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サッカー フットサル コラム 2019年10月29日

優勝候補に完勝。FIFA U-17ワールドカップで日本がオランダを破る

後藤健生コラム by 後藤 健生
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西川潤

FIFA U-17 ワールドカップが開幕。U1-7日本代表が初戦で優勝候補の一角オランダに完勝した。

日本が入ったグループDは、オランダ、アメリカ、セネガルが同居したいわゆる「死のグループ」。中でも、U-17ヨーロッパ選手権(U-17ユーロ)で優勝した欧州王者のオランダこそ“最強の敵”と見られていた。なにしろ、U-17ユーロはこれで2連覇。前回のU-17ワールドカップで優勝したイングランドを、なんと5対2というスコアで破っていたのだ。

昨季のチャンピオンズリーグで若手中心のアヤックスが大躍進を遂げたことは記憶に新しいが、そのアヤックスの育成部門を中心にしたチームで、ペーター・ファン・デル・フェーン監督も大会前にこう豪語していた。

「オランダは1974年、78年、2010年のワールドカップで世界一に近づいた。女子代表も今年のワールドカップで決勝まで進んだ。しかし、一度もまだ世界大会で優勝したことがないのだ。われわれが新しい歴史を作ってみせる」と。

実際、試合開始から10分ほどはオランダのスピードある展開に日本代表はすっかり後手に回ってしまった。7分には右サイドをモハメド・ターブーニに突破され、中央でハンセンが合わせたがシュートはわずかに左に外れた。もし、この早い時間に先制されていたら、日本にとってかなり難しい試合となったはずだ。

しかし、相手のスピードにも、またMFのマートセンが最終ラインに落ちてサイドバックを上げる相手のシステムにも、日本の選手はすぐに慣れて落ち着いた対応を見せるようになる。

相手のアタッカーにはきっちりと寄せてスペースを与えず、前線がきっちりと相手のビルドアップを追ってパスコースを消す。そして、奪えると判断すればきっちりとラインブレークしてでも体を寄せていくし、「奪えない」と見るやリトリートして相手のパスをからめとってしまう。

奪いに行くのか、チャレンジはせずにリトリートするのか。その判断力の高さが、日本の守備の武器。そして、リトリートしても守れるのは中央の守備が安定しているからだ。

つい最近まで日本の弱点と言われていたセンターバックとゴールキーパーだが、CBの半田陸は落ち着いた対応でゴール前の広い範囲をカバー。奪った後の前線への思い切ったフィードで再三チャンスを作った。

また、GKの鈴木彩艶はシュートへの反応や高いボールのキャッチで進化を見せ、そしてボールを取ってからすぐに前線にフィードすることで攻撃の起点となっていた。

GKとCB。さらに、MFの田中聡と藤田譲瑠チマのクレバーな守備と展開力……。

日本の選手たちは、個人能力の面ですでに欧州王者のオランダに勝っていたのだ。そんな日本の選手たちが“日本人らしく”組織を作り、最後まで献身的にプレーしたのだから勝つのが当然だ。

日本中を沸かせたラグビーの日本代表にも通じるものがある。

どんなスポーツでもそうだが、組織の力や献身性は日本人選手がもともと身に着けているもの。その上に、テクニックとフィジカルで世界の強豪と互角のものを身に着ければ、日本代表が強くなるのは当たり前のことだ。

U-17ワールドカップでは、これまでも日本チームはすばらしいプレーを見せてきた。

吉武博文監督時代に見せた日本のパス能力の高さは記憶に新しい。だが、今のチームはパス回しが素晴らしいのは当然として、パス・サッカーだけではないのだ。守りに入っても組織力でしっかり守れるし、チャンスがあれば縦への長いボールで一気に相手ゴールに迫ることもできる。「自分たちのサッカー」に固執する必要はまったくないのだ。日本の若い世代の選手たちは、どんな相手にも自然体で戦える幅の広さを身に着けているのだ。

そして、フィニッシュの段階でも個の力は着実に上がっている。

かつては、日本チームは「中盤でボールを回すのはうまいけれども決定力がない」と言われたものだ。攻め込んでいながらなかなかゴールを決められず、パスを奪われてカウンターで失点する……。そんな場面を何度も見てきた。アジアの対戦国は当然のようにゴール前に引いて守りに入る。いや、ブラジルなども日本と対戦する時は日本のボールを持たせておいて、パスカットを狙い。ボールを奪ったら、カウンターで仕留めるような試合を仕掛けてきた。

だが、前線の西川と若月の2人はスピードでは相手を上回っているし、身体をぶつけられても耐え生きる強さを持っているし、速いスピードの中でも正確にボールを扱うこともできるのだ。

この前線の2人のコンビネーションによってしっかり3ゴールも奪えたのだ。そして、たとえば先制ゴールの時に西川にボールが入った瞬間、左サイドの三戸舜介が中に絞る動きを入れることによって相手DFを引き付け、若月が走るコースを作ったように、U-17日本代表は個人能力に組織力も加わった非常に合理的な攻撃を展開した。

あらゆるポジションでオランダを上回った日本。ぜひ、世界大会の上位まで駆け上がっていく期待も持ちたい。

オランダ戦の終盤、西川や田中が足をつって動けなくなってしまったが、大会を通して戦い続けるには中2日の日程で行われるグループリーグでどれだけ休める時間を作るかが問題となる。それだけに、“最強の敵”から勝点3を奪い、さらに得失点差も「+3」としたのは大きい。

次のアメリカ戦で勝利すれば、もちろんグループリーグ突破が決まるし、アメリカに勝って、そして最終のセネガル戦ではメンバーを変えてターンオーバーすれば、万全の形でラウンド16の向かうことができる。

戦術の練習試合でのナイジェリアに続いてオランダと優勝候補を連破、自信をもって夢にチャレンジしてほしい。

文:後藤健生

【ハイライト】日本 vs. オランダ FIFA U-17 ワールドカップ ブラジル 2019 グループD

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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