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5月9日、アヤックスのエドウィン・ファンデルサールCEOは次のように語っていた。
「マタイス・デリフトはスペインかイングランドのクラブに移籍するでしょう」
スペインであればバルセロナが最有力だ。親友フレンキー・デヨングの移籍が早場と決定し、パスをつなぐスタイルも適している。ファンデルサールはかつてマンチェスター・ユナイテッドの名GKとして一世を風靡した。そのよしみで、と淡い希望を抱いても、バルセロナの魅力にはかなわない。
しかし、事態は一変する。デリフトのエージェントを務めるミーノ・ライオラが、FIFAから3か月間の活動停止という重いペナルティを科された。罪状は明らかになっていないが、強引すぎる手法でなにかと話題のライオラの動きに制限がかかったのだから、さぁ大変!! 移籍市場に多大な影響を及ぼすことになった。
ところで、活動停止とはどの程度のペナルティを指すのだろうか。顧客の移籍交渉に直接タッチできないが、コントロールは可能なのだろうか。ライオラの代理が交渉し、最終的な答をライオラが出すのであれば、ビジネスは進んでいく。ただし、スピード感に欠ける。移籍交渉のテーブルにライオラがつけるはずがない。代理と話し合っても結論が出ず、そのスペースをついて他クラブがインタセプトを試みる。交渉上手のバイエルン・ミュンヘンあたりは、ライオラの隙をうかがっているはずだ。
またデリフトだけでなく、ユナイテッドのポール・ポグバ、ASローマのコスタス・マノラス、そしてマルセイユのマリオ・バロテッリも、ライオラ事件の影響を強く受けるに違いない。移籍を望んでいたものの、エージェントの活動停止によってプランが頓挫した。
ライオラの動きが封じられたため、市場の流れはさらに読みづらくなった。ジョルジュ・メンデスが攻勢を強めるのか。ガレス・ベイル(レアル・マドリー)のエージェントを務めるジョナサン・バーネットが暗躍するのか。あるいはパリ・サンジェルマンのマルキーニョス、チェルシーのダビ・ルイス、マンチェスター・シティのガブリエル・ジェズスなど、数多くのブラジル代表を顧客とする『EURO EXPORT ASSESSORIA PROPAGANDA』がビジネスを拡充するのか。この際、4月下旬までの動きは忘れた方がいい。
なお、イギリスの『SKY SPORTS』をはじめとする複数のメディアが、「ローマを退団するダニエレ・デロッシにシティが興味」と報じていた。百戦錬磨のMFが最強の王者に加入する!? 新シーズンのシティはジョルジーニョとデロッシをアンカーとして併用するのか!? 憶測の域を出ない情報だが夢はある。市場のニュースはフィクションとノンフィクションが幾通りにもミックスされている。ライオラがいない間も、楽しませてくれるに違いない。
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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