人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サッカー フットサル コラム 2018年7月31日

多数の選手が合流が遅れるはず プレミアリーグ開幕直後はW杯の影響に注目

後藤健生コラム by 後藤 健生
  • Line

ルジニキ・スタジアムでの決勝戦でフランスがクロアチアを破って2度目のワールドチャンピオンに輝いてから早くも2週間が経過。すでに日本のJ1リーグはワールドカップ閉幕の直後に再開され、また7月最終週にはロシアとベルギーのリーグ戦も開幕した(ロシアは長いウィンターブレークのため、またベルギーはプレーオフのために他国より開幕が早い)。そして、8月に入るとヨーロッパの主要リーグが次々と開幕する。

ワールドカップ・イヤーでは他のシーズン以上に活発に移籍市場が動くだろうし、またワールドカップに出場した選手のコンディション面の影響もあるので、いつものシーズン開幕とはちょっと違った展開も予想される。 かなり昔の話だが、1994年のアメリカ・ワールドカップのあった年には当時世界最強を誇っていたACミランが大きな影響を受けた。

ミランは1980年代後半にアリゴ・サッキ監督の下でプレッシング・サッカーを完成させ、1990年代の前半にはサッキの後を継いだファビオ・カペッロの下でチャンピオンズカップ(チャンピオンズリーグの前身)のタイトルを独占していた。 アメリカ・ワールドカップに出場したイタリア代表の監督には、そのミランを作り上げたサッキが就任。当然のことながら、サッキはミランの選手を主体に代表チームを構築した。とくに、DFラインはフランコ・バレージが統率するミランのラインがそのまま使われた。そして、イタリア代表は苦しい戦いの連続となったものの、決勝に進出。決勝戦ではブラジルと延長戦を戦ってスコアレスドロー。PK戦ではバレージとエースのロベルト・バッジョがはずしてイタリアは準優勝に終わった。

このワールドカップの疲労の影響で、新シーズンが開幕するとミランは思わぬ不振に見舞われた。あれほど完璧だったDFラインが大きく崩れたのだった(その後、ミランは態勢を立て直し、94/95シーズンもスクデットを手放すことはなかったが)。

当時と現代とでは、状況は大きく変わっている。 一番の変化は、ボスマン判決の結果、選手の移動の自由が確立し、ヨーロッパ各国では外国人選手枠が(少なくともEU国籍の選手に関しては)撤廃されたことだ。今ではどこのクラブも多国籍化している。だから、ワールドカップを戦った選手に疲労が残っていてもクラブへの影響は分散するから、あの時のミランのようなことは起こりにくくなっているのだ。たとえば、スペインがワールドカップの決勝まで戦ったとしても、レアル・マドリードにも、バルセロナにもスペイン国籍以外の選手がたくさんいるので、影響は軽減される。

ところが、今年のワールドカップはイングランドの強豪クラブにかなりの影響を与えそうなのだ。 なにしろ、イングランド代表が準決勝進出と大躍進を遂げ、そのイングランド代表は今の時代には珍しく全23選手がイングランド・プレミアリーグのクラブに所属していたのだ。たとえば、トッテナム・ホットスパーからは得点王に輝いたハリー・ケインやデレ・アリなど5人が選出されている。イングランドは7月14日の3位決定戦まで戦っており、それから休暇を取ればこうしたイングランド代表選手たちがクラブに合流できるのは7月下旬以降になる。それから開幕に向けてコンディションを上げなければならないし、チーム内でのコンビネーションの確認なども遅れることになる。

さらに、影響はイングランド代表選手だけに留まらない。財政力の高いイングランドの強豪クラブは世界のトップクラスの選手を何人も抱えているのだ。そういった外国籍プレーヤーは、ワールドカップでは各国代表としてプレーすることになる。

今年のワールドカップで躍進を遂げたチームのひとつがベルギー代表だ。あの日本代表との大激戦をはじめ、ブラジルを破った準々決勝。そして、フランスとハイレベルの鍔迫り合いを演じた準決勝と、ベルギーの試合は面白い試合の連続だった。

そして、そのベルギーではエデン・アザール(チェルシー)やケヴィン・デブライネ(マンチェスター・シティ)をはじめプレミアリーグ所属の選手が数多く活躍していた。いや、レギュラーの大半はプレミア所属の選手だったのだ。 さらに、優勝したフランスにもGKのユーゴ・ロリス(トッテナム)、MFのエンゴロ・カンテやFWのオリビエ・ジルー(チェルシー)などプレミアリーグ所属の選手が5人いた。

つまり、ベスト4に入り、7月14日、15日まで代表に拘束されていた選手だけでも、プレミアリーグ所属の選手は40人もいたのである(準優勝のクロアチアでは、プレミアリーグ所属はDFNデヤン・ロヴレン=リヴァプールのみ)。 たとえば、トッテナム・ホットスパーの場合、イングランド代表に5人が招集されており、それに加えてベルギーに3人、フランスに1人の合計9人がワールドカップで7月半ばまで戦っていた。

マンチェスター・シティとマンチェスター・ユナイテッドからも合計7人ずつ、チェルシーからは6人の選手が、ベスト4に進出しているが、これだけの人数の合流が遅れるとすればチーム作りは思うように進められないはずだ。しかも、こうした選手たちが合流するころには、強豪クラブは「インターナショナル・チャンピオンズカップ」で北米やアジアに遠征しているのだ。長距離移動を伴って短い間隔で日程が組まれているのでは、新シーズンに向けた戦術の確認などを行う時間も限られてしまう。

いずれにしても、ワールドカップの影響によって、プレミアリーグ開幕直後には、強豪国はコンディションを上げ切っていないことが予想される。一方でワールドカップとは縁の遠い中堅以下のクラブにとっては、ビッグクラブを食う大きなチャンスとなるだろう。 つまり、開幕直後には、サプライズが起こる可能性が高いのだ。注目したい。

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

人気ランキング(オンデマンド番組)

J SPORTSで
サッカー フットサルを応援しよう!

サッカー フットサルの放送・配信ページへ