後藤 健生
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代表ウィークをはさんで再開されたJ1リーグ第7節。サガン鳥栖がセレッソ大阪に敗れ、名古屋グランパスもFC東京と引き分けた中で、川崎はホームの等々力で大分トリニータに完勝。独走状態確立に向けてさらに一歩前進した。

さて、その大分戦。スコアは2対0だった。

攻撃力を誇る川崎の場合、得点が2点程度だと「2点取れてよかった」ではなく、「今日は2点しか入らなかった」といった気持ちにもなってしまうが、サッカーでゴールを決めるというのは本当に難しいことであり、どんなに素晴らしい攻撃を続けていても、相手の頑張りとちょっとした不運が重なれば大量得点などできないものだ。

ただ、しっかりとボールをつないで攻撃を続け、サイドからの崩しやロングボールも駆使して川崎は決定的な形を何度も作り出していた。完勝と言っていいだろう。

左サイドバックのポジションには故障で出遅れていた登里里享平が復帰し、再三、サイドハーフの三笘を追い越して攻撃に絡んでチャンスを作った(これに伴って、登里不在の間サイドバックを務めていた旗手が中盤のインサイドハーフで起用されて、本来の攻撃的ポジションで貢献した。

そんな試合で、僕が注目したのが“代表帰り”の選手たちのパフォーマンスだった。

3月下旬に行われた日本代表(A代表)とU-24日本代表の活動。A代表は韓国に3対0で完勝し、そしてモンゴル代表戦では14ゴールを奪う圧勝。そして、U-24代表はオリンピックでの金メダル候補の一角、U-24アルゼンチン代表と戦って初戦では完敗を喫したものの、2戦目には初戦の反省を生かして見事に立て直し、3対0でアルゼンチンを下して見せた。

そして、この2つのチームには川崎フロンターレから何人もの選手が選ばれていた。

これだけ素晴らしい内容の試合で勝ち続けている常勝軍団なのだから、代表にも多く選出されるのは当然のことだろう。

日本の場合は「海外組」が多いおかげで川崎から実際に選ばれる選手は数名程度だが、そうでなければ(もし海外組抜きで代表を編成するなら)、川崎から10人くらいが代表に招集されたとしても不思議ではない。そう、たとえばバイエルン・ミュンヘンとドイツ代表の関係と同じように、だ。

いずれにせよ、川崎からA代表に選ばれたのはDFの山根視来とMFの脇坂泰斗。そして、U-24代表に招集されたのはいずれもMF登録の三笘薫、旗手怜央、そして田中碧の3人だった。そして、山根は韓国戦で先制ゴールを決めるなど素晴らしいパフォーマンスを見せ、アルゼンチンとの第2戦にフル出場した田中はゲームメーカーとして長短のパスを駆使して日本の攻撃を組み立てて勝利の立役者となった。だが、三笘と旗手は完敗したアルゼンチンとの初戦に出場し、個人的にも決定的な仕事ができずに終わった。

ちなみに、U-24代表には川崎の下部組織出身の板倉滉と三好康児も選出されており、DF登録の板倉は第2戦ではボランチで起用されて田中碧と共演している。また、A代表のボランチとして韓国戦の勝利に貢献した守田英正も、昨年まで川崎に在籍していた選手だ。川崎は、やはり代表の中で多数派を形成しているようである。

さて、4月3日(土)の大分戦では、3月29日(月)のアルゼンチン戦にフル出場した田中碧はベンチ・スタートだった。インテンシティの高い国際試合でフル出場してから中4日で迎えた試合だけに、鬼木監督は田中を休ませたのだろう。それでも、モンゴル戦には出場しなかった脇坂と、アルゼンチンとの第2戦では短時間出場しただけの旗手がジョアン・シミッチと組んで中盤を編成できるのだから、川崎の選手層の厚さには恐れ入る。

そして、注目の田中碧は、2対0とリードした後の72分に先発した脇坂と交代してピッチに送り出された。すでに、2対0となってほぼ勝負が決まった後の投入だっただけに、次の試合(上位対決となるサガン鳥栖戦)に向けての“慣らし運転”といった意味合いの投入だったのだろう。

代表帰りの中で、大分戦でフル出場したのは右サイドバックの山根視来だった。

湘南ベルマーレから移籍して2年目の山根。昨年も、新しく加入した川崎のチームスタイルに瞬く間に順応し、右サイドでの攻撃的なプレーで優勝に大きく貢献した。

タッチライン沿いのオーバーラップもあるが、中のスペースを使って攻撃参加し、右サイドアタッカーの家長昭博や攻撃的MFである脇坂や田中との間でパス交換を行い、そして最終的には内側のコースを通って相手のペナルティーエリア内に進出してフィニッシュに加わることができる選手だ(先日の韓国戦での得点シーンなど、その通りのプレーだった)。

すでに、昨年からずっと「代表に選ばれて当然」の活躍をしていたのだ。

だが、第7節の“代表帰り”のプレーを見ていると、代表での経験、そしてそこで結果を出した自信によって、山根はさらに一回り成長したように見えた。

パスを受ける瞬間に相手が間合いを詰めてきても、ちょっとしたフェイントや小さなターン一つで相手のマークをはずす落ち着きぶり。そして、その後の判断の速さ……。前線の選手の足元に付けるボールの速さや正確性も一段と増したように見えた。

まさに、「代表選手」になったことによってプレー自体も代表に相応しいものに近づいたのだ。“地位が人を作る”というが、“代表という地位”は選手を成長させるものなのだろう。

一方、72分、すでに勝敗の行方が決まりかけた時間帯に“慣らし運転”のために出場した田中碧は、U-24代表で好パフォーマンスを見せたことによる余裕もあったのだろう、100%に力を出すわけでなかったが、それでも77分にプレスをかけてボールを奪ったり、82分には3人に囲まれながら、フェイントで打開してボールを味方に展開したりと、好調さを垣間見せていた。

一方、U-24代表のアルゼンチンとの第1戦で先発しながらも見せ場を作れなかった三笘はこの日は、代表での生き残りのために結果を出そうという意欲に漲っており、飄々とプレーする普段のスタイルをかなぐり捨てて得点に執着し、39分にはFKからのこぼれ球を思い切りボレーで叩いて先制し、後半は相手ボールを奪って、レアンドロ・ダミアンに任せてもいいところを強烈に決めてみせた。

代表で味わってきた、それぞれの自信とか口惜しさがプレーにそのまま現われていたようで、とても興味深かった。

代表ウィークではA代表の韓国戦の勝利がU-24代表に刺激を与え、また、U-24代表のアルゼンチン戦での勝利がA代表のモンゴル戦での最後まで気を抜かないプレーぶりを引き出したようにも思えた。別の場所で、別の相手と戦っている2つのチームが連動し、共鳴し合っているようだったのだ。

そして、その代表でのプレーがJリーグでのプレーにまで影響したのだ。それは、周囲の選手にとっても大きな刺激になることだろう。3月の代表チームの活動は単に代表の強化につながっただけでなく、Jリーグ全体にとっても大きな刺激になっていたように思えるのだ。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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