■栗村さんからの回答

これ、たしかにわかりにくい問題ですよね。明確なルールはないですし、選手やチームのレベル、そしてその時々で優先順位が変わってきたりもします。

ただし、各賞の価値を推し量るヒントはあります。ひとつは賞金額ですよね。昨年のツールだと、総合優勝は€500,000（約7450万円）で、総合2位が€200,000（約2980万円）、総合3位が€100,000（約1490万円）......と続きます（１€＝149円で計算）。

 そしてポイント賞と山岳賞は同額で€25,000（約372万円）。ではステージ優勝はというと......€11,000（約163万円）。なんと半額以下なんです。ちょっと意外でしょうか。

総合優勝と山岳賞をダブル受賞したヴィンゲゴー

 中間スプリントを一位通過すると€1,500（約22万円）で、山岳ポイントトップ通過は山の難易度に応じて€200～€800（約3万円～約12万円）。各ステージの敢闘賞は€2,000（約30万円）と、結構もらえますね。

 もう一つのヒントがあります。一人の選手が２枚以上のジャージを同時に着る権利を手に入れた場合、身体は一つしかありませんから、着られなかったジャージを他の選手に繰り下げることになるのですが、その優先順位を見ると、それぞれの賞の価値がなんとなく見えてきます。

 ただし、繰り下げのルールはレースによって違います。僕が組織委員会委員長を務めるＴＯＪだと、着用優先順は、①個人総合時間②ポイント賞③山岳賞④新人賞、です。これは僕が決めたのではなく、着任前からあったものを踏襲しています。

 つまりＴＯＪだと山岳賞よりもポイント賞のほうが優先順位が高いわけですが、ツールなどを見ていても、たとえ賞金が同額でもポイント賞のほうがバリューが高いと見なされているように思います。

 他にもUCIポイントの配分などもヒントになりますが、昨今ウェイトの付け方については向こうでも議論があって、難しいですね。実際、今年からはUCIポイント配分が変更されました。変更はいろいろですが、グランツールのステージ優勝の価値を高めたのも変化です。ポイント配分とファンの感覚に差があったのが埋められた格好になります。僕も個人的には、ステージ優勝の価値を高めてもよいのでは......と思っていたので、よかったのではないでしょうか。

 それから、プロ選手の世界には「全部欲しがらない」「お互いに分け合う」「1位以外はあまり意味がない」といった価値観が根付いていました。最近はこういった考え方もだいぶ薄れてきましたが、それでもまだまだ「スマートに戦うのがプロ」という価値観が残っています。なんとなく、我々の日常生活の価値観に通じるところもありそうですね。

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