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サッカー フットサル コラム 2020年7月7日

Foot!ファミリー初登場スペシャル

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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金曜日の夜がとにかく待ち遠しかった。

まだ大学生だった1人暮らしの家は娯楽に乏しく、ある日突然思い立ってケーブルテレビに加入してみた。普通のリモコンにある地上波放送しか知らなかった20歳そこそこの自分は、最初こそチャンネルの豊富さと目新しさで見まくっていたものの、そのうち飽きてしまい、結局元のウイイレ生活に戻っていった。

いつだったかははっきり覚えていない。そのぐらいの意識で、おもむろにケーブルテレビのスポーツチャンネルを付けた時のことだった。その後の人生を大きく左右する番組に出会ったのは。

ただ、ただ、面白かった。イングランドのプレミアリーグ。イタリアのセリエA。スペインのリーガ・エスパニョーラ。この3つのリーグのハイライトはもちろん、その合間には見たことのない大人がサッカーを楽しげに語っている。衝撃と言ってもいい。「こんなサッカー番組が世の中にあるのか」と思った。オープニングとエンディングで使われていた映像も音楽も、スタイリッシュでカッコよかった。番組の名前は『WORLD SOCCER NEWS Foot!』という。

そこからは毎週金曜日の夜に、その番組を見るのが1週間で一番の楽しみになった。当時の自分は付き合いの悪い大学生だったかもしれない。何せ金曜の夜の誘いはほとんど断って、毎週のように狭いアパートの一室でニヤニヤしていたのだから。それぐらい、その番組はキラキラした魅力に溢れていた。視聴を開始してからの2年間は、おそらく1度たりとも放送を見逃していない。

サッカーの仕事をすることしか考えていなかった私は、当然のようにJ SKY SPORTS(当時)の採用試験に応募した。それまで1つの内定も獲得できていなかった大学5年生は、運よく2次面接までこぎつける。ひたすら『Foot!』への想いを熱く語ったのち、就職活動で唯一の内定を12月末に勝ち獲ることになる。2次面接の時。暑苦しい熱弁に唯一食い付いてくれた面接官が『Foot!』のプロデューサーだったことは、しばらく後に知った。

入社1年目の3月から『Foot!』のスタッフになった。憧れていた番組の“内側”へ入ることができる高揚感と責任感と、いろいろな想いを抱えながら、“見る側”から“届ける側”へと立場が変わる。この番組のスタッフとして、この番組に恥をかかせるようなことだけは絶対にしないと、自分の中で心に決めた。

憧れていたライカールトにも会うことができた。チャビにインタビューしている後ろを、ロナウジーニョが「モシモシ~」と笑いながら通って行った。ミックスゾーンで暇そうに携帯をいじっていたイニエスタとは片言の英語で会話した。お茶目なデシャンにはお土産のダルマを投げ付けられかけた。マケレレには日本語で番組告知をしてもらった。ロリスは自らのユニフォームをプレゼント用に提供してくれた。対面したスーパースターたちも、会ってみれば1人のサッカー好きの大人だった。

海外に行った時は、その地の文化を伝えることも大事にしていた。イングランドではシャーロック・ホームズの足跡を訪ねた。フランスではエッフェル塔やマルセイユの海岸にも足を伸ばした。フィンランドの空は夏でも薄い色彩で、スペインの空は冬でも濃い色彩を纏っていた。ネス湖はネッシーグッズに溢れていて、アムステルダムにはコロッケの自動販売機があった。海外に行けば行くほど、サッカーはすべてのものに繋がっているのだと実感することができた。

20年の月日を『Foot!』の“内側”で過ごしてきたスタッフは数人いるが、20年の月日を“外側”と“内側”で見つめてきたスタッフは自分しかいない。もう“内側”の時間が圧倒的に長くはなってきているが、“外側”の視点も絶対に忘れないようにすることは、常に意識してきたことだ。

今回の10本に及ぶ『Foot!セレクション』は、盟友の中島Dとほぼ2人の独断でセレクトした。番組の歴史を彩って来てくださったゲストの方々の映像をちりばめ、番組が辿ってきた20年分の軌跡を詰め込んだものになっている。昔は見ていたけど、今はもう見ていないという方にも、最近見始めたから昔の番組は見ていないという方にも、是非『Foot!』が積み重ねてきた歴史を楽しんでいただけたら幸いだ。

#1はいわゆる“Foot!ファミリー”の初登場回を集めてみた。記念すべき第1回目の放送と、番組の“視聴者”だった平畠啓史さんが、倉敷保雄さんと幸谷秀巳さんを質問攻めにするという2つの回が軸になっている中で、どうしても入れたかったのは富樫洋一さんの初登場シーンだ。2006年に富樫さんが急逝されて、もう14年が経過している。誰からも愛される人柄で、下っ端ADだった私にもサッカー仲間として気さくに接してくださった。「つっち~」と優しく語り掛けてくれる声は、今でも耳の奥に棲みついていて離れない。

今回の編集過程において、まさに第1回目の放送が収められているテープの箱を見た時、あることに気付いた。記載されていた放送日は2000年8月18日。中居正広や柴田恭兵、エステバン・カンビアッソなど錚々たるメンツと同様に、この日は私にとって特別な意味を持つ。まだ、その存在を知らなかった21歳の誕生日に、『Foot!』は産声を上げていたのだ。この出会いが偶然だったのか、必然だったのか。それは私にもいまだによくわかっていない。

文 土屋雅史(J SPORTS)

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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