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サッカー フットサル コラム 2020年8月19日

来年秋のプロ化を控えたなでしこリーグ。上位4チームの激しい優勝争いはまだまだ続く

後藤健生コラム by 後藤 健生
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J1リーグでは川崎フロンターレが破竹の9連勝を飾っている。しかも、この9試合で奪った得点が29、つまり1試合平均3を超える得点力を発揮。第10節終了時点で2位のセレッソ大阪に勝点7の差を付けており、8月19日のC大阪との直接対決に勝利すれば、“独走状態”となる。よほどのことがない限り、今シーズンの川崎の優勝は間違いないだろう。

それとは逆に、予想以上に激しい順位争いを繰り広げているのが「日本女子サッカーリーグ」つまり「なでしこリーグ」だ。

なでしこリーグでは、昨年まで日テレ・ベレーザ(今季から「日テレ・東京ヴェルディ・ベレーザ」と改称)が絶対の強さを誇っていた。2015年からリーグ5連覇を達成し、昨年はリーグカップ、皇后杯も獲得して三冠も達成していた。

かつてINAC神戸レオネッサとベレーザがハイレベルのバトルを繰り広げていた時代もあるが、神戸の最後の優勝は2013年にさかのぼる。最近のなでしこリーグはベレーザの独占状態だったのである。

ところが、昨シーズンは元ベレーザの元監督だった森栄次氏が浦和レッドダイヤモンズ・レディースの監督に就任したことで浦和が急成長。ベレーザとも死闘を繰り広げた(昨年のベレーザ対浦和の試合は、僕が観戦した200試合以上の中でも屈指の熱戦だった)。しかし、それでもベレーザの牙城を崩すには至らなかった。

今シーズンも、開幕前に注目していたのはまず森監督体制2年目となる浦和の成長ぶりだった。

実際、浦和は第3節でベレーザと対戦。1対0というスコアながら勝ち切って見せた。昨シーズンの対戦では「浦和の善戦」という印象だったが、この第3節の対戦では内容的にも浦和がコントロールした試合だった。

「これで、浦和が首位を走るか」と思われたのだが、次の第4節で浦和は敗北を喫してしまう。相手は、今シーズン2部から昇格したばかりのセレッソ大阪堺だった。

昇格組のC大阪堺も第3節まで3戦全勝だったが、この浦和戦が上位チームとの初めての対決だった。しかし、若手の多いC大阪堺は浦和相手にしっかりと勝ち切った。

前線から組織的な守備を行い、しっかりと狙い通りの形でボールを奪ってからショートカウンターを発動するという、戦術的にしっかりしたサッカーだった。

今シーズン、Jリーグでも下位のチームがそうした組織的な守備を遂行して上位を悩ませる試合が目についているが、なでしこリーグでもJリーグと同じような傾向のサッカーをするC大阪堺が4連勝を飾ったのだ。

ところが、さらに次の第5節では、C大阪堺はベレーザ相手に1対10という大差で敗北を喫してしまったのだ。10失点というのは驚くべき大量失点だった。しっかりと前からプレスをかける積極的な守備をするチームは、そのスタイルがうまくはまった場合は上位チームを脅かすことができるが、相手がそのプレッシャーが交わされてしまうと大量失点につながってしまうことがある。

J1リーグで言えば、たとえば昇格組の横浜FCがそうした組織的で積極的な守備を駆使して善戦しているが、やはり上位を苦しめたかと思えば、時に大量失点してしまうこともある。なでしこリーグとJリーグで同じようなスタイルを志向しているチームがあるのは面白い現象だ。

こうして、第5節までにベレーザ、浦和、C大阪堺の上位3チームは互いに1試合ずつ戦って、3チームの戦いだけに絞れば1勝1敗の“三すくみ”となったのだ。

第5節終了時点の順位表を見ると、浦和とC大阪堺は4勝1敗の勝点12で並び、アルビレックス新潟レディースとの試合で引き分けてしまったベレーザが勝点10となった。

そして、勝点11で3位に入っているのが、これも今シーズン注目のチームの一つINAC神戸だ。なにしろ、昨年までベレーザの点取り屋として4年連続リーグ得点女王だった田中美南がベレーザから宿敵の神戸に“禁断の移籍”をしたのだ。神戸には今や日本代表の攻撃のリーダーとなった岩渕真奈がおり、岩渕と田中のコンビが注目だった。

しかも、神戸は新監督としてゲルト・エンゲルスを招聘した。

エンゲルスは横浜フリューゲルスが消滅を迎える最後のシーズンに天皇杯を獲得した時の監督で、浦和レッズなどでも監督を務めている。なでしこリーグでJ1リーグで監督経験のある指導者を迎えるのは珍しいことだけに大きな注目を集めたのだ。

神戸は、まだ上位チームとの対戦がないが、これまでのところ5試合で3失点と守備の堅い印象の試合をしている。だが、かつてのなでしこジャパンの不動のアタッカーだった川澄奈穂美の復帰が決まり、岩渕、田中に川澄も加わって、これから次第に攻撃も強化されていくことだろう。

昨年までの絶対女王のベレーザは明らかに出遅れている。

開幕節ではノジマステラ神奈川相模原に粘られて、後半追加タイムにDFの土光真夜がロングシュートを決めてようやく1対0で勝利。さらに、第4節の新潟戦では0対2とリードされたが、89分、91分の得点で同点に追いついている。

その粘り強さには脱帽せざるを得ないが、田中美南が抜かれたせいか、攻めている割に得点ができずにベレーザは苦しんでいた。しかし、第5節でC大阪堺に10ゴールを叩き込んで快勝しただけに、今後は決定力不足も解消するかもしれない。

その他では、開幕節でベレーザを苦しめ、第5節で神戸と引き分けたノジマの粘り強いサッカーも注目だ。こちらは、かつて長くカマタマーレ讃岐で監督を務めた北野誠が今シーズンから監督に就任。北野監督はその経験を生かしてシステム変更を駆使して上位を脅かしている。今後も、優勝争いを続ける上位陣にとっては厄介な相手となっていくことだろう。

来年のプロリーグ(WEリーグ)発足を前に、上位4チームが激しい優所争いを繰り広げるなでしこリーグにも大いに注目したい。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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